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君を知って、恋を知る ~学校一の聖女様と秘密の同担オタクライフ~   作者: 浜焼き三太郎
第2章 君と駆ける

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37話 ぎくしゃく

人との距離が縮まる時。


嬉しいばかりではなく、時には戸惑うこともあります。


自分でも名前をつけられない感情に振り回されながら、

優斗は今日も体育祭の練習へ向かいます。


それでは第三十七話、よろしくお願いします。


体育祭練習四日目。


あの日から三日が経った。


今日も今日とて、雅之と走り込みトレーニング。


数十分が経った頃、


「それじゃあ一旦休憩挟むか。」


「いや。ハァ、僕はまだまだ、いけるって……。」


膝に手を当て、肩で息をしていた。


「無理すんなって、息切れ切れじゃねぇか。」


「だ、だいじょ―――うっ!」


「ほら、言わんこっちゃない!」


突然の眩暈と共に、僕はその場に座り込んでしまった。


「立てるか?」


「ん、平気だ……。」


差し出された彼の手を掴んで、よろよろと立ち上がる。


すると、僕らの方に駆け寄る足音が二つあった。


「ねぇ~~~! そっち大丈夫そう?」


それに遅れて間延びした、それでいて心配そうな声が聞こえた。


見ると、千春と来栖さんが心配そうに僕を見ていた。


「いや、ちょっと立ち眩みがしただけ……。別に大したことじゃないよ。」


「それほんとに大丈夫なわけ?」


「お前なぁ、そういうの放っておくとロクなことにならないんだぞ?」


雅之が珍しく眉をひそめている。


その表情だけで、本気で心配していることが分かった。


「僕は大丈夫だから……。さぁ、とっとと練習再開しないと。」


「やる気があるのは結構だけど、今日の優斗ちょっと変だぞ?」


「別に変じゃないよ。体育祭に向けて気合入っただけだって。」


「だとしてもだ。その調子で練習させるわけにもいかんだろ?」


雅之に握られている腕に力が入るが、気にせず僕は軽く振り払った。


《今は走りたいんだ。じゃなきゃ、頭の中がどうにかなりそうなんだよ。》


視線は無意識に千春を追ってしまう。


だから彼女のいる方を見ないように、眉間に手を当て目を閉じる。


「……私もそう思います。」


すると突然、柔らかなソプラノボイスが響いた。


思わず声の方を見る。


「暑くなってきたこの時期は、熱中症の可能性だってあるんですよ?」


瞳を大きく開いて、翡翠色を暗緑色へと変えていた。


あまり口を開かない千春の突然の発言に、雅之も来栖さんも目を丸くした。


「そんな大袈裟な―――」


「大袈裟なんかじゃありません!」


語気のこもったトーンで彼女が言い放つ。


普段の聖女モードとは違う、強張って怒っているような表情に心臓はバクバクしていた。


「万が一があってからでは遅いんですよ?」


「……」


雅之にも心配された。


来栖さんだって気遣ってくれた。


だけど。


千春の言葉だけが、胸の奥底に沈んでいた。


だって千春の顔があまりにも真剣で、


その瞳には、僕の姿しか映っていないように見えたから。


「保健室―――行くなら私、付き添います。」


「え、いや、それは……。」


「だったら俺が連れていくわ。こういう時の男手だからな。」


雅之が力こぶを見せつつそう答えた。


野球部時代の貯筋が貯まっているからか、ナイス筋肉である。


「えっと……。」


困ったようにこめかみを指で搔いていると、


「そうだよ千春っちの言う通り。無理は禁物っしょ。」


来栖さんが呟いた。


《千春っち、か。》


その呼び方が妙に引っかかった。


《もうそんなに仲良くなったのか……。》


ゾワゾワ


胸の奥に生まれた黒い感情は、瞬く間に広がっていく。


振り払おうとしても消えてくれない。


むしろ意識すればするほど、その存在感を増していくばかりだった。


「……わかった。」


僕は言った。


「とりあえず、水飲んで休んでくる。それでもヤバかったら……雅之、頼んだ。」


「今すぐにでも、保健室に放り込みたいんだがしゃあねぇ。優斗がそう言うんなら。」


「サンキューな。」


そうして女子二人組にも振り返った。


「ありがとう、二人とも。」


「いいってことよ~。」


「……。」


千春だけは何も言わなかった。


僕はそれに気づかないふりをした。


今の千春に向き合う勇気も、心の余裕も。


今は足りていなかった。

最後まで読んでいただきありがとうございました!


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