表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天界からきた少女~王立魔法学園転入編~  作者: 鈴城伊織
第1話 舞い降りた天使
4/12

3 瞳に映る人間界

サラが次に意識を覚醒させた時、薄暗い部屋の中に立っていることがわかった。

そこは、以前父親に連れられて来た時より、必ず最初に目に入る人間界の空間。

父ミネバが言うには、人間社会の貴族が住むお屋敷の地下室とのこと。

薄暗いのは地下のせいでもあったが、室内は物置のように埃が舞っていて、普段から人が出入りする場所では無いことがわかった。


(…灯りはどこだろう。)


出迎えを期待していた訳では無いが、ミネバから人間界へ娘を送ることは、ここの主に連絡している筈だ。灯りを点けて置く事くらいは、しておいて欲しかったと思ってしまうサラは、扉からわずかに漏れている光を頼りに、辺りを見渡す。


軽く一周見渡し、燭台が目に入ったサラは、傍のマッチに手を伸ばし…たところで、扉の方向からバタバタと足音が近づいて来るのに気が付いた。


「サラ様!遅くなり、申し訳ございません!」


バーンっと扉を開けて、廊下の光を背に現れたのは、少し青ざめた表情をした女性。

外見からして、人間でいう、16歳くらいの年齢だろうか。

長いフリルの黒スカートを身に纏い、白い清潔なエプロンをしている彼女は、鳶色の髪を後ろで一つにまとめている。

一瞬、藍色の瞳を細めたサラは、その存在を認めると、ほんの少し表情を和らげた。


「…こんにちは。あなたは、ここの使用人かしら?」


初対面の人間には、なるべく優しく接するのがサラの心情だ。

優しい笑顔を浮かべたサラが声をかけると、澄んだ茶色の瞳をした彼女は、ほんのり頬を赤らめた。


「は、はい!ホーエンヴァルト伯爵邸の専属メイド、ベルダでございます!」


少し慌てた様子の彼女を見ていると、表情がよく変わる、素直な人間だということがわかる。

一人で初めて来た人間界で、彼女のような人に会えたことに、サラは少なからずホッとした。


「私は、サラと申します。ここに、父の知人である、カールに会いに来たのだけれど。」


人間界の礼儀作法は、以前父に連れられてきた時に少し教わっている。

纏っているローブの裾を両手で少し持ち上げながら、膝を曲げると、丁寧な口調で名乗った。

すると、ほんのり頬を赤めていたベルダは、更に顔を赤めて勢いよくお辞儀をする。


「お、お、お会いできて光栄です!サラ様!この度は、お出迎えが遅くなり大変申し訳ございません!」


「いえ、それは構わないわ。」


何しろ、これからお世話になるのはこちらの方なのだ。

灯りは点けて置いて欲しいと思ったものの、出迎えは全く期待してなかった。


「いえ、旦那様より、サラ様は私たちが手の届かない所にお住まいなくらい、高貴な方だと伺ったので!しっかりとしたおもてなしが出来ず、面目ございません。」


そう言いながら、サラを外に促そうと扉を開けて待ち構えているベルダは、早くこの場から離れたいといった表情をしていた。

確かに、もう少し明るいところに行きたいと思ったサラは、苦笑いで廊下へと出る。


「ベルダ、私はそんなことで怒らないわ。」


「い、いえ。そのようなお美しいお姿…!こんな、備蓄倉庫にいたら、汚れてしまいます!」


どうやら、サラが何処から現れるかは、知らされていなかったようだ。

「次からはここも掃除しておかないと…」と呟いたベルダは、上へと続く階段へ案内する。


「えっと、ベルダは、カールに私のことを聞いたのよね?」


「はい!旦那様より、サラ様がご滞在中は私が身の回りの世話をするよう、仰せつかりました。」


「どこまで、私の事を知っている?」


階段を上りながら、ベルダを見上げると、ベルダは言い辛そうに少し目を伏せる。


「あの…私だけ、サラ様が天界より舞い降りた天使様だと聞いております。」


「いや、天使では無いわ」


思わず、被せる様に言ってしまったが、サラは天使では無い。

天使は、天界人に使える精霊のようなものだ。

この人間界では、ほぼ見ることは無いであろう存在。

彼らは、天界人には忠実だが、本質は精霊と同じなので、自由気ままな生命体だった。


きっぱり否定したサラに、驚いた様子のベルダは、急いで頭を下げる。


「も、申し訳ございません!私の認知不足で!」


「…良いのだけれど、その…そんなに頭を下げないで。」


「も、申し訳…あ、はい!承知いたしました!」


階段を全て上ると、目の前に広がるのは何処までも広がる緑。

それは、天界とは少し異なる…人の手入れが行き届いている庭であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ