21話 計 画 通 り っ ! !
テスト編、決着です。
前話まで勉強を頑張ってきた優斗ですが、その成果を報告するため千春を屋上へ呼び出します。
少しだけ変化した二人の距離感を楽しんでもらえたら嬉しいです。
``
別棟の四階。
西日差しかかる校舎を進み、一歩一歩階段を駆け上がっていった。
―――ペッタン、パッタン、ペッタン、パッタン。
上履きの踵が弾み、進むほどにそのリズムは速くなる。
やがて錆びかけの扉の前に差し掛かり、勢いよく押し開ける。
重々しい金属音が屋上へ響いた。
「お。いたいた。」
開けた視界の先に少女の姿があった。
「お疲れ様です。優斗さん。」
「お疲れ様、千春さん。」
逸る気持ちを抑えつつも、扉を閉めて彼女に向き直る。
「わざわざ、呼び出してごめん。どうしても伝えたかったことがあったから……。」
「はいっ。聞かせてもらえますか?」
ここだけ聞くと、前の告白シーンによく似ていた。
相も変わらずの聖女様フェイス。
だけどその時と違うのは、僕に対する千春さんの瞳。
張り詰めたものでもない。
表向きでもない。
本音が見え隠れしているような、そんな自然な眼差しだった。
「あのですね実は……」
震えた手でブレザーのポケットに手を伸ばした。
それを彼女はじっと見て、その先を待つように黙っている。
―――クシャッ
「今回のテスト―――じゃんっ!!」
横長の紙切れを勢いよく広げ、千春さんに見せた。
「全教科赤点無し……デスッ!!」
「おぉ~~~~! やりましたね、優斗さんっ!!」
「あぁ!! しかも見てこれ!!」
とある一部分を指差す。
「千春さんに教えてもらってた数学、なんと点数“95点”!!
どう? ヤバくない? すごくない? 上出来じゃない?!」
「はいっ! いわゆる、“そこに痺れる憧れるゥ”ってやつですよ!!」
「だよね!!」
彼女が僕をはやし、褒めちぎる。
そうすることで僕の自尊心は、最高にハイってやつだった。
「って、そうじゃなかった。」
息を整える。
気を取り直してもう一度。
「ありがとう……千春さん。」
この言葉。
伝えるのは、これで何回目になるのだろうか?
それでも、あと何百回言ったって足りない気がした。
千春さんがしてくれた些細なことが、僕にとっては大きな意味を持っていたのだから。
「おかげさまでコラボカフェ、一緒に行けるようになったよ。」
体中を駆け巡る情動が、大気をビリビリと揺るがした。
感謝も、興奮も、喜びも。
胸の内に押し詰めていたものが、一気に飛び出しそうになる。
「……。」
千春さんは肩を震わせて俯いていた。
表情も読み取れず感情も分からない。
だけど見ずとも、心のどこかに確信めいたものがあったのだった。
「ふふふ。」
顔を上げた瞬間、そこには小悪魔っぽい笑みがあった。
もう一度言おう。
千春さんは肩を震わせて俯いていた。
「計画通り……。」
そう。
喜びで悶えていただけなのだった。
「優斗さん。」
スマホをタップして、画像を見せてきた。
「私、このパンケーキ絶対食べますっ。」
「僕はこっちのオムライス。ふわとろ具合が半端ないって。」
人差し指で宙に円を描いた。
「ちなみにコーヒーは?」
「もちろんセットで。」
「そう来なくっちゃ―――っ?! で、ですね!!」
くだけた千春さんの話し方に、違和感どころか親近感を感じて言葉を見失う。
彼女の素に触れられた、そんな気がしたのだが……。
気づいてか、すぐさま元の語調に戻されてしまった。
……少し残念。
「日にち、どうしましょうか?」
「今週末行くのどう?」
「良いですね! では集合場所はここで―――」
段取りは組まれ、二度目のお出かけが着々と決まっていく。
会話の中で、僕の口元が優しく横に結ばれていくのが分かった。
相手が同担だから?
それとも聖女で美少女だから?
そんな理由で説明がつかないほど、今僕は彼女との話に夢中になっている。
「優斗さんっ―――」
心躍る時間は、下校時のチャイムが鳴るまで続いた。
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