4話 彼女の秘密
プロローグや一話などの設定やセリフ、口調を変えみました。
前回までのあらすじ。
立ち入り禁止の屋上から、
声が聞こえたので向かってみた。
すると、学園の聖女様とばったり遭遇。
何やら様子も違うし、編みぬい持ってるしで困惑した僕は、
うっかり扉の外に出てしまう。
そんで彼女に見つかり、
いよいよ逃げられなくなったってオチ。
「あは、ははは……。」
情けない自分に、乾いた笑みが出た。
「……。」
千春さんはそれを黙って見ている。
《この状況、気まずいなぁ……。》
チラチラと視線を送ってみるが、それすらも微動だにしない彼女。
だけどその右手は、確実に僕の腕を掴んでいた。
「あの~、ちはるさ―――」
―――ギンッ!!
「ひっ?!」
大きく見開かれた瞳が僕を捉える。
綺麗な顔も相まった狂気の表情。
ホラー映画さえ目じゃないくらいの怖さだった。
「……あなた、聞いていましたよね?」
小さく僕に問われる。
「な、何のことでし―――」
「誤魔化さないでください!さっきのことですよ!!」
ピシャリと言い放つ。
手入れの行き届いた艶髪が、
意思を持ったようにゆらゆらと蠢いている。
同時に、怖いくらいに瞳孔が開いていた。
「聞いてたんですよね?見てたんですよね?
そこの所どうなんですか、答えてくださいよ!!」
声音に余裕の無さが滲み出ていた。
どうか嘘であってくれ、
そう思わせてくれ。
彼女の叫びが、
手の震えを通して伝わってくる。
「い、いえ。僕はなにも……。」
条件反射で嘘をついていた。
これが、お互いの最善の策だと思ってしまったから。
《……正直、千春さんの気持ちは痛いほど分かる。》
見ず知らずの、ましてや異性に、自分のあられの無い姿を見られた。
恥ずかしいとかそれ以上に、
不安や恐怖、悲しみが押し寄せていると思う。
だったら、この話を僕だけに留めてしまえばいい。
だから僕はしらを切った―――のだが、
「ちょ、イタいっ!」
腕がミシミシと軋みだした。
「ほんとちぎれるっ!ちぎれちゃうからっ!!」
眉間にしわを寄せ、恨みがましく見つめる千春さん。
翡翠の瞳が不鮮明に揺れていた。
「……うそ、つきましたね。」
「べ、別に嘘なんか。」
「もういいです。全部話します。」
そう言って、僕の腕を振り解いた。
「本当の私を知られた以上、もう隠す必要も無いので。」
悲しげに目を伏せ、肩を落とした。
「聖女じゃない私に価値なんて無いんです。」
千春さんが呟いた。
「こっちの私は、オタクで陰キャで人見知りのどうしようも無い人間。
きっと皆さん幻滅するし、離れていくんですよ……。」
「そんなこ―――」
「そんなことあるんですよ!」
キッパリと言い放った。
「だから日々バレないよう、演じる努力をしてきた。
今の生活を守るために必死だったんです!!」
ブレザーの裾を握りしめ、彼女は叫んだ。
胸の内がヒシヒシと伝わってくる。
「だからお願いです、小鳥遊さん。」
苦しそうな顔で、胸に手を当てた。
「ここであったこと、誰にも言わないって約束してください……。
でないと今から―――」
千春さんは一歩後ろへ下がった。
その背中が、屋上のフェンスに触れる。
「あなたの前で飛び降ります。」
空気が震えた。
「……へっ?」
冗談には聞こえなかった。
その証拠に彼女の瞳は、
一切の瞬きをしていなかったから。
僕は。
とんでもないことに巻き込まれたようだ。
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