48話 君の声が聞こえたから
皆さんこんにちは!
今回は体育祭編のクライマックスです!
千春から託されたバトン。
そしてアンカー同士の最後の勝負。
優斗は無事にカッコいいところを見せられるのか……?
ぜひ最後までお楽しみください!
バトンを受け取った千春。
そこから駆け出し、みるみる周囲との差を縮めていく。
彼女の長い脚が、地面を次々と蹴り抜いた。
―――タッタッタッタッ
『おいおい! 聖女様めっちゃ速いじゃん!!』
『一位との差がどんどん縮まってく! すげぇよマジで!!』
音を置き去りにするほどの俊足に、周囲の盛り上がりは最高潮に達した。
「……頑張れよ、千春」
残り距離半分を切った時、僕はバトンゾーンへと立った。
その隣では、五十嵐君が準備運動をしている。
「流石は聖女様だ。俺らのクラスもちとマズいかもな~」
「けどよ」
額に庇を作った五十嵐君が、挑発的な笑みを浮かべる。
「俺にバトン渡しちゃあ、全部関係ねぇんだが」
彼の悪人面にさらに磨きがかかる。
「お前もそう思うだろ? 小鳥遊ぃ」
「……」
「チッ、シカトかよ」
五十嵐君の問いかけには答えず、僕はただ一点を見つめていた。
聖女だとか関係ない。
一生懸命だからこそ、眩しく映る千春の姿を。
汗を散らしながらも、勝利を、僕を信じて走り続ける彼女を。
「五十嵐君」
「んぁ?」
目つきを一際鋭くさせた五十嵐君。
「悪いけど、君に勝ちは譲れない」
「……は?」
「だってさ」
決意に燃える目で彼を見た。
「カッコいいとこ見せなきゃだからね」
そのまま視線を前へ戻した。
「……へぇ~、なるほどなぁ」
彼はニヤリと口元を歪めながら、
「なら見せてくれよ、おめぇの本気をよぉ」
二人の足音が近づいてくる。
千春と、二の五の距離は残り二メートル。
『頑張れ~~~千春さん!!』
『二の五ファイト~~~!!』
応援が入り乱れる中、その時はやって来た。
パシッ
「そんじゃあ、お先っ!!」
五十嵐君が猛スピードで走り出す。
スタートも完璧。
足の速さもピッチも悪くない。
ガタイのわりに軽やかな足音が、一定のリズムを刻んだ。
―――だけど。
「千春!!」
「っ! 優斗君!!」
刹那、周囲の音が引き伸ばされていった。
観客の動きも、五十嵐君の走りさえもスローに見えた。
咄嗟に目を見開く。
勝負の最中だというのに、僕へ向けられた千春の笑顔はどこか安心したようで。
その表情に、胸を撃ち抜かれた。
パンッ
右手で弾けたバトンの音。
全神経が一点に研ぎ澄まされる。
全身の筋肉が弾けるように収縮した。
圧縮された力を、一息に解き放つ。
「ッ!!」
呼吸を切って走り出した。
つま先が地面を蹴り上げる。
腕は空気を切り裂き、
全身が風と一体になるのを感じた。
『小鳥遊、速くね?!』
『嘘だろ?! どんどん距離縮まってんじゃんっ!!』
『やばいって!! マジでこれ、どーなんの?!』
観客が今日一番の盛り上がりを見せていた。
それでも今の僕には届かない。
この数秒に全てを賭けていたからだ。
ゴールまで半分を切った。
五十嵐君まで残り五メートル。
「くっ!!」
背後の僕に気付いたのか、五十嵐君がさらに速度を上げる。
後ろ姿からでも分かる余裕の無さ。
「うっ!」
限界なのは、お互い様だ。
ふくらはぎが、太ももが、ミシミシと悲鳴を上げている。
息が続かない。
視界の半分はもう見えてすらいなかった。
―――それでも!!
歯を食いしばり、体内のギアを上げる。
薪をくべろ。
酸素を燃やせ。
これまでの全部を出し尽くすんだ―――!!
『いけぇ! 小鳥遊~~~!!』
『頑張れ!!』
『一位行ける! 突っ走れ~~~!!』
五十嵐君の隣に並ぶ。
『がんばれ~~~! 優斗君っ!!』
その声だけは、不思議とはっきり聞こえた。
《ありがとう、千春……》
「ウォォォォォォ―――!!」
「ハァァァァァァ―――!!」
僕ら二人はほぼ同時にゴールへ飛び込んだ。
パァンッ!!
レース終了を告げるピストルの音が鳴り響く。
視界の端で、生徒たちが飛び跳ねているのが見えた。
「ハァ、ハァ、は―――」
地面がグラつく。
視界が暗転する。
上半身に強い衝撃を感じた直後、
僕の意識は途切れたのだった。
読んでいただきありがとうございました!
体育祭編クライマックス回でした!
千春の激走、五十嵐との勝負、そして優斗のラストスパート。
書きたかった場面をたくさん詰め込んだ回になりました。
個人的には、優斗が「カッコいいとこ見せなきゃだからね」と言うシーンがお気に入りだったりします。
もし少しでも
「熱かった!」
「続きが気になる!」
「千春可愛い!」
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次回は体育祭編の結果発表です。
ぜひお楽しみに!




