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異世界に聖女召喚(失敗)されたおじさん 婚約破棄された悪役令嬢と一緒に世界を救う旅に出ます  作者: 世界


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勝利の報酬

ネトコン11応募作品、一日一回、17時更新を目指します。

 包帯繭と化したジャンを前に、呆気にとられる天児達。かなり衝撃的な姿ではあるが、突っ込んでいいものか判断が難しい。隣に立つマリアロイゼから「死なせておいた方がよかったのでは…?」と小さく呟く声が聞こえたのを、天児は聞き逃さなかった。


「おお、来てくれたか、マリアロイゼ。それと、中年男よ…」


「中年って…あの、天児です。僕の名前は、九鬼天児といいます」


「そうか、お前はテンジというのか、まぁなんでもいいが…」


 何にも良くはないが、いちいち突っかかっていても埒が明かないので、天児は敢えて何も言わないことにする。薄々感じていた事だが、基本的にジャンはマリアロイゼの事しか頭にないのだ。自分の部下も、天児の事も、興味のない一般人程度にしか考えていないのだろう。こういう手合いに腹を立てても仕方がない。天児は昔の嫌な上司を思い出して苦い顔になっていた。


「で、何の用です?ジャン。どう見ても勝負は私の勝ちだったでしょう。それともまだ何か難癖でも?」


「ああ、解っている。勝負は、俺の負けだ。認めよう、マリアロイゼ…君の勝利を」


 かすれるような声で、包帯繭からジャンの言葉が紡がれる。ジャンがそれを認めると言ったからには、これ以上のしつこい求愛はなくなるということだろうか?天児はホッと胸を撫で下ろしたが、マリアロイゼはジャンを全く信用していない。殊勝な事を言っていても、舌の根の乾かぬ内にまた余計を事を言うに違いない、そう思っているのが表情に出ていた。だが、意外にもジャンは本当に勝負の結果を受け入れているようだった。


「勝負に賭けただろう?俺が負けたら君の言う事を聞くと。それを聞きたくてここへ来て貰ったのだ。…今の俺はこの状態だ、本当に死ねというなら、それも甘んじて受け入れよう。さぁ、決めてくれ」


 どうやら、ジャンは諦めの境地に至っているらしい。無理もない話だが、いくら嫌っていても普通はここで死ねとは言えないだろう。だが、先程マリアロイゼが呟いた言葉からすると、彼女は本当にジャンに引導を渡すかもしれない。天児はマリアロイゼを止めるべきか迷いながら、彼女の答えを待った。


「はぁ…正直な所、冗談抜きで死んで頂きたいのは山々なのですが、私も鬼ではございません。金輪際、私に対する求愛も求婚も一切止めて、余計な干渉をしないと約束して頂けるのであれば、死ねとまでは申しません。如何ですか?」

 

「…ああ、誓おう。俺が負けたら全て君に従うというルールだったからな。俺はもう二度とマリアロイゼを口説く事もプロポーズもしない…これでいいか?」


「それは大変結構。ではもう一つ…探して欲しい人物がいます。この街のどこかに、年齢八十歳前後のエリーゼという女性がいるはずです。その方を探して下さいませ。私達は元々、その方を探してここにきたのです。街を治める貴方なら、簡単でしょう?」


「エリーゼ、という老婆だな?解った、手配しよう。それでいいのか?」


 それを聞いて、咄嗟に天児はマリアロイゼの方を見た。その視線に気づいたマリアロイゼは、微笑みながら天児に向かってVサインで応えている。その笑顔は、天児が今までに見たマリアロイゼの表情の中でもダントツにかわいいと思えるもので、天児は高鳴る胸を抑えつつそれを気付かれないように笑顔を返す。


(ロゼさん、あの勝負を持ち掛けたのは、これが目当てだったのか)


 確かに、この広い街でたった一人の人間を闇雲に探すよりは、街に住む人間を管理している領主を頼った方が遥かに早く、確実だ。あのまま天児が独りで聞き込みをしているだけでは、何日かかるか解ったものではない。本来であれば出会いたくない所か、顔も見たくなかったというジャンに対し、どうしてあんな勝負を持ち掛けたのかを疑問に思っていたが、どうせ出会ってしまったのならとことん利用しようという計画だったのだ。彼女の強かさには恐れ入るばかりである。

 

「ああ、最後にもう一つだけ。…ジャン、テンジ様に謝罪なさい」


「へ?」


「本来であれば跪き地に頭を擦りつけてテンジ様を崇め、誠心誠意、心の限り、涙を流して七日七晩は不眠不休で謝り続けて頂きたい所ですが…残念ながらその状態では指一本動かせないでしょう。仕方がないので言葉だけの謝罪で勘弁して差し上げますわ。さぁ、キリキリ謝りなさい!」


 やっぱりこっちが本命だったような気がする。というか、絶対そうだ。謝罪だけ要求の癖が段違いに強すぎて、横で聞いていた天児は思わず素っ頓狂な声をあげていた。

 ちなみにさっきまでマリアロイゼが見せていたかわいい笑顔はいつの間にか消え失せて、とてつもない恐怖を感じる冷徹な笑みに変わっている。今度は違う意味で胸が高鳴り、心臓がキュっとなりそうだった。


「あの、ロゼさん。そこまでしなくても…謝罪とか別にいいですから」


「なんとお優しい…!聞きましたか?ジャン。貴方が散々見下して貶して暴言を吐きまくったというのに、テンジ様は全て許すと仰っているのですよ!この寛大な御心にむせび泣いて感謝の言葉を述べなさい!さぁ、さぁ!!」


 段々と、マリアロイゼが天児に向ける思いが恋慕の情ではなく、崇拝のレベルに変わりつつある気がする。その内、天児を神とする宗教でも立ち上げかねない勢いだ。というか、もしもこのまま天児が自分の世界に帰ってしまったらどうなるのか…一抹の不安が、天児の心を猛烈な速さで過った。


「くっ…!この俺を、赦すと言うのか…?クカミテンジィ、お前は…なんという」


「と、とりあえず!またお見舞いに来ますんで!失礼しまーす!」

 

 若干発音が怪しいし、わざわざフルネームで呼ばれるのも極まりが悪いが、そんなことよりここにいると嫌な事に巻き込まれそうな予感がする。あとマリアロイゼとは今後の事で話をしたくなったので、天児は胸を張って鼻を高くするマリアロイゼを連れて、ジャンに挨拶をして天児は慌てて部屋を飛び出した。


「テンジ様、こんな陽の高い内から求めて下さるなんて!私初めてですので、あんまりアブノーマルなのはちょっと…せめて最初は夜にベッドで…」


「ハァ…ハァ…何言ってるんですか、本当に…!」


 マリアロイゼを抱え上げて走ったせいで息が上がってしまっているが、天児もだいぶ体力がついたようだ。成人女性を抱えて走るなど、なかなか出来ることではない。本人は気付いていないようだが、この世界に来たばかりの天児がもやしっ子なおじさんだった事を考えれば、大した成長ぶりである。

 その日の晩、ジャンの部下からエリーゼが見つかったという連絡を受けた天児達は、翌日エリーゼの元へ向かう事になった。だが、その深夜、何者かの手により住宅街の一角で火災が発生し、いくつかの住宅が全焼。焼け跡から複数の遺体が発見された。


 その内の一人は、エリーゼという名の女性であったという…

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