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異世界に聖女召喚(失敗)されたおじさん 婚約破棄された悪役令嬢と一緒に世界を救う旅に出ます  作者: 世界


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男女の仲も一進一退

ネトコン11応募作品、一日一回、17時更新を目指します。

 だらだらと冷や汗が流れてくるが、顔は熱い。心臓がうるさい程に鼓動を刻み、口の中はカラカラに乾いている。


(や、やばい…これ、更年期かな?)


 男性にも更年期はあるが、天児にはまだ早いだろう、単純に緊張のあまり身体が反応しているだけだ。そんなどうでもいい思考も現実逃避の一環である。窓から差す夕日に照らされたマリアロイゼは、本当に美しい。初めて彼女を見た時、陶器のような白い肌だと天児は思ったが、その白い肌に夕日が当ると程よく赤みが差して格段に美しさが増す。

 マリアロイゼを憎からず思っている天児としては、彼女の魅力が増すと一苦労なのである。


「あ、ああああのですね、ロゼさん…」


「はい…」


 マリアロイゼはしなを作って、天児の手を握っている。伏し目がちな視線が、さらに色っぽく、艶やか(あで)に見えた。


「えっと、やっぱりその、一緒に寝ると言うのはさすがに…」


 その言葉に反応したマリアロイゼが天児を見上げると、その瞳はうるうるとうるんでいた。それはまるで昔見たCMのチワワのようで、天児は痛く心を締め付けられてしまった。この男、本当にとことん押しに弱い男である。そもそも天児は女性経験に乏しいせいか、女性の涙にはとびきり弱い。亡き妻と結婚する前、デート商法に引っかかりそうになった時も、きっかけは詐欺女性に泣かれた為だ。その時は寸での所で、偶然居合わせた妻に助けられたのだが、妻とは初対面なのにこっぴどく叱られた。

 それ以来、親しくない女性の涙は信用しない事にしているはずだったが、マリアロイゼとはもうすっかり親しくなっている事から、その効果は覿面であった。


「テンジ様…」


「うっ…!」


 胸を抑えてみれば、心臓はさっきよりも強く激しく高鳴っている。これはもはや動悸だ、あの有名な薬に頼る必要がある。再びくだらない現実逃避をしていると、マリアロイゼの顔がゆっくりと近づいてきていた。その瞳は閉じられて、ぶるんとした若く(つや)のある唇が主張をしている。これはもしかしなくてもあの行為(キス)をするつもりだろう。


「え、いや、え!?ちょっ…」


 ここまで色々と耐えてきたさすがの天児も、この雰囲気に飲まれつつあった。そもそもマリアロイゼはただの据え膳ではなく、超ド級のご馳走である。ここまでされて逃げ切れる男など、そういないだろう。第一、天児は男やもめの独身であり、ここは異世界だ。羽目を外しても悪い事などほとんどない。それでも、天児はマリアロイゼとの年齢差と、文字通り住む世界を隔てるその違いに尻ごみしていた。


「はっ!?」


 そんな天児がうっかり流されかけたその時、不意に視線を感じて横目でそちらを見ると、眠っていたはずのバハムートが寝転がったまま、じっとこちらを凝視しているのが見えた。


「わあああああっ!?」


「きゃあっ!」


 その一瞬で頭が冷え、一気に冷静さが戻ってくる。やはり子供(の姿をしているだけだが)の前でそんなことは出来ない。まして天児には幼い娘がいるのだ。バハムートの姿が娘とダブって見えて、波が引くように血の気が引いた天児は、立ち上がって窓から顔を出し、気分を落ち着かせることにした。竜車はかなりの速度で移動しているので、強い風が頬に当たる。冷たい風がのぼせた頭には心地よい。


「あ、危なかった…!」


 これが魔が差すということか。今までにも何度か理性を試される事はあったが、今回は一番危なかった。天児は初心なので、過度に肉体的な接触よりも、キスのような行為の方が好みなのである。もしこれがマリアロイゼに知られれば、天児の貞操は無くなったも同然だろう。なんとしても、この秘密は守りきらねばならない。


「なんだもう終わりか?つまらん。人間の番なんて俺は滅多に見た事ないから楽しみだったのに」


「いくらなんでも子どもの前で変なことできませんよっ!」


 天児は叫んで抗議しているが、逆にこれは天の助けであるとも言えた。少なくとも、バハムートが傍にいてくれれば、天児は雰囲気に飲まれる可能性が低くなる。フレスヴェルグのブレスと合わせれば、間違いを防ぐ手段は増えたと言っていいだろう。さすがのマリアロイゼも、子どもの姿をしたバハムートが起きて見ているとなれば、そうそう変な気は起こせないからだ。


 そんな中、もう少しだったのに、とでも言いたげに若干恨みがましい表情でマリアロイゼは天児の背中を見つめている。彼女の手練手管は確実に天児の琴線に近づいていて、巧妙になっていた。これからはバハムートが同行するとなれば、天児を落とすチャンスは減るだろう。危険極まりない魔女とも接触する恐れはあるのだから、出来ればその前にと思っていたようだが、ここで攻めきれなかった事が悔しそうである。


 様々な思惑が交差する中、沈みゆく太陽を眺めながら、天児はこれからの事を考えて黄昏るのであった。

お読みいただきありがとうございました。

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