18話 見えていないもの
テスト前のお話です。
勉強の成果が出始めた優斗でしたが、それを見ていた親友は何やら思うところがあるようで……?
千春さんとの一週間の勉強会は終了し、
いよいよテスト一週間前に差し掛かったころ。
「なぁ、優斗。」
―――カリカリカリ
「ここの問題……。」
―――カリカリカリカリ
「おい優斗ってば!」
―――カリ、
ピタリと手を止めた。
「あぁ悪い。どうした雅之?」
「どうしたもこうしたも無いぜ。一体どうしたんだよ?」
彼は心配そうにこちらを見ている。
「どうしたって?」
「なんつーか、やる気がいつもの倍以上なんだよ。今日のお前。」
言われてから、シャーペンをこめかみに当てて唸る。
「そうか?」
「そうだよ……。」
呆れたように肩を落とす雅之。
「いつもなら俺が勉強教えてるのに、今回はその逆だしな。」
「たまたま早めに、テスト範囲を網羅しただけだよ。」
「それがおかしいんだよな。」
タタタンッ、タタタンッ、タタタンッ。
雅之の指が机の上を跳ねる。
「いつもだったら一周もできずに山張る程度だったのに、ほんと何があったんだか?」
「何があった、か……。」
思い浮かぶのは、千春さんのあの時の顔。
気恥ずかしそうにしながらも、
それでも真っ直ぐ僕を見つめてくれた瞳。
彼女の優しさと決意。
そしてコラボカフェへの好奇心。
それが今の僕を机に向かわせていた。
―――なんて、雅之に正直に言うわけにもいかず。
「……漢を見せなきゃいけない時が、僕にも来たんだよ。」
「ほほぅ。」
興味ありげに目を細めた。
「やっぱ、らぶこ―――」
「違う。」
寸分たがわず返した。
「じゃあ例の子?」
心臓がビクッと跳ねた。
けどここで動揺しては色々とまずい。
だからここは、あえてクールに―――
「……チ、チガイマス。」
「分かりやすいな~、図星かよ。」
《バレてる?!》
驚きが顔に出てしまいそうだ。
何とか、顔を逸らしてその場をやり過ごそうとする。
「優斗ってさ、思ってる以上に顔に出やすいんだぜ。」
「な、なんのことだか?」
「はいはい、今はそういう事にしておくよ。」
肩をポンポンと叩かれて、
穏やかな目で見つめる雅之。
なんだろう、
すごくいたたまれない。
「いつでも話、聞くからな。」
「……当分その予定は無いっつーの。」
「はははっ、そうだったか~。」
曇り一つない笑顔で笑う雅之。
でもその時。
ほんの一瞬だけ、
雅之の表情が陰ったように見えた。
「そ、そうだ、喉乾かない? 僕なんか買ってくるよっ。」
「おぉ、悪いなぁ。じゃあ俺はウーロン茶。」
財布を片手に立ち上がる。
「んじゃあ、ちょっと行ってくる―――!」
生ぬるい視線から逃れるように、
そそくさとその場を後にする。
過ぎていく景色の中で、
窓に映る僕を見た。
夕日に照らされた窓に、
頬から耳まで赤く染まった自分が映る。
―――僕って、
そんなに顔に出やすいのだろうか。
少しだけ不安になった。
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