24話 意識しない方がおかしい
こんばんは、浜焼き三太郎です。
デート回、続きの更新になります。
今回はパンケーキを食べながらの一幕。
本人たちは必死なのですが、周りから見たらかなり甘々な空間になっているかもしれません。
少しでも二人の初々しさを楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは本編をどうぞ。
「んむっ?!」
突き出されたパンケーキから逃れられず、気づけば口の中に放り込まれていた。
口いっぱいにフルーツやソースの甘さが広がる。
「美味しいですか?」
気恥ずかしくて彼女と目も合わせられないまま、僕はコクリと頷いた。
「ふふっ。それはよかったです」
こっちの事情なんて知らぬ存ぜぬ。
小さな子供を見るような顔で笑っていた。
「じゃあ、私も―――」
言うや否や、新しいパンケーキにフォークの
先を沈めた彼女。
「え、ちょっ……」
そのまま幸せそうに頬張った。
「う~ん、やっぱり美味しいですっ」
「……」
《一人で勝手にドギマギして、
僕は何をしたいんだか。》
千春さんの満足そうな表情を見て、
やれやれといった風に笑った。
やがて二口目に突入しようとした時、
その手がピタリと止まった。
「……あの、優斗さん」
「ん? どうかした?」
千春さんは居心地を悪そうにしながら、
挙動不審に辺りを見渡していた。
「さっきから色んな視線を感じるんですけど、
これって私の気のせいですかね?」
「あぁ、それは……」
本人に直接言っていいのか悩んで、
思わず言葉を濁した。
「それは?」
繰り返し問いかけてくる彼女に対して、
本格的に頭を悩ませた。
周囲は絶えずひそひそと話している。
きっと話の九割方、僕らのことだろう。
ニマニマとした表情がやけに辛かった。
「ねぇ見た?あの子。
おとなしそうな顔して、意外と大胆ね」
答えを言いあぐねていると、
近くにいたカップルの会話が耳に届いた。
「分かる。“あ~ん”なんてされたら、
彼氏さんドッキドキもんだよなぁ……」
おっと。
意外にも声が大きいぞ、お二方。
「……」
ほら。
こっちまで聞こえてきて、
千春さん黙っちゃったじゃないか。
とは言え、この状況ではナイスアシストである。
「……千春さん?」
窺うように尋ねると、その顔は湯気が立ち込める
くらいの熱を帯びていた。
そうしてバッと勢いよくこちらに振り向いて―――
「ち、違うんです!
これはその……妹にいつもしてるような
感覚でやってしまっただけであって。
決してやましい気持ちや、
深い意味は無くてですね!!」
「だ、大丈夫だって。別に、気にしてないから……」
鬼気迫る表情で捲し立てられ、
引き気味になりながら答えた。
ふしゃ~っ! ふしゃ~っ!!
猫の威嚇みたいな音が、
彼女から聞こえてきそうだった。
「まぁ、これでも飲んで落ち着いて」
「あ、ありがとうございます……」
お冷を一気に飲み干した彼女は、大きく息を吐く。
「……大丈夫、私はこれくらい平気。
気にしない、気にしない」
手元のフォークを見つめながら小さく呟いた。
《なるほど、そういうことか。》
「あの、すみません」
千春さんがぎこちなく手を伸ばし始めた頃、
僕は近くの店員さんに声を掛けた。
「はいっ。どうなさいましたか?」
店員さんの声に続いて、彼女の手元を指さした。
「フォークの替えって、頂けますか?」
「えっ?」
「かしこまりました」
それからしばらくして、フォークが取り換えられた。
新品のそれは銀の燐光を放っており、
おまけに彼女の素顔まで映している。
「どうして?」
ためらいがちに聞かれた。
僕はそっぽを向いて、
「君が気にしなくても、僕が気にしちゃうんだよ」
そう答えた。
オムライスの上のスプーンを指で軽く回した。
「その……気恥ずかしいと言いますか」
恥ずかしそうに言うと、彼女は目を丸くして、
「そう、ですか……」
下を向いたまま、髪の先をくるりと指に巻き付けた。
頬にはまだ赤みが残っている。
けれど口元は、うっすらと綻んでいた。
お互いの顔も見れず、気まずい時間だけが続く。
―――カチャリ。
誰かが置いたカトラリーが、
初々しい僕らの姿を笑っていた。
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