表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に聖女召喚(失敗)されたおじさん 婚約破棄された悪役令嬢と一緒に世界を救う旅に出ます  作者: 世界


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/125

加護と祝福

ネトコン11応募作品、一日一回、17時更新を目指します。

「おかしい、なんで僕まで…」


 リヴァイアサンの太っ腹な振る舞いに、天児は納得がいかない様子だ。いずれ元の世界へ帰る事を考えると、あまり人間離れしては困ると思っているからだが、そんな不満そうな天児を見てリヴァイアサンは首を傾げている。


「旅人よ、何がそんなに不満なのだ?」


「いや、僕の心が読めるなら解るでしょう。僕なんかがこれ以上の力を手に入れても仕方ないんですよ。さっきロゼさんにも心配してたでしょう?生き辛くなるんじゃないかって」


「何を言う。あちらの竜の娘と違って、貴様はそもそも弱っちいではないか。本来であれば、貴様にこそ加護が必要なのだぞ?考えてみろ、貴様が何度も死にかけるような虚弱だから、あの娘は心配のあまり泣いていたのではないか。あの娘が大事だと言うなら、力が要らぬなどという言葉はそれだけの実力を持ってから言うのだな」


「う…そ、それは…」


 正にぐうの音も出ない正論であった。リヴァイアサンの言う通り、天児にもっと実力があれば毎度死にかけるような事もなく、必然的にマリアロイゼに心配をかける回数も減るだろう。まだすぐには元の世界に帰れない事を考慮すれば、ここで加護を貰っておくのは決して悪い話ではないはずだ。そもそも、元の世界に戻っても加護が残るとは限らないのである。


 虚弱と言われたのは些か心外ではあるが、特別身体が強いわけでもない。そもそも異世界人を基本にすれば、特に鍛えてもいない天児は虚弱扱いされても仕方がないだろう。思い返してみれば、アビーにも弱そうなザコいおっさんと言われていたし、もしかしなくても天児はそういう目で見られているのかと思い、悲しい気持ちになった。


「テンジ様はそのままで良いのです!お兄様やお父様のように暑苦しくて不細工なムキムキボディになられては困りますわ。…とはいえ、身を護る術は多くあった方が良いのも事実ですし、加護で筋肉が増えるような事もないでしょう。なので、テンジ様もお揃いで加護を貰えば安心安全ですわね!」


 二人の会話を聞いていたマリアロイゼが、ニコニコと笑顔をみせながら割って入ってきた。多分に彼女の趣味が混じっている気もするが、言っている事は間違っていない。マリアロイゼが常に付きっきりで傍にいられるとは限らないし、今回のような事態になる可能性もゼロではないのだ。

 それにしても、マリアロイゼの家族に対する評価はかなり厳しい。ただ思い返してみれば、彼女の叔母であるジョゼフィーヌも、ドレスの上から見て解るほどに鍛えられた細マッチョな体型をしていた。マリアロイゼが恐怖の対象として語る母親も含めて、皆かなりの豪傑なのは間違いないだろう。暑苦しいかどうかはさておき、かなり鍛えているのは想像に難くない。

 娘にはパパみたいな人と結婚すると言って欲しいと既婚の同僚が漏らしていたが、父親とは真反対の人がいいと言われるのも少し心が痛む。娘の事を思うと、まだ見ぬマリアロイゼの父親が不憫な気がして、天児は思わず目頭が熱くなってしまった。


「さて、では始めるとするか。貴様ら、一人ずつ名乗るがよい」


 三人は竜車の外に出て、浜辺に移動していた。夜の浜辺は人気が全くなく、かすかな街の灯りと満月が、辺りを照らしている。人間体のままでも加護は与えられるらしいが、初めての事なので、本来の姿で行いたいとリヴァイアサンが言い出した為に外へ出てきたが、バーズタウンの人々に見られやしないかとヒヤヒヤものである。しかし、特に騒ぎになっている風でもないので、恐らくは姿を隠しているのだろう。


 天児とマリアロイゼは素直に従って、波打ち際に並び立ち、リヴァイアサンは海に入ると本来の姿に戻っていた。ただし、大きさは元よりもかなり小さい。おおよそ三mほどの大きさだ。


「マリアロイゼ・ドラグですわ」


「九鬼天児です」


 その名を聞き入れ、リヴァイアサンは目を瞑って何事か呟くと、二人の目の前に拳大の輝く玉が一つずつ現れた。月の光を反射して、キラキラと光るそれは、見ているだけで不思議な力が湧いてくるような感覚に襲われる。ふわふわと浮いていて、まるで手品のようだ。


「良かろう、テンジ、マリアロイゼ。その名を持って其方らに我が加護を与えよう。我が竜玉を受け取るがよい」


 リヴァイアサンの言葉を受けて、まずはマリアロイゼが竜玉に手を伸ばす。両手を皿のようにして受け止めると、竜玉は一際大きな光を放ち、吸い込まれるようにして、彼女の手の中へ消えていった。


「ふうっ…!ありがとうございます」


 身震いするマリアロイゼを隣で見つめていた天児は、その姿がとても綺麗で見とれてしまっていた。満月の光に照らされ、寄せては返す波の中で真っすぐに立つ彼女は、鮮烈なほどの美しさを感じさせる。この世界に女神がいるとしても、きっとそれに負けないほどの美しさだろう。

 ぽかんと口を開けている天児の顔がよほどおかしかったのか、マリアロイゼはクスクスと笑っている。その声に天児ははたと気付いて、慌ててそれに倣って竜玉を受け取ろうとした。


 同じように両手を皿にして、竜玉を手に取ると、その表面が水面のように揺らいで見えた。そして、それはゆっくりと手の中に取り込まれ、全身の隅々にまで染み渡るような感覚がする。やがてその感覚が治まってくると、天児の身体にわかに輝き始め、足元の海水が軽い渦を巻くように天児の周りへ巻き上がった。


「な、ななな?!え、なんだこれ…!」


「ほう。テンジよ、其方は我と相性が良いようだな。この世界に産まれておれば、立派な水属性の使い手となったであろう。そら、目を凝らしてみるがよい、其方の周りに無数の水の精霊が集まってきておる。精霊の祝福まで得るとは大したものだ。ふふ、かような人間は本当に珍しいな」


 そう言われてよく見てみると、巻き上げられた海水の中に小さな人影のようなものが見えた。とても小さなそれらは、何かを謳っているようだった。精霊の祝福というものが何かもよく解っていないが、何故だか心が温かくなってくる。その喜びの感情を無性に誰かに伝えたくて、天児は隣に立つマリアロイゼの手を取った。そんなマリアロイゼもまた、水の精霊に祝福を受けているようだ。


 月明かりと精霊の齎す輝きは、いつまでも二人を包みこんでいた。

お読みいただきありがとうございました。

もし「面白い」「気に入った」「続きが読みたい」などありましたら

下記の★マークから、評価並びに感想など頂けますと幸いです。

宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ