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君を知って、恋を知る ~学校一の聖女様と秘密の同担オタクライフ~   作者: 浜焼き三太郎
第1章 君を知る

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27話 呼び捨て

いつも読んでいただきありがとうございます。


今回はゲームセンター回です。


少しずつ距離は近付いているものの、まだどこかぎこちない二人。

呼び方一つ取っても、今まで通りにはいかないようです。


そんな二人のやり取りを楽しんでいただければ幸いです。


「呼び捨て?」


「そう。普段はさん付けだったし、それもいらないかなって。」


「なるほど、ふぅむ……。」


少し考え込む。


「もしかして嫌、だった?」


悲しそうに彼女は言う。


「いや、そういうわけじゃないんだ。」


顔の前で、はたくように手を振った。


「今まで、千春さん呼びで慣れてたからさ。


なんというか、歯痒いんだよ。」


あぁ~、と声を漏らした彼女。


「……なんとなく、分かる気がする。」


「でしょ~。」


お互いにシンパシーなるものを感じつつ。


「けどまぁ、自然に言えるようにしてみるよ。千春さ―――千春。」


「ひゃっ!?」


喉の奥から妙な声が飛び出した。


見ると、千春が口を押えて固まっていた。


「ん。どうしたの?」


「な、なんでもないっ。」


そっぽを向くように前を向いた彼女。


「……まだ、心の準備が。」


小さく何かを言っていたのを僕は聞き取れなかった。


詮索するのも野暮なので、とりあえず一旦放置で。


「それよりさ、あそこのクレーンゲーム見てみてよ。」


「“はし恋”キャラぬい。あんなにギッシリと……。」


興味津々な様子で、その台を見つめる彼女。


「最後にあそこ寄るってのはどう?」


親指で指さすと、同意を示すかのように何度も頷いた。


「よしっ。なら決まりだね。」


それから千春を連れて、クレーンゲームの元へ。


「ちなみに千春の方は何が欲しいの?」


「私はやっぱり百合香たん、って言いたいけど、


今回は主人公の陽彩君が欲しいかな。」


言いながら、財布の中の100円玉を取り出した。


「意外だね。何か理由でも?」


キャラぬいの山を見つめながら聞いた。


「たまには百合香たん以外のキャラも良いかなって、それに私―――」


一瞬、千春がこちらを見る。


「陽彩君の真っ直ぐで優しいところ……結構好きだから。」


言ってから視線を元に戻したのだが、


「そりゃあ、分かりみが深いな。」


僕は頷きながら景品を見つめる。


当然、その視線に込められた意味など知る由もなかった。


チャリンッ


硬貨が機械の中に落ちる音がする。


やがて、矢印の描かれたボタンが点滅し始めた。


「それじゃあ、行きます。」


ピロリロ、ピロリロ。


アーム部分から、腑抜けた音がする。


それと同時に横方向へと進んでいき、目星のキャラぬいの元へ向かう。


「よし、後は縦方向だけ。」


ボタンの上の指先に力が入る。


「お願い、上手くいって……。」


ゆっくりと下降するアーム。


スカッ


しかしその先端は、惜しくも目標物の一歩前を掠めただけだった。


「……。」


何も掴んでいないまま、僕らの手前まで戻って来たアーム。


「まぁ、最初の一回目は仕方ないよね。」


「正直、あと少し前にズラしてたら、多分取れてたと思うから自信持って。」


「……うん。」


続く二回目。


滑り出しは順調だったものの、アームはキャラぬいを掠めただけだった。


「惜しい、あとちょっと。」


「大丈夫、私はまだいける。」


小ぶりな唇をキュッと結び、三回目、四回目へと挑んでいく。


しかし結果は惨敗だった。


「どうしよう。もう100円玉、全部使い切っちゃった……。」


桃色の可愛らしい財布の中を見て彼女がため息をつく。


「やっぱり諦めるしか―――」


「大丈夫だよ。」


100円を投下した。


アームが再始動する。


「僕がまだ残ってる。」


「……頼りになるね。」


《さてと、今度はこっちのターンだ。》


「僕がアーム動かすから、タイミング見て合図して。」


「協力プレイってことね……。うん、分かった。」


それを皮切りにボタンを押す。


二人の視線を乗せて、アームがゆっくりと動き出す。


今度こそ。


そんな願いを込めながら、僕らは画面を見守った。

最後まで読んでいただきありがとうございました!


今回は呼び方の変化やクレーンゲームなど、二人の距離感を中心に描いてみました。


仲は良い。

けれど、まだ恋人ではない。


そんな微妙な距離感だからこその照れや戸惑いを感じていただけたなら嬉しいです。


面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります!


今後ともよろしくお願いいたします。

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