表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に聖女召喚(失敗)されたおじさん 婚約破棄された悪役令嬢と一緒に世界を救う旅に出ます  作者: 世界


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/125

次の勝負は命懸け

ネトコン11応募作品、一日一回、17時更新を目指します。

 アビーと一緒に外へ出てみると、屋敷の正門前にはガラの悪いチンピラ男達が集まっていた。

 見た所、数十人はいるだろう。彼らは見るからに興奮していて、いつ暴発するか解らない様子だ。


 天児は彼らを見るなりげんなりしつつ、アビーの後ろからついていく。

 当のアビーは、面倒くさそうに閉じた門越しに彼らの前に立った。


「よお、お前ら。ついこの間散々遊んでやったのに懲りねぇな。今日は何の用だよ」


「アビー!テメェ、よくも俺の子分をやってくれやがったな!今日という今日は許さねぇ!」


 唾を飛ばして怒鳴り散らしている男は、どうやらチンピラ達のリーダーのようだ。

 全身に刺青を入れているのだが、もはや素肌の部分の方が少なくて、見た目の印象はかなり奇怪に見える。

 

「はぁ?なんのことだ?ディミーゴ。アタシはなんにもやってねぇぞ」


「ふざけんな!昨夜のことだ、忘れたとは言わせねぇ!」


 リーダーの名前はディミーゴというらしい。どうやら仲間の敵討ちが目的できたようだが、アビーの方には身に覚えがなさそうだ。

 しかし、ディミーゴの方も引き下がる気はないようで、今にも噛みつかんばかりの形相で怒っている。その様子を見る限りでは、ただの嘘や言い掛かりで文句を言っているわけでもないように思えた。

 

「そう言われてもなぁ、昨夜は普通に家で寝てたし…」


 頬をポリポリと搔きながら、アビーは困った顔で天児の方を見た。天児は視線を向けられてもどうする事も出来ず、同じように困り顔になっている。

 その時、男達の中からアッと驚く声がして、どこかで見覚えのある男が天児を指差していた。


「ぼ、ボス!コイツですよ、俺達が昨日やられたのは!昨夜アルカン達をやったのもコイツに違いねぇ!」


「ああ?あの、ひったくり邪魔されたってやつか。…情けねぇ、こんなヒョロいおっさんにやられたのかよ、テメェらは!」


 記憶を辿ってみると、天児を指差していたのは、昨日の泥棒騒ぎの時に天児を襲った連中の一人だった。

 確か、一番最初に殴りかかってきた男だったはずだ。アルカンという名前には聞き覚えがないが、恐らくあの時の連中の一人だったのだろう。だがそれは、昨日の昼間の話のはずだ。


(ん?昨夜…?)


 天児はふと、今朝起きた時に覚えた室内の違和感を思い出し、屋敷の二階からこちらを見ているマリアロイゼの方を向いた。

 すると、マリアロイゼはさっと顔を背け、こちらを見ないようにしている。その様子はまるで悪戯がバレた時の飼い犬のようだ。まさか…と思いつつ、天児はたらりと汗が流れるのを感じた。


「おい!どこ見てやがる?…ホントにテメェがアルカン達をやったのか?信じられねぇな」


 アルカンというのは、泥棒の実行犯として働き、邪魔をした天児に逆恨みをした挙句、昨夜マリアロイゼによって半殺しにされた男である。

 誰にやられたのかと問い質され「悪魔にやられた…」と証言していたのだが、目の前のしょぼくれたおっさん…すなわち天児が悪魔だとは、ディミーゴには信じられないようだった。

 

「アルカンってのは確か、あの冴えない小物野郎だろ?ディミーゴ。大将のお前が血相変えて乗り込んできた所を見ると、相当やられたらしいな」


 アビーが笑いを堪えて、ディミーゴに声をかける。

 ディミーゴの率いる集団は、マフィアや暴力団のような大掛かりな組織ではない。現代日本で言うなれば半グレ集団である。

 彼らはその腕っぷしと、官憲を恐れない向う見ずな行いで生計を立てる者達であり、これまでは事ある毎に領主の娘であるアビーが力で制圧してきた。

 その度にメンバーの大半を失うのだが、どこからか人員を補充してきては、また悪さをするから困りものだ。


 行う悪事のほとんどが、ひったくりや窃盗などである為、例え捕まっても重い罪にならず、しばらくするとすぐお勤めを終えて出てくる。その繰り返しだ。

 かくいうリーダーのディミーゴも、アビーによって何度も捕縛されているのだが、舞い戻ってきてはリーダーとして再び活動を始めている。

 

 そんな彼らにとって、力で負けるというのはもっとも恥ずべきものであり、彼らの自尊心を大きく傷つけるものであった。

 アビーやマリアロイゼのような規格外の存在ならいざ知らず、天児の事を何も知らない彼らにしてみれば、何の変哲もない中年男性の天児に負けたというのはとんでもない汚点なのだ。アビーがバカにしたようにニヤついているのも、まさにそれが理由である。


「アルカンともう一人、コボルは全治3か月の重傷だ。二人共全身を滅多打ちにされた上に両手両足の骨を綺麗に折られて、川に投げ捨てられてやがった…あそこまでやるのはテメェくらいのもんだと思ってたがな、アビー」


「はっ!そんなの、このおっさんに出来るわけ…」


 恨み節を吐くディミーゴを余所に、アビーはそれが出来そうな人物が真っ先に思い浮かび、思わず口をつぐんだ。


(ははん、読めたぞ。おっさんとコイツらが揉めて、アルカンが報復に来た所をマリアロイゼがやりやがったな?…アイツ男の為になると容赦ねーんだな)


 アビーの予想はほぼドンピシャで当っている。ただ一点、マリアロイゼが情け容赦なく怒ったのは、アルカン達が天児を狙っただけでなく彼女自身が天児の寝こみを狙っていた所を邪魔されたせいでもあるのだが、そこまで予想できるはずもなかった。

 そもそもアビーの知るマリアロイゼは、自分にも他人にも厳しい貴族令嬢の鑑であり、鉄壁のお嬢様だ。まさか恋愛に関しては肉食系で、虎視眈々と天児の貞操を狙っているなど、アビーには知る由もなかった。


「…このおっさんならやりかねねーな。お前らなんかじゃ相手にならねーよ」


「ほう、面白ぇじゃねーか…!」


「え!?」


 アビーの一言に、天児は完全にふいを突かれた。そんなデマカセを言うアビーの狙いが読めず、彼は激しく動揺している。

 すかさず天児の肩を抱き、アビーは意地悪そうに囁いた。


「おっさん、次の勝負はコイツら倒した数で競おうぜ。マリアロイゼがあれだけ惚れてんだ、腕っぷしもそこそこ強いんだろ?アタシとやる前のウォーミングアップ代わりにゃ、ちょうどいいからよ」


「ちょ、いやそんな…!」


 誤解があるにもほどがある。天児はこの世界にきてから、モンスター達と戦ってきたことで度胸こそ鍛えられたが、基本的な戦いの腕前はそうでもないのだ。世界樹やヘスペリデスの金のリンゴから恩恵は受けているものの、こんな大人数と戦う自信など全くなかった。


 そんな事は露とも知らず、アビーはディミーゴを煽り、天児の力を試そうと考えていた。その心のどこかでは、自分の知らないマリアロイゼがいる事も、そしてそれが天児によるものだと言う事も気に入らない。そんな気持ちもあったようにみえる。


 そして、天児の抗議など聞く耳も持たず、アビーは屋敷の門を開けさせ、そのまま雪崩れ込んでくるディミーゴの一味を殴りつけ、戦いは幕を開けた。

 

「オラオラァ!かかってきやがれ!」


 心底嬉しそうに暴れ回るアビーとは対照的に、天児はピンチを迎えていた。

 何しろ頼みのフレスヴェルグはマリアロイゼと共に屋敷の中で、昨日と同じ戦法は使えない。

 しかも、敵は皆武装していて、アビーの挑発で殺気立っている。とてもただで済むような雰囲気ではなかった。


「し、死んでしまう…!」


 青褪める天児を狙って、複数の男達が襲い掛かろうとしていた。

お読みいただきありがとうございました。

もし「面白い」「気に入った」「続きが読みたい」などありましたら

下記の★マークから、評価並びに感想など頂けますと幸いです。

宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ