第86話 転 知恵
神卓会議が終わった数日後、アルフィナとナハシュリエルの耳にとある噂が入ってくる。
「慈愛の女神とその天使が人間界へ降りたらしい」
最初こそ信じなかった。だがミリシア様ならやりそうだし、過保護なレベリオなら付いていくだろうと思う。
その時はそれほど深刻には考えていなかった。まさかこんなことになるとは思わなかったから……。
「では、慈愛の女神・ミリシアに反逆罪を言い渡す。よって現在、慈愛の女神が居る第二世界に処刑人を送り込み死刑を執行する!」
「異議がある者は?」
ヴェリタス様がガベルを叩く。
……どうしてこうなったのでしょうか?
唐突に神卓会議が開かれた。
審議内容は慈愛の女神・ミリシア様が「慈愛」を与えるという名目で人間界に降り立ち人間達に「知恵」を与えたという余りにも無理がある内容。
訴えを起こしたのは森の神・アルボル様。本当に何故だか分からない。前回の議題を解いたのもミリシア様だと言うのに……。
アルフィナ様やルヴィア様は当然周りの神達も同じ様に思っていると思っていた。かく言う私もそう思っていた。
「異議がある者は?」
手を挙げたのはアルフィナ様、ルヴィア様、そして転生の神・ネオリス様の三人のみ。
……他の神達は何もおかしいと思っていないのか?
周りの神達を見ると顔を伏せていたり、少しニヤついていたり……、明らかにおかしい。
「おかしいじゃない!」
ルヴィア様が声を上げる。
「愛と情熱の女神・ルヴィア、名指しされてから声を上げよ。ここは神卓だぞ。」
ヴェリタス様の静止を無視してルヴィア様は席を立ち、声をさらに荒げる。
「ミリシアがそんな事するわけないじゃない!しかも死刑って何よ!今までの反逆者達だって死刑じゃなくて追放だったじゃない!」
ヴェリタス様は思い付いた様に言う。
「ん?そういえば愛と情熱の女神は慈愛の女神と仲が良かったな……。もしや、共犯か!」
「何言ってんのよ?」
「天使達よ、取り押さえろ。」
後ろに控えていた天使達がぞろぞろと出てきてルヴィア様を取り押さえる。
「ちょ、何すんのよ!」
「牢にでも入れておけ。」
ルヴィア様が連れていかれる様子を我々は黙って見ているしかない。
アルフィナ様やネオリス様も恐らく気付いているのだろう。
この状況は誰かが意図して作っている。今ルヴィア様を助けようとしても牢に入れられるだけだろう。
「異論がないのであればこれにて解散!皆ご苦労であった!」
そこから私とアルフィナ様は他の神達に聞き回り、この状況を仕組んだ神を見つけた。




