2話 接近
プロローグの設定、例えばヒロインの裏の顔など換えてみました。読みやすくなっていると嬉しいです。
茜差す渡り廊下
すれ違う帰宅途中の生徒たち。
どこからか聞こえる吹奏楽の音。
「THE・放課後って感じだなぁ。」
見慣れた光景が、そこには広がっていた。
「さっさと終わらせて、即帰宅したいんだが……。」
腕に抱えた荷物がガサゴソと鳴った。
「資料室、いつになったら見えてくるんだ?」
長い渡り廊下を前にして大きく息をつく。
それから荷物を持ち直し、歩みを再開するのだった。
***
授業が終わってすぐのこと。
文芸部顧問兼、担任の新井先生に呼び出された。
要件は、別棟資料室への荷物運搬。
なんでも、授業資料で使った道具を
持って行ってほしいとのこと。
無理言って部活の顧問をしてもらってる身の僕ら。
だからこそ、断るわけにもいかず
結果として今に至る。
「お~、あったあった資料室。」
何度か続いた階段の登りの末、
資料室と書かれた標識と薄汚れた長机を発見した。
「確か、この机に置いとけって言われたけど……。」
古典、英語、数学のテキストに週刊少年ジ〇ンプ。
幅広いジャンルの書物が散乱していた。
「ハァ~、ここの整理も仕事のうちってことか。
人使いが荒いよ、まったく……。」
先生が僕をよこした理由、半分がこれじゃないか?
なんて疑念は後にして、
まずは目の前を片付けることに専念した。
種類、大きさ、冊数、区画で分別を試みる。
瞬く間に綺麗になり、
空きスペースまで確保できた。
「最後に、持ってきた資料をここに置けば……。」
ゴトッ。
鈍い音が周囲に響く。
「これでよしっ。ミッションコンプリートだ。」
額の汗を拭うと、文字通り肩の荷が下りた。
さっきまでの散らかり具合が噓のようで、
来た時以上の綺麗さになっていた。
「さてと。全部終わったことだし、帰るとしま―――。」
「……。」
ふと足を止めた。
小さくだけど、何か聞こえた気がしたからだ。
「……っ。」
やっぱり聞こえた人の声。
誰がとか、性別までは分からないけど―――
上の階、つまり屋上の方から声がしたのは確かだった。
「あそこへの立ち入りって、確かダメだったはずじゃ?」
ゴクリと喉が鳴る。
気付けば、階段を上っていた。
言いつけてやろうなんて、端から考えていない。
誰が、どうして、何のために?
浮かんだ好奇心の穴を埋めるため。
それと、個人的な趣味のために。
利用させてもらうほかないだろう。
はやる気持ちを抑えながら、一歩一歩声の先へと向かっていく。
やがて薄く開いた扉の先に、声の主が姿を現した。
亜麻色の髪。
翡翠の瞳。
そして。
「むぅ~……。」
掌に乗せた編みぬいを見つめながら、
ぷくっと頬を膨らませる少女
彼女の名前は “アンネリーゼ・千春・リンドバーグ”
聖女様その人だった。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります!
今後ともよろしくお願いいたします。




