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最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。  作者: 棚から現ナマ


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61 ちょうちょのレベルアップ③



レベルアップして、ステルスを取得したちょうちょは、妖精喰いになるのを恐れている。

妖精を喰おうなんて思っていないようだが、どうなるか分からない。喰ってしまえばお終いだ。だから妖精のいる場所には行ったら駄目だ。それなのにちょうちょは里に帰るという。

妖精喰いのことを知るために。


(ご主人様にどう言うつもりだよ)

「どう言うって……」

スーはちょうちょに問いただす。


妖精の里は学園から近い。数時間で行くことができる。

だが、簡単に日帰りできるとは思えない。

ちょうちょはスーに一緒に行ってくれと言う。ならばご主人様と離れるとこになってしまうではないか。


(よしっ、ご主人様も連れて行こう!)

「スーそれはっ」

(俺はご主人様と離れる気はないぞ)

「でも、ティナには……」

スーの申し出にちょうちょは困ってしまう。


ちょうちょは最悪、自分が妖精喰いになるようだったら、スーに食べてもらおうと思っている。

スーが妖精喰いを一飲みで食べてしまったのを見ていたから。

それでいいなと思ったのだ。スーに食べられるのなら、それでいいと。

だが、それをティナに見せるのは駄目だ。

ティナはちょうちょのことを自分のペットだと思っている。そしてちょうちょに愛情を(そそ)いでくれる。

そんなティナに自分が喰われる所を見せていいわけがない。

ティナがショックを受けるだろうし、悲しんでくれるだろう。

一番困るのは、ティナがスーのことを嫌ってしまうかもしれないということだ。

ちょうちょがスーに頼んでいるというのに。ちょうちょの我儘をスーに押し付けているのに。

あれほどご主人様のことを慕っているスーのことをティナが嫌ったら、ちょうちょは死ぬに死ねない。


「ティナを連れて行くのは駄目だ」

(ご主人様を一人残すなんてできねーぞ)

スーは引かない。


スーは考えている。どうにかちょうちょを救えないのかと。

ちょうちょが妖精喰いになるわけはないと思っているが、万が一、億が一、何かの強制力が働いて、ちょうちょが妖精を喰ってしまったら、スーは全力を持って、ちょうちょを助ける。

羽が無くなろうが蛇になろうが、妖精を一匹、二匹喰ったところで、ちょうちょはちょうちょだ。正気に戻るなら、それでいいじゃないか。


スーが恐れているのは、ちょうちょが自我を無くしてしまうことだ。

そんな時は、ちょうちょを捕まえて、なんとか正気に戻さなければならない。やり方なんて分からない。それでもやるしかない。


だからご主人様を連れて行く。

スーにはステルスを使う妖精喰いが見えない。気配すら感じられない。

妖精喰いになったちょうちょが、スーから逃げてしまうのが一番怖い。ちょうちょがいなくなってしまうのは嫌だ。

ちょうちょを捕まえるためには、ご主人様を頼るしかないのだ。


「お前が里に帰るなら、俺も一緒に行く。その時はご主人様と一緒だ」

キッバリとスーは言い切る。


ちょうちょは里に帰るという我儘を押し通し、スーはご主人様を連れて行くという我儘を強行する。

そして、いざ里へ帰ろうという時、どうやってご主人様を連れて行くのかという問題が発生した。

説明しようにも自分達の言葉はご主人様には通じない。

ご主人様を触手で抱え上げて連れて行く? メチャクチャ嫌がれそうだ。

何時間も嫌がるご主人様を抱え上げることなんて、スーには出来ない。メンタルが削れる。


ということで―――。

(ジジイ、頼む)

「それが他者に、ものを頼む態度か」

目の前のグリファスは文句を言いながらも、スーの依頼通り人の姿になってくれている。


スーはグリファスにご主人様への通訳を頼むことにした。

一応グリファスには相談ということで念話を飛ばして会うことにした。今までしたことはなかったが、やってみたら出来た。

相手が神獣だから、スーの念話(呼びかけ)を拾ってくれたのだろう。


ちょうちょのことを話すと、グリファスは驚いていた。

妖精喰いの存在は知っていたが、まさか妖精がレベルアップすることで、妖精喰いになるかもしれないなど知らなかった。

族長や長老が口をつぐんでいたのだろう。


そこまでレベルアップをする者の数が少ないとはいえ、変異種が発生するのを放置することはできない。

自分達で自分達の首を絞めるどころか、絶滅を(うなが)してしまう。

魔獣の頂点に立つ神獣として、なんとか手を貸そうとグリファスは思ってくれたようだ。


スーは隠しても無駄だと分かっているから、正直に打ち明けた。

もし、ちょうちょが正気を失ってしまったら、何とか説得する。監禁してでも、ボコッてでも、元に戻す。

ちょうちょがちょうちょに戻れるように、何でもする。

だから、ご主人様を連れて行って、ちょうちょを捕まえるのだと。


「まあ、あのちょうちょが妖精喰いになるとは思っていないが、ティナはいた方がいいだろう。お前達の精神安定剤だからな」

グリファスは少し考えた後に、了承してくれた。




グリファスはティナを簡単に妖精の里に行くことを同意させた。何と言ったのか分からないが、さすが歳の功というべきか。

ティナは久しぶりに妖精の里に行けると、逆に喜んでいる。

まあ、習熟組の勉強に出なくていいのが嬉しいのかもしれない。

そして、なぜかティナは大荷物だった。背中に大きなリュックを背負っている。


準備は整った。

スーだけが先に妖精の里へと向かった。

妖精の里にいる妖精達を危険に晒すわけにはいかないから、避難させるために。

それならば族長と長老だけを連れ出せばいいのかもしれないが、魔素が無い場所(里の外)に連れ出すこともできないし、もしかしたら里自体に秘密があるのかもしれない。あそこは安定した魔素(マナ)の溜まり場だから。


緊張して青い顔色のちょうちょと、ちょうちょを肩に乗せたティナを連れ、グリファスは妖精の里へと向かったのだった。


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