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君を知って、恋を知る ~学校一の聖女様と秘密の同担オタクライフ~   作者: 浜焼き三太郎
第2章 君と駆ける

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34話 君の傍にはいつだって

体育祭の練習もいよいよ本格化。


そんな中で明かされるのは、千春がずっと抱えていた過去の傷でした。


誰かに理解されないこと。

好きなものを否定されること。

そして、一度失ってしまった居場所。


今回は、そんな千春の本音に優斗が向き合うお話です。


少しだけ真面目なお話ですが、二人の距離がどう変わっていくのかも楽しんでもらえたら嬉しいです。


それでは本編をどうぞ。


「それって、屋上で会った時にも言ってた……。」


「はい。」


目を伏せた。


「中学の頃の私は、陰キャでコミュ障レベル100だったの。」


「コミュ障レベル100?」


「そのせいで誰とも話せないし、一緒にいれなくて……。」


昔を思い出すように遠くを見る。


「気づいたら “孤高のお姫様” なんてあだ名で呼ばれてた。」


「孤高のお姫様……か。」


「お姫様って、そんなガラじゃないのにね。」


ふっと、嘲るように笑った。


「だけど、そんな私に仲良くしようとしてくれた子がいたの。」


どこか懐かしむような笑みを浮かべた。


「真咲さんって子でね。」


「太陽みたいに明るくて、みんなのムードメーカー。


いつも周りに人が居るの……。」


その顔には色んな感情が混ざっていた。


良いものだけじゃなくて、少し苦い感情も。


「聞いた感じ、いわゆるトップオブ陽キャってやつだな。」


「うん。私もそう思った。」


やれやれといった風に、肩を落とした。


「……今思えば、クラスで一人の私を気遣ってくれてたのかも。」


静かに噛み締めるように千春は言った。


それはまるで、自分に言い聞かせているみたいだった。


「真咲さんと話すうちに、いつしか私たちは友達になった。」


本当、嬉しそうに頬を緩めた千春。


「である時、私の家で遊ぶことになったのだけど。」


しかし、すぐ元の顔に戻る。


「私の部屋に入った時……多分だけど彼女の顔、死んでたと思う。」


今度は一変して、辛そうな顔になった。


「普通の人はびっくりするよね、オタク部屋を実際目にするのって……。」


声が震える。


「次の日。学校に行ったら、真咲さんたちに散々言われてた。」


***


『そういえば真咲、千春さんの家行ったってほんと?』


『え、行ったけど。』


『千春さんの部屋どうだった? 趣味とか色々さ。』


『う~ん。』


『なんかイメージと違ったかな。オタクって言うか……。』


『え、マジ? オタクとか大分キツくない?』


『それは……。』


***


「結局その日は早退したの。ショックが大きくて……。」


「……。」


それを聞いて僕は、何も言えなかった。


オタクへの理解が浅い人からの、容赦の無い一言。


その破壊力がどれほどか、身をもって体験したことがあったから。


「その日以降、私と真咲さんの間に距離が出来てた。」


「学校で顔を合わせても言葉を交わさなくなって、メールのやり取りも途絶えた。」


「私はまた、クラスで一人になった。」


千春は吐き出すように言った。


その瞳からは、いつもの柔らかな光が消えていた。


「……なるほど。」


僕は左の手の甲に右肘を乗せて、考える素振りをする。


「要するに来栖さんと真咲さんを、重ね合わせてたってことか……。」


千春はバツの悪そうに下を向いた。


「来栖さんがそういう人じゃないって、頭では分かってる。けれど―――」


下唇を噛んで口をつぐむ。


《言えない、か。》


ふぅ~っと、僕は少し息をついた。


それから、千春の隣の壁に寄り掛かる。


「そう簡単に割り切れない―――でしょ?」


タオルを首に掛けて、顔を上げた。


千春の方に体を向ける。


「昔のことをいつまでも。ほんと、情けないな……。」


彼女は寂しそうに笑った。


それを見て、胸の奥がズキっと痛んだ。


「改めて千春はさ。」


見かねた僕は口を開く。


「来栖さんに、本当のこと話したい?」


囁くように優しく聞く。


すると泣いている子供みたいに、千春はよわよわしく頷いた。


「そっか。」


空を見上げる。


夕日が落ちかけていた空は、橙色と紫のグラデーションを築いていた。


「今日来栖さんと話してみて、彼女がそういう人じゃないって僕も思ったよ。」


千春は黙ったまま、僕の言葉に耳を傾けていた。


「けど千春が本当のことを言ったとして、その後どうなるのか。


確かなことはごめん、言えないんだ。」


予想していた答えだったのか、何の反応も示さずに立ち尽くしている。


「でもね、一つだけ言えることがある。」


壁から背中を離し、彼女の正面に立つ。


「千春は―――絶対に一人になんかならないよ。」


沈んだ顔がゆっくりと上がる。


「だってさ。」


自分の胸をポンっと叩く。


夕日に照らされた瞳が、微かに揺れた。


「君の傍にはいつだって、気の合うオタ友がいるんだからっ。」


そう言って笑う。


千春は目を丸くし、それから泣きそうなくらい優しく微笑んだ。


お読みいただきありがとうございました。


今回は千春の過去と、彼女が来栖さんに本当のことを話せなかった理由を描いてみました。


オタク趣味に限らず、「好きなものを否定された経験」がある人は少なくないのかなと思います。


そんな傷を抱える千春に対して、優斗なりの言葉で背中を押してもらいました。


少しでも二人の関係性や感情が伝わっていたら嬉しいです。


面白かった、続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや評価をいただけると今後の励みになります。


感想も一つ一つ大切に読ませていただいておりますので、お気軽によろしくお願いします。


それでは、また次回でお会いしましょう。

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