31話 クラス対抗リレー組
体育祭シーズン到来です。
今回は優斗たちの日常回。
クラ対リレーの練習中、男子組のもとへ女子組がやって来るのですが、その相手がまさかの……。
友達以上恋人未満な優斗と千春の距離感も、ほんの少し感じていただけたら嬉しいです。
それでは本編をどうぞ。
放課後のグラウンド。
いつもなら、陸上部やらサッカー部やらでごった返しているのだが、今週は違う。
体育祭に向けて各クラス、各団が種目練習に明け暮れていた。
当然僕もその一人で、
「ぜぇ、はぁ、もう限界……。」
「おいおい、こんなもんか~?」
「き、キッツ……。」
膝に手を当てて、荒く息を吸う。
口の中は鉄?というか血の味がした。
肺はさっきから張り裂けそうで、立ってるだけでもやっとだった。
「う~む、自覚は無いんだがなぁ。」
ぽりぽりと頭を掻いた。
「大体、あんだけ走り込みして、なんで息の一つも上がってないのさ?」
「え、あんなのウォーミングアップだろ?」
「この体力お化けめ……。」
恨めしそうに雅之を見る。
当の本人はけろっとしていた。
《そういやコイツ、よく運動部の助っ人に駆り出されるんだったな。》
改めてその凄さを実感していると、
「お~い、そこの二人組~。」
遠くから女子二人が手を振ってやって来た。
一人はクラスでも有名な陽キャグループの一人。
長い金髪をシュシュで一本にまとめた、
来栖みのりさん。
そしてもう一人は、学校で知らない人がいない亜麻色髪の少女。
アンネリーゼ・千春・リンドバーグ。
要するに、千春だった。
「練習お疲れさんっ。男子組、めっちゃ捗ってんじゃ~ん。」
「お~、女子組もお疲れさん。」
手を振りつつ見てみると、体育祭モードだからか、ジャージと鉢巻のアクティブな格好だった。
千春は相変わらず様になっている。
来栖さんはジャージの袖をラフに捲っていて、ただそれだけなのに妙におしゃれに見えた。
「そりゃあだって、俺と優斗のペアなんだぜ? 加減しなくていいから捗りまくりよ!」
僕の肩に腕を回しつつ答えた雅之。
「もう少し、お手柔らかにでもいいんだぞ?」
「ハハハッ! それは無理!!」
「ちきしょーめ!」
「ふふっ。」
僕らの中でコントを繰り広げていると、前から小さな声が漏れた。
軽く握った掌を口元に当てて、千春が笑っていた。
「もう~。二人が変なこと言ってるから、千春さん笑っちゃってんじゃん。」
「ほら、優斗が駄々こねるから。」
「僕のせい?!」
その一言で、周囲に笑いが起こった。
千春もなんだかんだ楽しそうにしていたので、正直ちょっと嬉しくもあった。
「お二人とも、すごく仲がいいんですね。」
「おうよ! 俺らは命運を共にしたオタ友だからな。」
「ちょ、雅之それは―――」
「え……。」
その瞬間、来栖さんが目を大きく見開いていた。
「二人とも、オタクだったん?」
彼女が問いかけてくる。
その表情は何を考えているのか全く読めず、僕は答えを言いあぐねてしまう。
《どうしよう、これでオタクアンチとかだったら千春が……。》
「え、えっと、それは―――」
「ん? そうだけど?」
「っ?!」
雅之がキッパリと言った。
驚愕した表情で彼に振り返った。
「なんだよ? 別に隠すことでもねぇだろ?」
「それはそうなんだが……。」
ギギギっと首を軋ませながら、来栖さんの表情を伺った。
来栖さんは意外そうに目を瞬かせている。
そして、
「めっちゃいい。」
「……へっ?」
「なんだよ~、もっと早く言って欲しいじゃん?」
頬をぷく~っと膨らませた来栖さん。
その子供っぽい仕草に、今度は僕が目を丸くした。
しかもその隣で、千春も同じ様な表情を浮かべている。
「実を言うと、ウチもなんだよね。」
そう言って、スマホの画面を立ち上げる。
「来栖さんって、その……オタクだったんですか?」
「あれ? 千春さんに言ってなかったっけ? ほらっ。」
そこには、見覚えのある熱血少年漫画の主人公が映っていた。
「オタクはオタクにひかれあう、なんつってね。」
にひひっと笑う来栖さん。
その眩しい笑顔に対して、
《オタクに優しいギャルって、実在したんだ……。》
そう思わずにはいられなかった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
今回は体育祭準備回ということで、比較的ゆるめの日常パートでした。
個人的には来栖さんを書くのが楽しかったですね。
一見すると陽キャギャルなのに、実はしっかりオタクというギャップのあるキャラクターです。
そして優斗は相変わらず自分より先に千春の心配をしています。
本人は無自覚ですが、こういうところに彼らしい優しさが出ているのかなと思います。
次回は体育祭本番に向けて、少しずつクラスの雰囲気や人間関係も掘り下げていけたらと思っています。
それではまた次のお話でお会いしましょう。
浜焼き三太郎




