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異世界に聖女召喚(失敗)されたおじさん 婚約破棄された悪役令嬢と一緒に世界を救う旅に出ます  作者: 世界


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出会って数分でバトルに巻き込まれる体質

ネトコン11応募作品、一日一回、17時更新を目指します。

 異常な様子に気付いた人々がざわざわとざわめき立てつつ、人の壁を作り始める。

 どうやら、この街の住人たちは物見高い性格をしているようで、なんだなんだと口々にしながら天児と粗野な男達の争いを期待しているようだった。


 このままでは色々マズいと慌てて天児が露店から離れると、周囲はあっという間に円形の人垣に囲まれ、その中心で、天児と男達が睨み合う形になった。


「あの~、止めません?こういうの…そもそも泥棒とか良くないですし、もちろん暴力もですけど…」


「ああ?!ふざけんじゃねぇぞ!ここらじゃ俺達はちったぁ名の知れた悪党なんだ!俺達の邪魔をする奴がどうなるか、思い知らせてやるよ!!」


 泥棒の名が知れていてはマズいのでは?と思ったが、余計な事を言って火に油を注いでも仕方ないので黙っておく。

 もしかすると、彼らは現代日本で言うヤクザか、マフィアのようなものなのかもしれない。

 だとすると、さすがに彼らと事を構えるのはよろしくなさそうだが、話し合いはたった今決裂したばかりだ。


 走って逃げようにも、見物人たちが人垣を作っていて、さながら格闘技の試合を行うリングのようになってしまっている。

 空を飛べるマリアロイゼならともかく、天児では逃げられそうにない。


(ロゼさんなら、問答無用でこの連中を制圧するだろうな…)


 今まで一緒に過ごしてみて気付いたが、彼女は自分が武家の令嬢であると言う事に誇りを持っているのは明らかだ。

 売られた喧嘩は絶対に買うだろうし、半殺しで済ませるかも怪しい所である。


 そもそも、天児をあれだけ溺愛しているマリアロイゼなら、この状況だけでも相手に死刑宣告を下してもおかしくないだろう。


 この世界の法律には詳しくないが、さすがに殺人は良くないような気がするので、出来れば避けて欲しい。

 そしてそれは、天児の肩に乗っているフレスヴェルグにも言える事だった。


 フレスヴェルグは穢れた悪人を喰らって、その魂を浄化する大鷲なので、悪党を自称するこの連中は格好の餌食と言っていい。


 そういう意味では、フレスヴェルグが彼らを喰らうのは正しい事なのかもしれないが、何故浄化というシステムに対しての答えがフレスヴェルグではなく、聖女という存在なのか?を考えると、迂闊に任せてしまうのもどうかと思う。

 何より天児は一度フレスヴェルグに食われているので、あの恐怖を他人に味わわせるのには少し抵抗があった。


(話し合いもダメ、逃げられない。かといって長引かせたらロゼさんに知られるだろうし、フレスヴェルグも我慢できないだろう…となると…)


 結局の所、天児が自分の力でどうにかするしかないようだ。

 幸い、この世界に来てからというもの、恐怖にはだいぶ耐性がついている。

 これが普通の生活をしていた頃であれば、怯えて平謝りしていただろうが、モンスター達と戦ってきた今の天児には彼らなど全く恐ろしい存在ではないのだった。


「何のんびり悩んでやがんだこの野郎!ぶっ殺すぞ!!」


 彼らも彼らで、威勢よく脅しをかけてはくるものの、一向に向かってくる様子はない。

 一人として武器も持っていないし、少し痛い目に遭わせれば十分な気がしてきた。


 問題は、ろくに喧嘩をした事のない天児には、殺さない程度に痛めつける方法など全く思いつかない事である。


 ウンウンと頭をひねる天児の姿は、彼らの目には自分達をバカにしているように見えたのだろう。

 痺れを切らした男の一人が、天児を横合いから思い切り殴りつけた。


「死ねこの野郎!!」


 だが、天児にははっきりとその動きが見えていて、まるで流れるような足さばきでその一撃を躱し、男の背後を取った。

 

「見える…って、ちょっと言ってみたかったヤツ」


 苦笑しながら天児が呟くと、その一言は完全にチンピラ男達の逆鱗に触れた。

 逆上した男達は、一斉に天児に襲い掛かってくる。


「あ、マズ…そうだ!フレスヴェルグ、アレ頼む!」


 天児が小声で囁くと、フレスヴェルグもクェッと小さく鳴いた。

 これまでの旅で、二人の間には立派な絆が生まれていたのだ。


 向かってきた最初の男の攻撃を避けて、天児はわざと軽いパンチを放つ。

 同時に、フレスヴェルグはその男に向かって、これまで幾度となくマリアロイゼを昏倒させてきた衝撃波のブレスを合わせた。

 すると男は、至近距離からのブレスを喰らった為に脳が揺らされ、軽い鼻血を垂らして倒れこんだ。

 傍目には天児の拳を喰らって、男が意識を失ったように見えるだろう。

 ヘスペリデスの木から貰った金のリンゴで、動体視力と反射神経が良くなった事によって出来る芸当だが、天児はちょっとした達人の気分である。


 それを繰り返せば、あっという間に男達は気絶をし、残ったのは最初に泥棒を働いた男のみになった。


「な、なんなんだテメェはっ!?」


「あー…なんなんでしょうねぇ。ホントに…」


 通りすがりの異世界人だ!と言える訳もなく、天児は頬を掻きながら男の出方を伺った。

 周りを囲んでいる人達は、すっかり天児の味方のようで、皆思い思いに「いいぞおっさんー!」「ロージャー(万歳)!」等と叫んでいる。

 少々恥ずかしいが、このまま男が逃げてくれれば万々歳だ。ただ、そう上手くいくかは解らない。


「ち、ちくしょう…!」


 追い詰められたチンピラの男が、ポケットに手を入れた時、遠くから甲高い笛の音と野太い男の声がした。


「コラー!!なにをやっとる!喧嘩は許さんぞぉ!」


「ヤバい、衛兵か!?おい、お前ら起きろ!逃げるぞ!」


 その途端、チンピラ男は仲間たちを乱暴に起こし、逃走を始めた。

 それにつられて、見物人たちまでもがわたわたと慌てだし、まさに蜘蛛の子を散らしたように逃げていく。

 天児はこれ幸いとその人ごみに紛れ、少し離れた場所へ隠れるのだった。



お読みいただきありがとうございました。

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