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君を知って、恋を知る ~学校一の聖女様と秘密の同担オタクライフ~   作者: 浜焼き三太郎
第2章 君と駆ける

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50話 放課後、駆け出す僕ら

いつも読んでいただきありがとうございます!


ついに体育祭編も大詰めです。


全力で走り切った人も、声が枯れるまで応援した人も、きっと体育祭が終わった瞬間に「終わったぁ……」と気が抜けた経験があるのではないでしょうか。


そんな高揚感と少しの寂しさが残る放課後のお話になります。


それでは、第50話『放課後、駆け出す僕ら』どうぞ!


ひんやりとした保健室。


そこに二つの声が重なっていた。


「結果見る余裕も無かったから、それ聞けて安心したよ。」


「うん。優斗君やみんな、頑張ってくれたおかげ。」


「千春も、ね。」


彼女は照れくさそうに笑って、


「そ、そっか……。」


毛先をくるくると指に巻いた。


「にしても僕がここで寝てたってことはさ。」


丸椅子に座る千春へ視線を向ける。


「誰かが運んできてくれたってことだよね? もしかして、千春じゃないよね?」


問いかけると、彼女は首をふるふると振った。


「確か、五十嵐さんって人?」


「へっ、あの五十嵐君が?」


「うん? 多分、その人だと思う……けど。」


若干自信なさげに呟く。


「髪短いよね?」


「うん。」


「だいぶ強面?」


「……ちょっと怖かった。」


腕をさすりながら、千春が困ったように苦笑した。


《五十嵐君、怖がられてるじゃん。》


ほんのり彼へ同情しつつ、再び千春へ向き直る。


「なんか僕に言ってた?」


「う~ん、“中々見どころあるじゃねえか” って、褒めてた気がする?」


「あ、そんな感じ。」


胸を撫で下ろした。


「そんな感じって?」


「う~んと、それはだなぁ……。」


《てっきり、千春関連で何か言われるものかと思ってた―――なんて言えないよな。》


「まぁ、男には色々あるんだよ。」


きょとんとした顔で見つめられた。


「ところで、今体育祭どんな感じ?」


「んと……もう終わったよ。」


「終わった?」


千春が肯定するように、翡翠色の瞳をぱちくりと瞬かせる。


「体育祭、私たち青組は二位だった。」


「えぇ~……。」


「一位は黄色組。三位と四位は赤組、緑組の順だった。」


「ちょ、ちょっと待って!」


彼女の前に右手を突き出し、空いた左手で額を押さえた。


状況の整理に脳の処理が追いついていない。


「するとあれか? 僕は終わるまで呑気に寝てたってこと?」


「……そうなるね。」


「うわぁ~、マジか……。」


がっくりと項垂れる。


「でも優斗君って、体育祭乗り気じゃなかった気が?」


「まぁ、確かに最初はそうだったんだけど―――」


今までの練習風景や出来事を思い返す。


良いことばかりじゃない。


時々すれ違うこともあった。


それでも胸を温かくするような、優しい思い出だった。


「みんなと練習するうちに、“体育祭も案外悪くないかも”って感じたというか……。」


逆にこっちが恥ずかしくなって、首筋を掻きながら顔を背ける。


「だから、最後までみんなと楽しみたかったなーって。ごめん、何言ってんだろう僕。」


今の話を誤魔化すように両手を振った。


「そう、なんだね。」


その先に映った千春は、どこか泣きそうな顔をしていた。


胸がきゅっと詰まったような、それでいて嬉しそうな表情。


けれど微笑みだけは絶やさない。


「……優斗君、さっきの訂正。」


何かを決意するように、千春の瞳が小さく揺れた。


「やっぱり私たちにとっての体育祭、まだ終わってなかったみたい。」


「はい?」


「だって、家に帰るまでが体育祭だから。」


そう言って彼女はスマホを取り出した。


そこには体育祭用に作られた、クラ対リレー組のグループチャットが表示されている。


画面を覗き込み、思わず千春を見た。


「ほら、みんな待ってるみたいだよ。」


文面はどれも僕を気遣うもの。


そして―――


「集合写真、一緒に撮りに行こ?」


来栖さんからのメッセージを指差しながら、千春が言う。


彼女は椅子から立ち上がり、スマホを持った手を後ろで組んだ。


その拍子に、ハーフパンツの裾がふわりと揺れる。


「そうだね。疲れもすっかり取れたみたいだし―――」


ベッドから降りて上履きに履き替える。


「待たせるのも悪いから。」


「うんっ!」


いつもより少し弾んだ声で、彼女が頷いた。


「雅之と来栖さんどこにいるんだっけ?」


「教室だと思う。」


「おっけー。ならさっさと向かおうか。」


そうして二人は、放課後の校内へ飛び出すのだった。

第50話『放課後、駆け出す僕ら』を読んでいただきありがとうございました!


優斗はリレーを走り切った代償で途中退場となってしまいましたが、それでもみんなとの体育祭を楽しかったと思えるようになりました。


そして千春も、そんな優斗の言葉を聞いて色々と思うところがあったようです。


「家に帰るまでが体育祭」


誰もが一度は聞いたことのある言葉ですが、今回は二人にとっての体育祭の続きを描くために使わせてもらいました。


集合写真を撮りに向かうだけの小さなシーンかもしれませんが、走り終えた後だからこそ見える笑顔や景色があるのかなと思います。


もし今回のお話を気に入っていただけましたら、ぜひ評価やブックマークで応援していただけると嬉しいです!


感想もお待ちしております!


それでは、次回もよろしくお願いします!

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