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異世界に聖女召喚(失敗)されたおじさん 婚約破棄された悪役令嬢と一緒に世界を救う旅に出ます  作者: 世界


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深夜の受難

ネトコン11応募作品、一日一回、17時更新を目指します。

 アビーの屋敷を出発して、その日の夜の事である。


 グラウンド・ドレイク達は夜目が利くので、夜間でも走り続けられるが、マリアロイゼはあえて停止させて休息を入れる事にした。

 いくら夜間でも走れると言っても、万が一と言う事もある。先を急ぐ旅ではあるが、あえて無理をする必要はないのだ。


 ウィリアム領は比較的治安が安定していて、街道沿いに野営をしていても、盗賊や暴漢に襲われる心配はまずない。

 ディミーゴ一味にしても、行ってきた悪事は精々窃盗や街中での喧嘩程度のものだ。そもそも、ディミーゴはアビーの気を引きたくて半グレ集団を率い始めたようなフシがある。平民の子どもであるディミーゴが六大公爵家の令嬢であるアビーと接点を持つには、彼女の目に留まる程の何者かでなければならなかったのだろう。

 その為にチンピラ達を従える立場になるというのは、理解し難いものがあるが…それ以前に、彼は今回気絶して失禁すると言う醜態を晒した。

 片思いの相手にそれを見られたのは痛恨の極みだろう。ついでに半グレのリーダーとしても致命的だ。あの後、衛兵に突き出されていたが、彼がこの先どれだけ突っ張っていられるかは謎である。


 ちなみにさすがのマリアロイゼも、改めて彼が失禁した姿を目の当たりにすると目を逸らし、それ以上手を出す事はなかった。天児が意識を取り戻した事で、彼女も冷静さを取り戻したのだろう。一時は本当に殺すつもりだったのだから、ある意味ディミーゴは運が良かったのかもしれない。


 天児の作った夕食を終え、寝支度を整えると、ソファをベッドに変えていよいよ眠る時間である。

 すぐ隣に並んでいるとはいえ、ベッドは二つなので、寝袋の時のように同衾の心配がないのは天児にとっても安心だ。枕元にはフレスヴェルグもいるし、まさか夜這いをかけられるような事もないだろう。そう考えて、天児は安心して眠りに就いた。


 深夜をとうに過ぎた夜更け、妙な寝苦しさを覚えて天児がふと目を覚ますと、隣のベッドに寝ていたはずのマリアロイゼが、天児を抱き枕のように抱えて眠っていた。


「っ!?」


 天児は驚きのあまり声も出せず、振りほどこうにもマリアロイゼは眠ったまま、ガッチリと天児の身体を掴んで離さない。

 一体いつの間にこんな体勢になったのか、少なくとも、取り返しのつかない状況ではないようだが、そもそもここまで気付かない自分にも問題がある。結局、何度か声をかけてもマリアロイゼは起きる気配がないので、天児は止むを得ず、このまま朝を待つことにした。


 すやすやと寝息を立てるマリアロイゼのパジャマは薄着で、さらに密着するその身体を意識しないようにしても、やはり天児も健全な男である。ドキドキと心臓が高鳴り、このままではかなり困ったことになりそうな気分になってきた。

 そんな時、客車の外で何か物音がした。耳を澄ませてみると、グラウンド・ドレイクの寝息や、虫の鳴き声に混じって誰かの話し声が聞こえる。

 ここは街道沿いに整備された林の傍なので、もしかすると、近くを誰かが密会の場所に使っているのかもしれない。


 盗み聞きはよくないのだが、一度聞こえてしまうと気になるのが人間である。ましてや身体を押さえられて動けない中、これ以上やましい気分にならないように、天児はなんとなしにその声に耳を傾けた。


「…ら、…君のことは…して…!」


「…!もう…全部…し…て!」


 途切れ途切れに聞こえてくる声は、男女のものである。内容は聞き取れないが、どうも切羽詰まった印象を受けた。


(喧嘩かな…?)


 喧嘩だとしたら、こんな時間に人目を避けての密会の上でとなると、正直、あまりよろしくない関係である可能性が高い。

 別れ話か、或いは不倫の清算か…どちらにせよ愉快な話ではないし、他人が首を突っ込むのも憚られる。

 現状、天児が気を紛らわせるには十分だが、プライバシー的には大問題だろう。


 しかし、これ以上は聞きたくないという気持ちはあっても、それを止めると今度は暴力的なまでのマリアロイゼの魅力に意識が向かってしまう。

 マリアロイゼを起こそうにも、相手の声が聞こえるということは、こちらの声も聞こえる可能性があるということだ。

 なまじ二人の話が聞こえてしまった手前、天児は後に引けなくなってしまっていた。


(な、なんでこんなことに…!?)


 良識と理性の板挟みになりつつ、ちらりと横を見ると、マリアロイゼはとても幸せそうに笑みを浮かべて眠っていた。

 そんな彼女の寝顔を見てしまっては、もう何も言えない。


 やはり、もっと本腰を入れてマリアロイゼを起こすべきだった。

 天児はそう後悔しながら、時が過ぎるのを待った。


 翌朝、マリアロイゼが目を覚ますと、目の下にクマを作りぐったりとした天児が、燃え尽きたように何かを呟いていたという。

お読みいただきありがとうございました。

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