18 入学試験・一次試験①
『試験を開始します。説明をしますので、よく聞いて下さい。各列前方にゲートが設置されています。一人ずつ順番にゲートを通り抜けてください。制限時間は一人二分です。通ることができれば1次試験の合格となります。失格した人は、そのままお帰り下さい。もし再度チャレンジしたいという方は、列の最後尾に並び直してください』
魔道具から試験官の声が聞こえてくる。
少し列から身体をずらして前方を見ると、列ごとに大きな鏡のような物が置いてある。
鏡だと分かるのは、ティナは鏡を一度だけ見たことがあるから。
村長の奥さんが持っていた。
楕円形の形をした木の枠があって、真ん中に鏡がはめ込まれていた。
ゲートは奥さんの鏡とは比べ物にはならないほど大きい。人が立ったまま通ることができる大きさだ。高さは2メートルを超えていそうだ。
ただ枠の中に鏡ははめ込まれてはおらず枠だけしかない。簡単に通り抜けることができるだろう。
一人二分と言われたけど、通り抜けるだけなら、そんなに時間はかからない。
ティナの前には百人以上の人がいるが、思ったよりも早く順番が回ってくるかもしれない。
「よーし、頑張るぞっ。今年こそはゲートを通ってみせる」
おじさんが気合を入れている。
なぜゲートを通り抜けるのに、それほど意気込む必要があるのかティナは不思議だった。
“ゴンッ!” 「くっそー、もう一度だっ」
“ガンガンガンッ” 「ちくしょうっ!!」
「はい、そこまで、次の人!」
列が進んで行くと、前方の様子が見えてきた。
不思議なことが起きている。
皆がゲートを通ることができないのだ。何も無いはずなのに、見えない何かに阻止されているのか、それ以上進めないでいる。
枠の中を殴ったり蹴ったりしているが、まるで見えない膜があるかのように弾き返されている。見えないだけで透明な鏡があるのだろうか?
ゲートの脇には試験官がおり、二分経つと止めるようにと声をかけている。
「どうして? どうしてゲートを通ることが出来ないの? 何も無いのに」
「目には見えないが、ゲートには結界が張ってあるんだ。魔力が無い奴や弱い奴は阻まれて通ることができない」
頭をひねるティナにおじさんが説明してくれる。
「結界って?」
初めて聞く言葉だ。
村で生活していたティナには結界や魔力なんて聞いたこと無い。存在自体知らない。もちろんティナに魔力なんてものは無い。
「どうしよう、不合格になってしまう……」
「嬢ちゃんは初めてなんだろう。やってみないと分からないぜ。自分に魔力が有るのを知らない奴は多いからな。それに今年駄目でも来年には素質が顕現しているかもしれないから、またチャレンジすればいいだけだぜ」
おじさんは落ち込むティナを励ましてくれるが、来年では駄目なのだ。ここで就職できなければ、ティナは住む場所が無いのだから。
「合格。結界を張りなおすので、少し待ってください」
ゲートを見ていると、数人から数十人に一人はゲートを通り抜ける人がいる。
そういう人は、何をするわけでもなく、すんなりとゲートを通り抜けていく。それこそゲートの前で呪文を唱えていたり、気合を入れたりなんかしていない。ただ通り抜けるだけ。
そして合格者が出ると、試験官はゲートに何か施している。おじさん曰く、結界を張りなおしているのだそうだ。
「よーし、俺の番だ。今年こそはやるぞっ!!」
おじさんの番になり、おじさんは気合を入れてゲートへと向かって行く。
「ぐおおおっ。できるっ、俺はできるはずだぁぁっ」
おじさんはゲートを殴りつけ、渾身の力を込めて体当たりしている。
そして……。
「はい、次っ」
おじさんの二分は終わってしまった。
どうしよう、自分の番がきた。
ティナはゲートへと近づくと手を差し伸べてみる。案の定、目には見えないが何か膜のようなものがあった。
少し力を入れて押してみるがビクともしない。
駄目だ、やっぱり自分に魔力は無いんだ。
今度は両手で力一杯押してみる。
早くしないと二分なんて、あっという間だ。
焦る。
就職しないと、住む所が無いし、食事だって出来ない。
それに村に帰る手立ても無い。
涙が出てきた。
「あっ、スーさん!?」
今まで大人しく足元にしたスーがピョンと大きく跳ねると、ゲートへと飛び付く。
スーはゲートに挟まってしまったのだった。




