第121話 安全運転
「妖ってすごいんだな……」
口から漏れた俺の言葉に夜蔵がにこりと微笑む。
「ええ、それなりに皆、妖という自分達の種族に誇りを持っていますよ。少なくともこの世界では我々は強い部類ですから。自信家が多いんですよ。」
「そうか…それもそうか」
そもそも俺や他の天使達は神に直接創られた存在。言い方が悪いが、そこらの世界の奴らとは格が違う。
格が違う……はずなんだが、正直この世界には下手したら智天使と同じ程の強さを持っている奴がうじゃうじゃいる。
さらに、本家程ではないがそれなりに強い"神"もいるときた。他の世界がどんな感じなのかはあまり知らないが、恐らくこの世界はずば抜けて強いと思う。
「まぁ、なるべく急いで帰った方がいいな」
「それでは主殿、そこの二人の肩にお掴まり下さい。これより国へ帰還致します。」
「お、おう」
言われるがまま付き添いの二人に肩を預ける。
「主殿は負傷されておられるので、本来の速さを発揮できないでしょう。ですから我々にお任せを!」
「えっと……安全運転でお願い……」
断る事も出来なさそうだし、現状俺がいつもより遅いのは否定できない。ただ心配なのは、大龍の時の様になることだが……。
バキッ
付き添い二人が羽ばたいた衝撃で辺りの木々がなぎ倒される。背中から生えているコウモリの様な翼からは想像できない風圧。
というか羽ばたいた衝撃で木が折れるって風圧とかの次元じゃない気が……
ビュンッ
そこからは本当に一瞬で地獄の様だった。顔に当たる風はもはや岩の様で、目を開けるのはおろか呼吸すら出来ず、国の隣にあるあの森へ下ろされた。
「ぜぇ、ぜぇ、お、お前ら、は、速すぎだろ…ぜぇ、死ぬ、かと、思ったわ」
「申し訳ありません、主殿に言われた通り急いだのですが、まさかこんな事になるとは……」
なんか全身の傷穴が開いた気がする。まぁ、それは一旦置いておいて、
「何で森で下ろしたんだ?」
夜蔵は何かに気がついた様に人差し指を唇に当て、小声で言う。
「あちらを、」
指差された国の方を見ると国の上を飛び回る天使が見えた。
「ま、まさかもう制圧されて……」
「いえ、恐らくこの森に皆潜伏しているはずです。元森の者である我々妖からしたら人間の産物である国は少し分が悪いですからね。」




