12話 二人で買い物
皆さま、いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は映画特典でもらったビジュアルボードを保護するため、主人公と千春がアニメイトへ向かうお話です。
同じ作品を推すオタク同士だからこその会話や、グッズ売り場でのテンションの上がり方などを書いてみました。また、前回までよりも二人の距離が少し近づいたような空気感を意識しております。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
「保護用品、保護用品っと。」
かごを持って、青を基調とした店内を回る。
「小鳥遊さん、これなんてどうですか?」
彼女が手にしていたのは、
半透明の四角い包みだった。
「スリーブ?それだけだと心もとない気が―――」
「いいえ、まだですよっ。」
千春さんは隣の棚から、やや無機質で、
ガッチリとしたケースを取り出した。
「硬質ケース、だと?……っ、まさか?!」
パチリ。
スリーブと硬質ケースが重なる。
「なるほど、二重梱包とは……。」
「内と外との二段構え。
大抵の衝撃では、傷すらつきませんよ。」
腰に手を当てて得意げに笑う。
「考えたね、千春さん。
流石は僕が見込んだオタクだ。」
「まだまだ小鳥遊さんには劣りますけどね。」
顔を見合わせ、微笑み合った。
「そうだ。」
「さっき探してる途中に、
ヤバいの見つけたんだけど……。」
「えっ?どこですか?」
「ほらこっち。」
人ごみをかき分け、目的の場所へ。
「これって……。」
「あぁ。」
「 “はし恋” 映画化記念、特設コーナーだよ。」
「すごい!」
「前来たときはこんなの無かったのに……。」
目を爛々と輝かせながら、口元は緩みっぱなしだ。
「小鳥遊さん見てください! 」
「“百合香たん” のアクスタに缶バッジ、
あとポストカードに、 “はし恋” の原作まで!!」
彼女の視線は、
グッズとグッズの間を渡り歩いていた。
「どこもかしこも “はし恋” だらけの夢の景色。
あぁ、感動してまた涙が……。」
「3分間待ってくれ。今ティッシュ切らして―――」
「あ、お構いなく。いつも箱で持ち歩いてるので。」
《そこ、ポケットティッシュじゃないんだ……。》
急に冷静になった千春さんに、
面食らってしまった。
落ち着いたのを見計らってから口を開く。
「それでどう?欲しいもの何か見つかった?」
「う~ん……。」
「しいて言うとしたら、
こちらのアクスタですかね。」
そう言いつつ、
視線は隣の缶バッジを行ったり来たりしていた。
「こっちの缶バッジの百合香たんも
素敵ですけど……。」
「二つはちょっと、お財布事情があれでして―――」
しどろもどろになりつつ、
その目は未練を断ち切れずにいた。
「……だからごめんね “百合香たん” 。
あとで必ず迎えに来るからっ。」
「……」
小さく缶バッジにまで謝る彼女。
その様子に苦笑しながら、隣の棚に手を伸ばした。
「ちなみに、このぬいぐるみは?」
そう言って掌に、
“百合香たん編みぐるみ” をちょこんと乗せる。
「あ、その子は大丈夫です。もう持ってますから。」
千春さんの言葉に、あの日の光景が頭をよぎった。
「屋上で話しかけてたのって―――」
「それはもう忘れてください!!」
「あ、はい!」
即答だった。
有無を言わさない圧に、反射的に背筋は伸びた。
「すぅ、はぁ~……。」
千春さんは何度か深呼吸を繰り返した。
「……それで小鳥遊さんは、
どれにするとか決めてるんですか?」
落ち着いた様子で聞いてきた。
「僕はポストカードにでもしようかな。
ビジュボと一緒で部屋に飾ろうかと。」
「 “百合香たん” 達に囲まれて寝れば、
安眠効果の期待大ですね。」
「だなっ。」
二人で顔を見合わせた。
「とりあえず速攻で選んでくるから、
千春さんは先に会計してていいよ。」
「それでは、出たところで待ってますね。」
「了解、またあとで。」
てててっとレジへ駆けていった。
「……さてと。」
彼女が見えなくなるのを確認する。
それから目星の付けていたポスカを手に取り、
続けて隣の商品へ手を伸ばした。
フックから抜き取ると、後ろの商品が前へ滑り、
カチャリと小さな音を立てる。
「……ついでだし、これも買っておこう。」
新品特有の銀光が、手の中できらりと光る。
そのままレジに向かった。
「お礼は大事だしな。」
誰に聞こえるでもなくそう呟いて、
順番が来るのを待つのだった。
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