25話 これからもあなたの傍に
コラボカフェを満喫した優斗と千春。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、
気付けば会計の時間になっていた。
けれど、
二人の休日はまだ終わらない。
何気ないやり取りの中で、
少しずつ近付いていく二人の距離。
そんなほんの少し甘いお話です。
「お会計2580円になります。お支払いは現金、電子マネー、どちらになさいますか?」
「あ、ちょっと待ってください。」
財布を開けて中身を覗く。
1000円札が数枚。
《まぁ、細かいのは無いけれど仕方ないか。》
「現き―――」
「電子マネーでお願いします。」
僕が言い終えるよりも先に千春さんが言葉を発した。
放心する僕を置いて、電子決済は進んでいく。
―――ピッ
機械的な音声が鳴った後、無事清算は終了した。
「行きましょう、優斗さん。」
「え? あぁ、うん……。」
「ご利用ありがとうございましたー。」
女性店員さんが深々と頭を下げる中、僕らは店を後にする。
情けなくも右手には、使わなかった財布だけが残っていた。
***
「千春さん。これ、さっきのご飯代。」
そう言って、1000円札を二枚差し出した。
「そんな……大丈夫ですよ? もとより、コーヒー代のついででしたから。」
受け取らない彼女に対して、少し考える素振りを見せた僕。
「ならこれはオムライス代。それでどう?」
思いついたような表情で言いながら、1枚の1000円札を差し出した。
そこで彼女もとうとう折れたのか、
「ふふっ。相変わらず律儀な方ですね、優斗さんは。」
すらりとした綺麗な指で受け取った。
「日頃のお礼ってことで、私が払っても全然良かったんですよ?」
「だったら尚更コーヒー代でチャラだよ。」
ズボッと、バッグの中に財布を押し込んだ。
「むしろこの時間だけでも、お釣りが出るくらいだし。」
千春さんの肩がぴくりと揺れた。
「……そう、でしょうか?」
「あぁ、そうだよ。」
反射的に答える。
「千春さんと過ごせるだけで、お礼は十分だよ。」
「へ……?」
「だって一緒にいて楽しいし。他の人じゃ、こうまでならないんだ。」
気付けば、言葉は口をついて出ていた。
「だからこれからも、こうして傍に居てほしい。」
言った途端、彼女の視線が泳いだ。
耳までみるみる赤くなっていく。
そして、
「……優斗さんって、やっぱりずるいです。」
何かを呟いた気がした。
「え? 今なんて?」
「な、何でもありませんっ。」
ぷいっと、顔を背けた千春さん。
《どうしよう、機嫌を損ねるようなことでも言ったか?》
うっすらと汗が滲む。
「……あの~、千春さん?」
「……。」
沈黙が辛い。
気まずさに耐えかねた僕が視線をさまよわせていると、見慣れた電光掲示板が目に留まった。
「ねぇ、千春さん。この後時間ある?」
まだ頬を赤くしたままの彼女に、すかさず駅前のゲームセンターを指さした。
「良かったら、今から行かない?」
途端に目を輝かせた千春さん。
「行きますっ。」
返事は驚くほど早かった。
「なら行こっか。」
「はいっ。」
どこか嬉しそうな声に、思わず笑みが零れる。
僕たちは並んで歩き出した。
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