第131話 悪足掻き
「貫突!」
やはり、こやつの突きはあまりにも捻りがない。直線すぎる。それ故にあれだけの威力を出せるのかもしれんが……。
身を翻して突きを避け、そのままの勢いで奴の首を……
奴の首を……噛み千切る、が?
「ガハッ!」
己の身体にあの剣が突き刺さっているのが、確認せずとも理解できた。
だが何故?しっかりと避けたはず……剣の軌道も一直線だったはず……。
「言っただろう?突きに生涯を懸けている、と。」
「グッ、…ハッ……オ、ノレ………」
息が出来ん。喉を刺されたか?
完全に相手の実力を見くびっていた。連と同格という時点でもっと警戒すべきだった……いや、警戒していたとしても勝てなかっただろう。
「私達を舐めるな。腐っても天使……下界の紛い物如きに負ける程衰えていない。」
もう声を発する事さえ難しい。
……せめて、致命傷の一つは与えなければ、皆に顔向け出来ん!
突き刺さっている剣を諸ともせず、エクエスの方へ進んで行く。剣はさらに奥へと突き刺さっていくが、止まらない。
「……貴様、死ぬぞ?悪足掻きは止めろ。」
エクエスは淡々とそう言っているが、焦っているのが分かる。
「ド、ウセ…死ヌ、ノダ……貴様ヲ、、、」
口から血が溢れ出る。
これ以上は無理か……。
葛葉、大龍、妖の皆…そして連。お主らのお陰で暇も無く、愉しい日々であった。
悔いはもう……
もう………ハッ!悔いしか無いわ!
顎をゆっくりと開く、最後の力で開く。口元にはエクエスの頭がある。
今らこの顎を閉じればエクエスの頭が我の口に入るだろう。
だが、我は…いわば虫の息。今までならば噛み砕くことも容易であったが、今は当然無理だろう。
それを分かっているのか、エクエスは何も言わずその場から動く事もない。
両者動かず、数分が過ぎた。
「ガハッ」
牙王が再び血を吐いた際に、エクエスは一言。
「貫突」
牙王は一欠片も残らず消えた。
「!?……なるほど。」
牙王消失と同時にエクエスのレイピアも折れてしまっていた。
「私が技を放つと同時に折れるよう筋肉でレイピアを……お見事。剣士から剣を奪うとは、これではもう戦えんな。」
エクエスは乾いたため息を吐き、懐から角笛を取り出し、一吹き。
ブォォォォォン
「全員!撤退だ!」
その笛の音と共に戦闘をしていた守護団兵士は空へと飛んで行く。
「後は君次第だ。レベリオ……次会う時は、……。」
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ケルビムがふと空を見ると空へと帰る天界守護団が目に入る。
「あれ?エクエスちゃん達撤退してない?」
指揮官であるエリュシエルにケルビムが報告する。
「そのようですね。ケルビム、何か話は聞いていますか?」
「いや、致命的な損害が出た場合は撤退をする、とは言ってたけど……」




