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君を知って、恋を知る ~学校一の聖女様と秘密の同担オタクライフ~   作者: 浜焼き三太郎
第2章 君と駆ける

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32話 オタクに優しいギャル?

体育祭の練習も少しずつ本格化してきた今日この頃。


今回は優斗たちの日常回です。


オタク談義で盛り上がる一同ですが、その会話は思わぬ形で千春の心に触れることになって―――。


友達以上恋人未満な優斗と千春の距離感はもちろん、新たな一面を見せる来栖さんにも注目していただけたら嬉しいです。


それでは本編をどうぞ。


「このイラストって確か、“蒼炎のブレイバー”だよね?」


「ご名答~。なになに? 詳しいじゃんっ。」


「詳しいも何も、僕ら世代の男子はみんな通ってるし……。」


だよね?


とアイコンタクトをすると、雅之はウンウンと頷いた。


「この漫画俺もハマったわ~。特に作画がレベチなんよ。」


「分かる! ウチは戦闘描写の書き込みとか、キャラの掛け合いとかがめっちゃ好きなんだ~。」


「見てて引き込まれるよね。」


「そうそれ!!」


目を子供みたいにキラキラ輝かせ、まとめた金髪がふんわり跳ねた。


「何より主人公の生きざま? みたいなのがマジで好き!!

ウチ女子だけど、ああいうの憧れちゃうわ……。」


「漢の中の漢だよな。」


「あんなの、男女問わず惚れちゃうよね。」


「共感しかない。」


腕を組んで僕らの意見に聞き入っていた来栖さん。


だが突然、ハッとしたような顔で。


「って、ごめん千春さん! ウチらだけで盛り上がっちゃって。」


「えっ? い、いえいえそんな―――」


「ってか千春さん的に、あんまりこういうの読まない?」


「っ!」


千春が言いかけていたところを、来栖さんが遮ってしまう。


反射的に言葉が詰まった。


「わ、私は……。」


「うん?」


多分本人的には、純粋に彼女の話が聞きたいだけなのだろう。


けど、見え方によっては先を促すような態度が、余計千春の負担になってしまった。


「……。」


何かを躊躇うようにその唇を震わせている。


「千春さん?」


心配そうに首を傾げた来栖さん。


《なんか雲行きが怪しいな。ここは何か言っておいた方が。》


「あの―――」


「……読まない、ですね。」


千春がそう答えた瞬間、僕の胸がひどく痛んだ。


「漫画とか、アニメとかは全然でして。」


そんなはずはない。


だって、あんなに楽しそうにアニメや漫画の話をする千春の顔を、僕は知っているから。


「好きでも嫌いでもないですよ。」


自分で自分を否定している。


そう思ったのは、きっと僕だけなのだろう。


言い切った千春の顔は、少しだけ悲しそうに見えた。


「そっか~。」


来栖さんが寂しそうに笑う。


「ワンチャンあるかな~って思ってたんだけど、やっぱりか……。」


心なしか、さっきまで跳ねていたシュシュがしょんぼりしている。


「でもねだよ、千春さんっ。」


そう言って、彼女の手を両手で包み込んだ。


「あの作品、小さい子から大人まで楽しめるから!

今度ぜひ読んでみてよ!」


「えっ? あ、あの、その……。」


「一生のお願いっ!」


来栖さんの圧にとうとう耐え切れなくなり、


「……わ、わかりました。」


「ほんと? 約束だからね!!」


顔をほころばせて、全身で喜びを表す来栖さん。


まとめた金髪が、しっぽみたいにぶんぶん揺れていた。


「そうだぞ~、ちなみに俺の彼女も読破済みだから。」


「穂乃花さん、どんどんオタクが仕上がってきてるよね。」


「二組の如月さんだよね?

なら今度話しかけに行ってみよ~。」


三人で笑い合う。


ほんの少しの暗い雰囲気も、少しは緩和された気がした。


と思っていた矢先に。


「……ちなみにですけど、来栖さん。」


千春が口を開いた。


その顔は半分くらい、聖女モードが崩れかけていた。


「ん、どうしたん?」


来栖さんが振り返る。


「そのさっき“私が読んでるかもしれない”って、どうしてそう思ったんですか?」


「どうしてって、なんとなくだけど?」


下唇に人差し指を当てて答えた。


「普通、その……違和感とかありませんか?」


「え?」


来栖さんはキョトンと目を瞬かせた。


「無いけど?」


けろりと答える彼女。


「キャラに合わせて好きなもの我慢するの、ハッキリ言ってつまんなくない?」


「っ!!」


面食らったように黙り込む千春。


「誰にどう思われたって、好きなもんは好きでいいじゃん?」


髪の毛先をくるくると指で絡めながら、真っ直ぐ千春を見つめている。


「それがオタクってもんでしょ。」


弾けるような笑顔で元気よくピースしてみせた。


「だよねっ。そこのお二人さん。」


そう言って目配せをしてきた来栖さん。


「おうよっ。その通りだぜ。」


「激しく同意です。」


僕ら二人して大きく頷いた。


「みなさん……。」


千春は何かに気付かされたような、そんな表情を浮かべていた。


でもそこにはさっきまでの曇った感じは一切なく、晴れ晴れとした感じが残っている。


「勉強になりました。本当にありがとうございます。」


「いいってことよ~。」


千春はどこか拍子抜けしたような顔で、けれど少しだけ嬉しそうに笑っていた。


その表情を見られただけで、今日は十分だった気がする。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


今回は来栖さん回でした。


明るくて距離感が近くて騒がしいだけのギャルかと思いきや、案外本質を突くタイプかもしれません。


千春が抱えていた「こうあるべき」という思い込みを、本人は全く自覚せず吹き飛ばしていくのが来栖さんらしいなと思いながら書いていました。


優斗にとっても、そんな千春の表情を見ることができた大切な時間になった気がします。


少しでも楽しんでいただけたら幸いです。


それではまた次回お会いしましょう。


浜焼き三太郎

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― 新着の感想 ―
心温まる良いお話でした。
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