29話 画面越し
こんにちは、浜焼き三太郎です。
今回はオタ活デート後のお話です。
クレーンゲームでお揃いのキャラぬいをゲットし、少しだけ縮まった二人の距離。
そんな一日の終わりに届いた一本のメッセージ。
優斗は相変わらずですが、千春の方は少しずつ変化しているかもしれません。
最後まで楽しんでいただけると嬉しいです。
「それじゃあ、気を付けて。」
「うん、また学校で、」
千春を乗せた電車が動き出す。
窓際の彼女は恥ずかしそうに小さく手を振っていて、僕も返すように手を振った。
「さてと、こっちもそろそろかな。」
電車が小さくなるのを見送った後、後続で到着した電車に乗り込んだ。
ストラップを握り直し、ショルダーバッグを引き寄せる。
『ドアが閉まります―――』
発車前のアナウンスを聞きながら、僕はそっと瞼を閉じる。
思い返すのは今日の出来事。
彼女との会話。
食べたパンケーキの味。
お揃いのキャラぬい。
全部が全部、温かくて。
思い出すだけでも笑顔が零れる。
そんな貴重で、有意義な時間だった。
《今日の出来事、小説にでもしようかな?》
そんなことを考えながら、最寄り駅まで浅く眠るのだった。
* * *
「あれ、なんか通知来てる?」
時刻は23時。
風呂上がりにタオルで頭を拭きながら自室に戻ると、スマホにL〇NEが届いていた。
そういえば帰宅してから、スマホを全然触っていなかった。
「珍しいな、雅之か?」
画面をスワイプして確認すると、差出人には思ってもいなかった人物から連絡が来ていた。
差出人
千春
「えっ、千春?」
思わず二度見した。
画面を閉じる。
もう一度開く。
やっぱり千春だった。
「僕に何の用だ?」
アプリを開いて内容を確認した。
【今日はとっても楽しかった!ありがとう!!ヾ(≧▽≦*)o】
ん?
何だこれ?
【誰かとオタ活するのって楽しいねっ!】
【また誘ってもいいかな?(*>﹏<*)′】
語末にやたらと絵文字的なのが打ってある。
喜怒哀楽とか分かるから便利っちゃ便利だけど、今時使ってる人見たことないな。
「ってかこの前のL〇NEと、随分キャラが違うような?」
前、映画を観に行ったときは、もうちょっと堅苦しかったというか……。
少なくとも、こんな絵文字盛り合わせって文章じゃなかった気がする。
「ちょっとは仲良くなれたってことか。」
しかもこれらのメッセージ。
時刻が三つとも18時10分になってる。
要はまとめて、一分以内に送信してるってことだけど……。
《指のスワイプ速度、速すぎでしょ。》
とにかく何か送ろうかと、慣れない手つきで文字を打ち込んだ。
「できたっ! 送信っと。」
【こちらこそ、今日は楽しかった。次行くときは僕から誘うよ。】
「え、既読早っ。」
送ると同時に既読が付いた。
《L〇NEって、そんな早く既読が付くものだったかな?》
まぁ、L〇NEの友達少ないから、確認しようにもできないんだけど。
ピコンッ
目を離した隙に、またもやメッセージ。
【嬉しい!!】
【なら、めいいっぱいオシャレしないとだ(ง •_•)ง】
【楽しみにして待ってるね!!(p≧w≦q)】
【おやすみ、優斗君。】
「……。」
指を小さく動かした。
タップ音を鳴らして、メッセージを打っていく。
【おやすみ、千春。】
既読が付いたのを確認してから、思いっきりベッドにダイブした。
ふぅ~、っと息を吐く。
それから額に腕を置いた。
風邪でも具合が悪いわけでもなかった。
ただ、腕に伝わる体温はひどく熱くて、湯気でも出そうなくらいだった。
またこれだ。
理由も分からず、時々熱に浮かされる日々。
この症状に名前はあるのだろうか?
「分かんないな……。」
天井を見上げながら、小さく呟いた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
デート後のLINE回でした。
優斗はまったく気付いていませんが、千春の方は少しずつ感情が変わり始めています。
二人の距離がこれからどうなっていくのか、温かく見守っていただけたら嬉しいです。
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