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最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。  作者: 棚から現ナマ


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62 ちょうちょのレベルアップ④



妖精の里に着いた。

久しぶりの妖精の里だから、キラキラさん達に会えるのを楽しみにしていたのに……いない。

あんなに大勢いたのに、今は二匹のキラキラさんだけだ。

どうしたのかしら?

ティナは辺りをキョロキョロと見回す。


「どうしたティナ」

「あの、キラキラさん達が少ないなと思って」

「ああ、ちょっと避暑に行っているだけだ」

「そうなんですか……」

避暑? まだ春先なのに。ティナは頭を捻るが、反論なんかできない。だって相手は王族(?)の方なのだから。


グリファスから妖精の里に行かないかと声をかけられ、ティナは二つ返事で承諾した。

なぜなら自分も里に行きたいと思っていたから。

里の皆に渡したい物があったのだ。そのために毎日チマチマと頑張ってきた。


「じゃあ、皆が戻って来たら、これを渡してくれますか?」

ティナは背中に背負っていた大きなリュックを降ろすと、中から様々な色の布を取り出した。


「気に入ってもらえるといいんだけど」

前回この里に泊った時、キラキラさん達には、とてもお世話になった。

果物も沢山持ってきてくれたし、柔らかい(わら)でベッドも作ってくれた。

だから、何かお礼がしたかった。


キラキラさん達は全員が貫頭衣(かんとうい)のような服を着ている。色合いも一色で地味だ。

寮母さんと街に買い物に行った時に、綺麗な端切れが売っていた。

支度金はティナのものだと言われたけど、実感はわかないし、貰っていいものか分からなかったけど、そのお金で沢山の端切れと裁縫道具を買い込んだ。


そこまでティナ自身、裁縫の腕は上手くないため、やっぱり作ったのは貫頭衣だったが、オシャレな紐を付けてみたり、刺繍を刺してみたり、共布でフリルをあしらってみたりと、工夫してみた。

いつかは渡せるだろうと、授業の合間をぬってチマチマと作っていたのだが、思ったよりも早く里に来ることができて嬉しい。


「いや、我らのことを思ってくれて、ありがたいのだが……」

「あぁ、そうじゃな、礼を言おう……」

族長と長老はティナから差し出された服を見て、複雑そうな顔をしている。


(おい、ジジイども、ご主人様が気を使ったっていうのに、何が気に入らないんだよ)

ティナと合流することが出来て、テンション高めのスーが浮かない顔の妖精達に文句を言っている。


「まさかティナがこんなことをしてくれていたなんて……」

ちょうちょがグリファスの手の上でポツリと言葉をこぼす。

ティナが裁縫をしているのは知っていた。

時には夜遅くまで作業をしていたが、まさか妖精達の服を作っていたなんて、思いもしなかった。


今のちょうちょはグルグル巻きだ。

グリファスにたのんで、紐でグルグル巻きにしてもらっている。

身動きすらできない。この状態だとティナの肩の上に乗っていることができないので、今はグリファスの手の上に乗せられている。

ちょっと屈辱だ。

スーが先に行って妖精達を避難させたとしても、族長と長老には会わないといけない。

もし族長達を見た瞬間に、自分が襲いかかるかもしれないからと、グリファスに頼んだ。


里に着いた時、ちょうちょの心臓は張り裂けそうになっていたけど、族長達を見ても、何の変化もなかった。

ちょうちょはホッと胸を撫で下ろしたが、もしもの時のために、そのままグルグル巻きになっている。


「これなんかどうかしら。似合うと思うけど」

ティナが赤い花柄が散りばめられた貫頭衣を族長に勧めている。共布で作られたフリルが両脇に付けられていて、愛らしさ満載だ。

族長は、妖精だから攻撃手段を持たないが、この里の中では一番の勇猛果敢な猛者だ。しかしティナからは、可愛らしいキラキラさんにしか見えていない。


「あ、いや、しかし……」

勧められている族長は、困ってしまっている。


「ティナ、ごめんな。俺達妖精は服を着ることは出来ないんだ」

ちょうちょは動きづらいまま、ティナに頭を下げる。


(え、そうなのか? でも服を着ているじゃないか)

ちょうちょの言葉が届いていないだろうご主人様に代わって、スーが問う。


「俺達は元々肉体を持たない。だから服に見えているのも、身体の一部で魔素(マナ)で出来ている。だから人族のように服を着替えることは出来ないんだ」

(そうなのか)

スーは納得したのだが、ティナには話が通じていない。

グリファスに通訳を頼もうか。スーはグリファスへと顔を向ける。


「ウフフフ、着てみてちょうだい。大きさはどうかしら」

楽しそうにティナは花柄の頭貫衣を族長へと被せる。

里の命の恩人であるティナに、強くは出られない族長は、されるがままだ。どうせ服を着せようとしても、弾かれて着ることなど出来ないのだから。


「え!?」

「やっぱり、凄く似合うわ!」

花柄の頭貫衣を着た族長が、言葉を失っている。


「まさか、魔素以外をまとうことができるなど、あり得ない……」

長老が驚きに固まっている。


「これはまた、不思議なことができるのだな」

グリファスは興味深げに族長とティナを見ている。


族長は服を着ることができたのだ。

ティナが着せたからなのか、ティナの手作りの服だからなのか、愛らしい族長が、より愛らしくなっている。


(ケッ、ご主人様のセンスがいいだけで、自分のことを可愛いなんて思い間違うなよ)

スーだけが自分以外の愛らしさを認めない。対抗意識バリバリだ。


「じやあ、こっちのキラキラさんは、これを着てみて」

ピンクの生地に、飾り紐があしらわれた、これまた可愛らしい服だ。


「いや、儂は、あっ」

弱弱しい抵抗は、ティナには通じていない。あっという間にピンクを着せられてしまった。飾り紐はちょうちょ結びにされた。

長老は、齢五百歳を超えているだろう里の重鎮なのだが……。


(ケッ、可愛い服が似合っているだなんて、思っていないだろうな。人型で服が着られるからって、勘違いするなよ)

スーは、だんだんとやさぐれていっている。

身体も斜めになって、黒々としたつぶらな瞳も吊り上がりぎみだ。


「スーさんとちょうちょさんの服も作っているのよ。寮に帰ったら着てみてね」

(ご主人様、大好きっ!)

「お、おう……」

ティナの言葉に、スーの機嫌は一気に上昇する。


だが喜色満面のスーに対して、ちょうちょは乗り気ではない。

キラキラ達に渡している服を見れば、ティナの趣味というかセンスが分かるからだ。

どんな服を着せられるか、嫌な予感しかない。


「じゃあ、そろそろちょうちょの拘束を解くとするか」

グリファスの言葉に、スーとちょうちょに緊張が走る。


このまま、ちょうちょに変化が無ければいいのだが。

そうスーは祈るように思うのだった。



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