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天界からきた少女~王立魔法学園転入編~  作者: 鈴城伊織
第1話 舞い降りた天使
9/12

8 ピンチから始まる試験

王都の更に奥、大きな湖を越えると、グレース王立魔法学園はあった。


サラが乗っている馬車が4台は通れるであろう、広くて大きな橋を渡っていると、要塞のような作りの建物が視界いっぱいに入ってくる。


(…大きくて、…美しいわね)


青空の下に建つ、石造の学園は、学び舎というより城に近い作りをしていて、所々にガラスの彫刻や深い赤色の旗が、学園の威厳を表しているように飾られていた。


魔力が溢れる学園だと聞いていたから、少し身構えていたサラだったが、相変わらず身体に異変は表れず、清々しい気持ちで学園を見つめられた。


学園の門まで辿り着くと、カールの紹介があった為特に待たせれることもなく、順調に学園内へと案内される。


「まず、この学園では、家名を出すことをマナー違反としております。ですので、生徒や教師含め、全て名前で呼ぶことが許されているのです。」


(それは、とても嬉しい決まりね。)


侍女のベルダと別れ、学園内の試験会場に案内されたサラは、試験官の話を聞きながら、ホッと胸を撫でおろす。

ベルダは、これから主君が泊まるであろう、寮の方へと案内されていた為、サラは文字通り一人で学園内にいるのである。


「『サラ』とこの学園内では、名乗ってください。お家柄の力が働かない分、ここでは魔力と血筋が全ての基準となっております。」


(…ん?血筋?)


魔力は理解していたが、血筋というのは、どういう事だろう。

知らない言葉に混乱してたサラは、試験官が大きな紫色の水晶の横へ立った事に気付かなかった。


「それではこれより、サラさんの魔力試験を行います。サラさん、全ての魔法具を外して、その水晶に手を当ててください。」


(…え…!?)


「魔法具を外せ」と、サラには聞こえたような気がした。

いや、事実言ったのであろう。

予想外の出来事に、サラは立ち竦んでしまう。


「…魔法具を、外すのですか?」


否定してほしい気持ちのまま、笑顔をつくりながら聞き返すと、


「はい。実力試験ですから。魔法具を取らないとその人の魔力がわかりません。」


と、無慈悲な言葉が返ってきた。


(…ど、ど、どうしよう…。魔法具を取ったら、わたし…魔力出せないわ…!)


思わず、右手に嵌められている腕輪をギュッと握りしめる。


(ノアがこれで入学できたと聞いていたけれど、これを外したらノアだって魔力を扱えないはず。)


一体、どうやってこの場を乗り越えたのか…。


右腕を握りしめているサラを不審に思ったのか、眉を寄せた試験官は、サラの右腕を覗き込もうとする。


「どうしたのです?外せない魔法具でもありましたか?」


このままでは、どんどん怪しまれてしまう。

でも…と思い立ったサラは、早速のピンチにパニックを起こしながらも、ぐるぐると思考を巡らせた。


腕輪を外したら魔法が使えなくなるから、この学園に入学出来なくなる。

きっと、この水晶は魔力を図る魔法具なのであろう。

神聖術を使っても何も反応しないに違いない。

絶対に、魔力を出さないといけない。

どうにかして、腕輪を外さず、試験が受けられたら…。

そこで、あることを閃いたサラは、握っている左腕をそのままに、スッと瞳を閉じた。


(太陽の加護よ…。この腕輪を熱で隠して…!)


心の中で念じた瞬間、右腕が微かに熱くなり、視界から腕輪が消えていった。


「…すみません、外せました。…手で触れれば良いのですね?」


神聖術で、何とか人の目から隠すことは出来たが、魔力を扱える人間からも見えないとは限らない。

緊張で心臓がバクバクと脈打ってるのを感じながら、サラは平常を装ってゆっくりと右手を水晶へ近づけた。


(お願い…これで、何とか…)


けれど、右手が水晶に触れる直前…


「待ってください。」


突然、試験官が固い声を出した。


ギクッと体を硬直させたサラは、恐る恐る試験官の方へ目を向ける。


(…バレた!?)


すると、試験官はこちらを見ていた訳では無く、見えない何かを探して宙を見つめていた。


「…今、何か。不思議なエネルギーを感じませんでしたか?」


いつの間にか杖の様な棒を持ちながら、試験官が真剣な声でサラに問いかけてくる。

サラは、更に緊張感が高まるのを感じた。


(…もしかして、私が熱で腕輪を隠したから、この空間の気温が一気に上がった…?)


サラの得意な神聖術は、太陽の熱や光を操作すること。

蜃気楼のように無いものを見えるようにすることも出来るし、大量の熱で炎を作り出すことも出来る。

先ほど使ったのは、蜃気楼を作る応用だったが、緊張していた為か、いつもより力みすぎていた節はあった。


(お願い…!シルヴァ!)


心の中で叫んだサラは、今目には見えないシルヴァを呼んだ。

すると、冷たい風がサラの頬にあたり、部屋の中の気温が一気に下がってくのを感じる。


「…あら?不思議ね…。エネルギーが消えていく…。」


試験官が、本当に不思議そうに呟いた。

その声を聞いたサラは、どっと疲れが出てくるのを感じる。


(早く…終わらせたい。)


試験官がまだ辺りを見渡している中、腕輪に神聖術を集中させたサラは、そのままスッと水晶に手を当てた。

すると、水晶は僅かに光を出し、不思議な音を奏でる。


その音に反応した試験官は、サラの姿を目に入れると、落ち着き払った声で「結構です。」と手を外すように促してきた。


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