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君を知って、恋を知る ~学校一の聖女様と秘密の同担オタクライフ~   作者: 浜焼き三太郎
第2章 君と駆ける

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52話 偶然が結んだ縁

体育祭も無事に終わり、少しずつ日常へ戻り始めた優斗たち。


そんな中、ファミレスでの打ち上げ中に思わぬ人物との再会が待っていました。


今回は少しだけ恋愛成分控えめ。


第二章完結まで残り4話。

代わりに、ある男子との距離が縮まるお話です。


どうぞお楽しみください。

``


ドリンクバーへ向かうと、ライトに照らされたディスペンサーと、磨かれたグラスが整然と並んでいた。


コーラにカルピス、烏龍茶にぶどうジュース。


思っていた以上に種類が豊富だ。


「ジンジャーエール、ジンジャーエールっと」


雅之から渡されたグラスを片手に、目的のラベルを探す。


「ジンジャーエールなら、ここにあるぜ」


「あ、ほんとだ」


示された先に、目的のラベルを見つけた。


グラスをセットし、スイッチを押す。


―――ジョボジョボジョボ。


炭酸の弾ける音とともに、グラスの中が少しずつ満たされていく。


「わざわざ教えてくれてありがと―――んがっ!?」


振り返った瞬間、思わず肩が跳ねた。


そこに立っていたのは、泣く子も黙るほどの強面男子。


五十嵐君だった。


「よぉ、小鳥遊。さっきぶりだな」


彼はニヤリと口角を吊り上げる。


その悪人面は今日も絶好調だった。


「び、ビックリした……。なんでここに五十嵐君が?」


「おう? いちゃ悪いか?」


「別にそういう意味じゃ―――」


「クククッ。悪ぃ悪ぃ、からかっただけだ」


そう言って肩を揺らす。


「俺は体育祭実行委員の打ち上げよ。ほれ、あそこの席」


五十嵐君が親指で示した先は、僕たちの席の仕切りを挟んだ隣だった。


よく見ると四、五人ほど座っていて、その中には見覚えのあるショートカットの女子もいる。


「ねぇ、五十嵐君」


「なんだ?」


「ひょっとして、穂乃花さんもいたりする?」


そう尋ねた瞬間。


席についていた穂乃花さんと目が合った。


僕が苦笑いすると、彼女は人差し指を唇の前に立てる。


どうやら内緒らしい。


「よく分かったな」


五十嵐君が目を丸くした。


「ほんとは来ないはずだったんだが、急に行くって言い始めてよ。ったく、変なやつだよなぁ」


「ソ、ソウダネ~」


乾いた笑いが漏れる。


《あれ絶対、僕らのせいじゃん……》


危うく口に出しかけた言葉を慌てて飲み込んだ。


「ってか、おめぇ」


ビクッと肩が震える。


警戒しながら向き直ると、


「具合、どうなったんだよ?」


五十嵐君は眉をひそめていた。


「具合? あっ……」


そこで思い出す。


僕は意を決して、彼と視線を合わせた。


「保健室まで運んでくれて、本当にありがとう!」


勢いよく頭を下げる。


傍から見れば、ヤンキーに絡まれている男子生徒にしか見えない構図かもしれない。


それでも、感謝を伝えるなら今しかなかった。


「おかげでこの通り元気になったよ」


そう言って大きくガッツポーズを作る。


ついでに、全然大したことのない上腕二頭筋まで披露してみせた。


「えっと、五十嵐君?」


しかし彼は何も言わない。


ただじっとこちらを見つめている。


数秒の沈黙のあと、


「やっぱりおめぇ変わってるぜ。俺にあんだけ言われといてよ」


呆れたように鼻で笑った。


「あれはあれ、これはこれ。チョコは微糖ってやつだよ」


「なんだよそれっ」


五十嵐君は肩を震わせながら笑う。


さっきまでより、ずいぶん表情が柔らかい。


ほんの少しだけ。


ほんの一ミリだけ。


二人の距離が縮まった気がした。


「なんか嫉妬してたのが馬鹿みてぇだぜ」


「嫉妬?」


「そうだ。特に聖女様のことでな」


鼻の頭をかきながら、五十嵐君は続ける。


「てめぇで出来ねぇことを他人が普通にやってる。それがなんつーか……羨ましくてな」


「羨ましい、か……」


ふと考える。


確かに僕は千春と普通に話している。


だけど、それは僕が特別だからじゃない。


偶然出会って。


偶然、彼女の秘密を知った。


ただそれだけだ。


もしも出会い方が、少しでも違っていたら。


僕だって他の男子と同じように、遠くから彼女を眺めているだけだったと思う。


「なぁ、小鳥遊―――いや、優斗さん!」


突然、五十嵐君が身を乗り出してきた。


「どうしたら、あんたみたいに話せっかな?」


その目は真剣そのものだった。


だからこそ僕は、


「え、えぇ~~~……」


情けない声を漏らすことしかできない。


いや、そんなこと言われても。


僕だって未だに千春を前にすると緊張するんだけど。


あまりにも難しい相談に、僕は頭を抱えるのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


今回は体育祭編後の後日談として、五十嵐君とのやり取りを中心に描いてみました。


最初はぶつかり合っていた二人ですが、少しずつお互いを理解し始めています。

個人的には「小鳥遊」から「優斗さん」へ呼び方が変わる場面がお気に入りです。


また、優斗自身も「自分が特別だったわけじゃない」と改めて考える回になりました。

人との繋がりは実力だけではなく、偶然や縁によって生まれることもあるのかもしれません。


面白いと思っていただけましたら、評価やブックマーク、感想などで応援していただけると嬉しいです。


次回もよろしくお願いいたします。

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