67 ちょうちょの受難
「やってらんねぇ」
ちょうちょは、やさぐれていた。
(見てみろ、俺の可愛らしさを!)
ちょうちょに反して、スーはごきげんだ。
「お前、それでいいのかよ……」
ちょうちょは、うんざりとした目をスーに向ける。
今のスーは、布袋に入っている。
まんまの袋だ。すっぽりと袋の中にスーが入り、入り口が少し絞られて、脱げにくくなっている。
顔というか、全体の1/3が袋から出た状態だ。
袋詰めのスライムが出来上がっている。
まあ袋とはいえ、少々手は込んでいる。
袋の色は白だが、全体に花が刺繍されているし、絞るための紐は共布で作られている。
ティナが前回言っていた、ティナ手作りの服だ。
ペットに服を着せる飼い主の気が知れない……。
ちょうちょは頭を振る。
自分も、しっかりティナから服を着せられているからだ。
ちょうちょの服は全体が黄色の貫頭衣で、胸のフリルが切り替えになっている。丁寧に作られており、ティナの思いが伝わるようだ。
が、こんなファンシーな服をちょうちょは着たくない。
可愛い系のちょうちょだが、自らを俺と言う、ワイルドを目指すオスなのだから。
厳密にいえば、魔素の塊の妖精に性別は無いが。
「ウフフフ、やっぱり似合うわ。はい、これも付けてね」
「ウワワワワッ」
ティナはちょうちょの頭に貫頭衣の共布で作ったリボンを付ける。
ちょうちょは嫌そうに頭を振るが、ティナに分かってはもらえない。
(いいなぁ、ご主人様、俺には? 俺には?)
「そんなツルツル頭に、リボンが付けられるかよっ」
ちょうちょはスーに八つ当たりをしてしまう。
こんな屈辱、耐えられない。
今すぐにでも頭のリボンをむしり取り、服も脱いでしまいたい。
そんなことをしたら、スーが煩いのは分かっているが、そんなこと知ったこっちゃない。
だが、それが出来ない理由がある。
その理由は……。
「さあ、クライブ様が待っているわ、そろそろ出ましょうか」
ティナに促される。
そうこれだ、クライブだ。
クライブのせいで、ちょうちょは、こんな屈辱な目に合わされているのだ。
クライブはカーバンクルを失った悲しみに沈んでいたが、目の前にカーバンクル並みに可愛らしいのがいるのに気が付いた。
スライムの頭上を陣取っている、ちょうちょの存在だ。
クライブは神獣の加護があるために、ちょうちょが見えている。
言葉は通じないが、見た目可愛く小さなちょうちょは、クライブのタイプど真ん中だ。
なんせ、神獣がいても逃げないのだから。
そして、ちょうちょは食いしん坊だった。
しょうがないのだ、レベルアップで取得した特性ステルスの副産物として “飢え” がある。
お腹が空いて、お腹が空いて、どうしようもなくなってしまった時、ティナから貰って食べたサンドイッチは王宮シェフが作った、最上級の逸品だった。
おかげでちょうちょは、王宮サンドイッチが食べたくてたまらない。
食堂で作って貰う食事も美味しい。でも、王宮サンドイッチを求めてしまうのだ。
クライブへサンドイッチをくれと頼みたいが、言葉が通じないのでグリファスに頼んだら、どういう話をしたのか、交換条件を出されてしまった。
サンドイッチを食べている間、クライブと一緒に過ごすというものだ。
嫌だ。
王族なんて、人族の階級だから妖精のちょうちょには関係無いし、いくらキラキラしている美形だとティナが言っているとはいえ、こちとら可愛い系とはいえ、美形が基本の妖精族だ。容姿どうこうはノーカンだ。
せめてお姫さんだったら……。やっぱり嫌だ。
それなのに、クライブに会うことになった時、ティナは王子様に会うのだからと、ちょうちょに服を着せることにしたのだ。
せっかく服を作っていたから、おめかしをさせたいらしい。
非常に迷惑な発想だ。
王宮サンドイッチを食べるためには、嫌でも着飾ることになってしまったのだ。
クライブがいるのは王宮の王子宮という所らしいが、ティナが恐縮して王宮には近寄らないので、わざわざクライブは学園にサンドイッチを届けてくれる。
そこで一緒にお茶をするという流れだ。
サンドイッチを手に入れさえすれば、こっちのもんだ! と、ステルスを使ってみた。
もの凄くお腹は空くが、サンドイッチはあるのだし、俺の勝ち! と思ったら、加護持ちのクライブにステルスは効かなかった。
もちろんティナとグリファスにも効かない。スーだけが、ちょうちょを探してキョロキョロしていた。
ステルス、役にたたねぇ。
「さあさあ、行くわよ」
(はーい)
ティナは立ち上がり、ティナといれば、いつでもご機嫌のスーも一緒に動き出す。
スーの頭上にいるちょうちょも必然的に行動を共にすることになる。
なんせクライブに会うのは、ちょうちょのためなのだから、ちょうちょがいなければ話にならない。
コンコンコン。
寮の部屋から出ようと、ティナが扉に手をかけた瞬間、誰かがドアベルを鳴らしたのだった。
※ ブックマーク登録が1,000件を超えました!
ありがとうございます。
とても嬉しいです。執筆の励みになります。
これからも頑張って投稿していきます。
まだの方は、ぜひ登録していただけたら嬉しいです。
よろしくお願いします。
※ ≪お知らせ≫
ホームページをやっております。https://tanakara.sakura.ne.jp/ よろしければ、遊びに来てください。
「最強スライムはペットであって~」の更新予定は、そちらの『お知らせ』に記載しています。
自作ホームページのため、エラーやバグは、お友達です。突っ込みは、ご容赦下さい。




