11話 映画の余韻
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は映画デート回の後編です。
ついに公開された劇場版。その感想を語り合う二人ですが、同じ作品を愛する者同士だからこそ分かり合えるものがあるようで……。
そして開封される来場者特典。その中身はまさかの……?
趣味の話で盛り上がり、少しずつ距離を縮めていく二人の時間をお楽しみいただければ幸いです。
「映画、どうだった?」
「う~~~~ん?」
肘をテーブルにつき、両手の指先を合わせる。
「正直な感想、言ってもいいですか?」
小さく頷いた。
ふぅ、と息を吐く。
しばし考え込んだ末に、
「―――控えめに言って最高でした。」
晴れやかな表情でそう言った。
「だよねっ!!」
首を何度も上下に振る。
「特にあの告白のシーン……。」
言いかけつつ頭を抑えた。
「アニメ版の良さを最大限に引き立たせつつ、映画特有の臨場感や緊迫感がこれでもかと活かされていて、まさに鳥肌ものでした。」
「劇場版用にリライトされた神作画が、それにことさら拍車をかけてたよね。
もうね、涙止まらなかったもん。」
言いながら目尻にハンカチを当てる。
「横見たらすごい量のティッシュでビックリしましたよ。結構涙もろいんですね。」
「おっと、僕よりも泣いてた人が何か言ってるぞ。」
「ふふっ、バレてましたか。」
机の上のフラペチーノに口をつけた。
ズズッと音が鳴る。
「隣に小鳥遊さんいるのも忘れて、つい熱中し過ぎちゃいました。
私の悪い癖ですね。」
「いいや、それ聞いてむしろ安心したよ。」
買っておいたラテを一口含む。
「僕といる時くらい、自分の好きに正直になって欲しかったから。
こっちとしては願ったり叶ったりだよ。」
エスプレッソのコクとミルクの甘みが、口いっぱいに広がった。
《初めての店の空気にびびって、とりあえず適当なもの頼んだけど、アタリで良かった~。》
「……改めて、今日はありがとうございます。」
はにかんで彼女は言った。
「こちらこそ、誰かと映画を観るなんて新鮮だったよ。
案外悪くないものなんだね。」
水滴のついたカップを指でなぞる。
「よかったら今度……また一緒に行きませんか?」
照れくさそうに千春さんは言った。
「奇遇だね。僕もそれ、今言おうと思ってたとこだったよ。」
ぱあっと表情が明るくなった。
「約束ですからねっ。」
小指を突き出された。
「オタクに二言は無い。」
添わせるように、指を重ねた。
「ところで、特典のことだけど。」
カバンの中から、銀色の小包を取り出した。
「このパッケージの中、何が入ってると思う?」
人差し指で軽く二、三度弾く。
板のような感触だった。
「大きさ的に、下敷きとかポストカードあたりかと……。」
彼女も取り出し机に並べた。
「……どうします?」
訴えかけるように僕を見上げた。
「そうだなぁ。」
ピリッと、袋の閉じ口を剥がす。
「……せーので開けよう。」
「了解です。」
いよいよ、袋のそれに手を掛けた。
そして、
「「せーのっ。」」
―――カサッ。
「こ、これは―――ビジュアルボード、だと?!」
イラストの描かれた、色紙のようなボードだった。
「しかも見てください小鳥遊さん、このイラストを!」
興奮気味に指を差す。
「“三毛猫ヨシサブロウ”もとい、原作者本人の書き下ろしですよ!!」
「冗談じゃないよね? ほんとに、こんな事ってありえるのか?」
半信半疑で彼女に尋ねる。
「脳が焼き切れるまで、原作を読んだ私だから分かります!
これは紛れもなく本物です!!」
「ふぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
……とはいえ店内。
実際に漏れ出たのは、蚊の鳴くような声だった。
ピタッと動きを止める。
次の瞬間には、元あったパッケージの中に仕舞い込む。
「……家に帰って家宝にしなくちゃ。」
「私もそうします。」
「そうか。」
カバンの中へ、できるだけ厳重に保管した。
「ちなみにこの後時間は?」
「もちろんあります。」
「保護用品、買いに行くって言ったら?」
「どこまでだってお供します。」
「行き先がア〇メイトでも?」
「どんとこいです!!」
「そう来なくっちゃなぁ~。」
飲みかけのフラペチーノを流し込み、僕らは弾けるように席を立った。
「じゃあ行こうか。」
「オタクの聖地。」
「「ア〇メイトへ!!」」
自動扉が二人に向かって開け放たれた。
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