45話 恋のライバル、現る
体育祭編です。
玉入れで華々しく散った優斗たちですが、次の種目では新たなライバルが登場します。
オタクVS陸上部エース(予定)。
ぜひお楽しみください。
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「いやぁ、ボロクソに負けたな~。」
「だな、他の組強すぎだろ……。」
疲弊した顔で僕は肩を落とした。
玉入れ終了後、僕と雅之は外用のトイレに向かっていた。
人でごった返すグランドを抜けるのに苦労したが、それ以降は割とすんなり行けた。
「俺らのクラス、確か30個くらいだったか? どのくらい入った?」
「……0個。」
「えぇ~、マジかよ。」
口をあんぐりと開けてから、プッと噴き出す雅之。
「……スターダスト。フフッ、ば、バレット。」
「やめてくれ。恥ずかしさで死にたくなる。」
「あんな大層な名前まで付けて、一個も入らなかったってどゆことだよ?」
腹を抱えて大笑いする雅之が聞いてきた。
「そこはほら、調子が悪かったっていうか。まだ本気出してないだけで……。」
「ほ~ん。ま、そういう事にしといてやるか。」
雅之が目尻を拭いながら言った。
「それよか、さっさと済ませて応援行こうぜ。」
「りょうかい。で、次の種目何だっけ?」
「借り物競争だったかな? 確か穂乃花が出るから覚えてる。」
「へぇ~、穂乃花さん出るんだ。」
視線を斜め上に逸らして、
「なんか、イベント起こりそうじゃない?」
「おっ、流石分かってるな相棒。」
腕を組んで嬉しそうに口角を上げた。
「借り物競争と言えば、少女漫画とラブコメの定番だからな。どんな展開になるか楽しみだぜ。」
「分かる。好きな人とかのお題あれば熱いよね。」
「そんで自分が選ばれたりしてな。」
「激熱じゃん。」
そうやって二人でひとしきり話していたのだが。
「あれ? 雅之じゃねえか。」
「ん?」
振り向くと、銀髪の少年が立っていた。
袖を肩までまくり上げた腕は太く、鋭い目つきも相まって近寄りがたい。
一言で言うなら、いかつい。
「達哉か。奇遇だな、そっちもトイレか?」
「まぁな、次の短距離走前に行っとこうかと。」
それから僕を睨むように見た。
「あぁ、紹介してなかったな。こっちは中学で一緒だった五十嵐 達哉だ。」
「よろしくな。」
「えっと、小鳥遊優斗です。よろしく。」
差し出された右手を取ると、力強く握り返してきた。
おかげでちょっと痛い。
「あの……。」
「……。」
おずおずと顔を上げると、彼は僕を見て固まっていた。
「なぁ、お前どっかで会ったことねぇか?」
「……はい?」
顎をさすりながら、眉を寄せて僕を見る。
「なんだか、初めてな気がしねぇんだよな。」
「そ、そうかな。僕は初めてな気がするけど。」
「ほ~う。」
そう言うや否や、バッと手を放した。
ニヤリと意味深に笑う。
「んなこたぁどうでもいいか。それよりもだ―――」
痛んだ手を振っている僕をよそに、彼は雅之に目をやった。
「クラ対リレー、出んのお前とコイツだろ?」
「知ってたのか。」
「まぁな。俺らの聖女様と随分仲良さそうにしてたからよぉ。」
《今、“俺らの聖女”って言ったのか? 妙に棘のある言い方だったな……。》
「小鳥遊とか言ったか? 見たところ俺の敵ですらねぇな。」
「……それはどういう意味で?」
「言ってなかったな。俺も出るんだよ、クラ対リレー。」
ポケットから櫛を取り出し、得意げに前髪を梳き上げる。
気取った仕草だが、やたらと自信に溢れていた。
「陸部のエース参戦、ってことか。」
へぇ~っと言いながら、雅之は口に手を当てている。
「一位を取って、カッコよく聖女様に告白する。」
口の端を吊り上げた。
「おめぇらは引き立て役として、せいぜい指くわえて見てるんだな。」
歩き出した五十嵐君。
雅之の隣を過ぎて、次いで僕の肩に手を置いた。
「お互い、いい試合にしような。」
「……。」
僕は振り返りもせず、黙ったまま前を見ている。
彼は満足そうな含み笑いをして、その場を去っていった。
「優斗、大丈夫か?」
心配そうに声を掛ける雅之に掌で制止する。
「……なぁ、雅之。」
「お、おう。どうした?」
―――ギ、ギギギギギ
雅之の方へ軋ませながら顔を向けた。
今どんな顔をしてるか分からないが、彼の顔には冷汗が滴っている。
「さっきの五十嵐 達哉君だっけ?」
体中の震えが止まらない。
恐怖じゃない。
熱だ。
胸の奥で煮えたぎるマグマが、今にも噴き出しそうだった。
「……思い知らせてやる。オタクを敵に回すとどうなるかを。」
包み込んだ右手から骨の鳴る音がした。
「絶対勝つぞ、雅之!」
「お、おぉーーー!!」
僕ら二人の声が校舎に木霊した。
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