19話 真っ先に君へ
いつも読んでいただきありがとうございます!
今回は勉強会イベントの後日談です。
テストまで残り一週間となった優斗たちですが、少しずつ成果も見え始めてきたようです。
短めのエピソードですが、二人の距離感を楽しんでいただければ幸いです。
それでは本編をどうぞ!
「あれ?千春さん?」
「えっ?優斗さん?」
自動販売機の目の前に見慣れた少女が一人。
屈みながら、右手に午〇の紅茶を手に取っている。
それから、周囲に人が居ないことを確認して、
「お疲れ様。そっちも残っていたんだね。」
「はいっ。クラスの人たちと勉強していたんです。」
「そうだったのか。」
踵を鳴らして彼女の隣に立つ。
それから500円を投入し、ボタンが緑に点灯し始めた。
「雅之さんとのテスト勉強、順調ですか?」
「それがさ~、聞いて欲しいことがあるんだよ。」
ウーロン茶のボタンを押すと、取り出し口から音がした。
「先週、千春さんが勉強教えてくれたじゃん?」
「えぇ、そうですが……。」
続けざまに天然水のボタンを押す。
―――ガコッ
「そのおかげか、すらすら問題解けるようになってさ。」
そのまま二本同時に手に取った。
「前は教えてもらう側だったのに、今じゃこっちが教える方なんだ。」
「えっ? すごいじゃないですか!!」
「へへっ、ありがと。」
僕は両手に一本ずつ飲み物を掲げる。
まるでス〇バのロゴだ。
「この調子でいけば、今回のテストはバッチリだと思う。」
「本当ですか? それなら良かったですっ。」
まるで自分の事のように喜ぶ千春さん。
それを見て嬉しさと気恥ずかしさが込み上げた僕は、誤魔化すように笑うことしか出来なかった。
「どれもこれも、千春さんのおかげだよ。」
「そんな……私なんて少し教えただけで、全部全部、優斗さんの頑張りですよ。」
「まったく、君ってやつは……。」
首をこてんっと傾げながら、彼女がふわりと微笑む。
頭の上に疑問符でも浮かべていそうな顔だった。
「クラスの勉強会、先週もあったんでしょ?」
「知って、いたんですね。」
「ううん。多分千春さん、誘われてたんだろうなって。」
彼女は手の中の午〇ティーに視線を落とす。
「……はい。誘われてました。」
その指先はラベルの文字を、行ったり来たりしていた。
《千春さんにとってクラスの交友関係は、何よりも大事だろうに……。》
「ありがとう、千春さん。」
彼女に向かって感謝を告げる。
「テストの結果、返ってきたら真っ先に君へ伝えに行くよ。」
《僕にできるのは、その恩に報いる事だけだ。》
千春さんを見据える。
「だから楽しみにしといてね。」
僕は言った。
「はい。……楽しみにしていますね。」
千春さんが笑う。
それだけで、見慣れた放課後の風景が鮮やかに色づいた。
「あっ、すみません。私、皆さんを待たせているんでした。」
「ちょっと待って、それ言ったら僕もだったわ。」
視線が交わる。
すると、どこからともなく笑みがこぼれた。
「じゃあね、千春さん。」
「はいっ、優斗さん。」
返却口からチャリンっと鳴った。
「おっと、まだ残ってたか。」
摘み上げた100円玉の向こうで、千春さんの後ろ姿が小さくなっていく。
テストまで残り一週間。
期待と不安を抱えて、僕たちは最後の追い込みへと入るのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります!
今後ともよろしくお願いいたします。




