第119話 赤煙
「白虎、雨を頼む」
晴天だった空は次第に曇っていき、雨が振り出す。そこにあれを混ぜる。
「酸液」
ここら一帯全部溶かす。
「さ、酸性雨!?」
少し緑を帯びた雨が辺りに降り注ぐ。
「ぐ、ぐぎゃぁっ」
聞くに堪えないケルビムの叫び声が聞こえ、少しだけ目を背ける。友が踠き苦しむ姿を見ていられる程、俺は非情になれない。
ケルビムとて馬鹿ではない。恐らくあれら以外にもスペアのケルビムがどこかに潜んでいるだろう。
5分程経つと雨はやみ、殆どのケルビムがぐちゃぐちゃになり、巨大化したケルビムのみがかろうじて形を保っている。
「ゔっ…ぐ、そっが……」
「ケルビム……」
ケルビムの元に降り立ち、まじまじと見つめる。殆ど何か分からなくなってしまっている友を。
「デ、ベリ…オ………」
「……何だ?」
「ふっ、」
「!?」
ケルビムが笑うと、ケルビムの体が唐突に膨張して破裂する。
「ゲホッ、……これは?」
破裂した場所から赤い煙が空へと上がっている。
赤い煙……ま、まさか!
今すぐ戻らないと間に合わなくなる。あの煙は俺達天使が開戦する際に上げる合図のようなもの。恐らくケルビムがここに俺を転移させたのは俺が居ない状態の妖の国を襲うため。
……ん?何故?何故国を襲う必要がある?天使や神達の目的は反逆者の抹消なはず。なぜ国まで襲う必要がある?妖が神側の脅威になると判断されたのか?
考えた所でわからないし、今は考えるよりも先にあいつらの所へ急がないと!本当に間に合わなくなる。
「はぁ、……どっちが国だ?」
時間稼ぎのためだと思うが、国がどこにあるのか分からないレベルで遠くまで転移させられたようだ。
音探査にも反応はない。神眼で周りを見渡して見るが、特に何も映らない。心伝を試してみるか……。
(……おーい、誰か聞こえるか?)
だめか……
(……あ、あー、聞こえております。飛倉の長・夜蔵です。主殿で間違い無いですか?)
良かった!繋がった。
(ああ、俺だ。今そっちで何か変わった事とか敵襲とかはないか?)
(変わったこと…ですか。特に無いですが、強いて言うなら背中に翼を生やした者達が数百程空からこちらへ向かってきていることですかね……?)
……変わったことあるやんか!何が特に無いですがだよ!めっちゃ天使側の軍隊来ちゃってるじゃんか!
(俺は知っての通りどこかに転移させられていて、国の場所も今のところ確認できていない。だから、俺が帰って来るまでどうにか持ちこたえてくれ!)
(了解しました。皆にそう伝えておきます。)
ここからどうするか……、
(よろしければなのですが主殿。私が主殿をお迎えに上がりましょうか?)




