魂の行方
ネトコン11応募作品、一日一回、17時更新を目指します。
「ご心配おかけして申し訳ございません…ちょっと、ショックで…」
ようやくフリーズから回復したマリアロイゼが、しゅんとしながら謝っている。
よほどショックだったのだろう、翼もすっかり萎れてしまって、なんとも痛々しい有り様だ。
天児は「大丈夫ですよ」と声を掛けながら、背中をさすっていた。
この世界の住人にとっては、女神は生活に根差した当たり前の存在であるのだから、それがいなくなり、さらには人間になってしまったかも…などと聞かされれば、彼女のような反応になっても仕方のないことだろう。
ヘイラクの話を聞く限り、エリシャという女性が、女神が人間に生まれ変わった存在である事は間違いなさそうな気がする。
いくら人間の事を詳しく知りたいからと言って、その人間に転生してしまおうとは、破天荒な女神である。
ただ、それが仮に事実だとすると、解らないのはエリシャという女性の現在だ。
エレオノールもヘイラクも、彼女はとっくに他界したと言っているし、人間ならばそれも当然だが、彼女が元女神ならば話は変わってくるだろう。
天児とマリアロイゼはひとまずヘイラクの家に戻り、改めて今後の話をすることにした。
「さて、これからどうしましょうか…」
マリアロイゼを落ち着かせる為、貰ってきたお茶を手渡しながら話を始める。
少し温めではあるが、飲みやすい温度でちょうどいい。
「仮にあのエリシャさんという人が女神様そのものだったとして、今はどうしてるんでしょうか?」
「亡くなられたというお話ですし、もういらっしゃらないのでは?そうなると、女神様が戻ってこない理由が解りませんけど…」
二人して、うーん…と首をひねりながら考えていると、アクシスがぽつりと仮説を口にした。
―彼女は、エリクシアは転生のシステムに組み込まれてしまったのかもしれません。
「転生の…ああ、天寿を全うしたら、また人間に生まれ変わるっていう…え、女神様なのに、ですか?」
―ええ、そうだとすると彼女が戻ってこない事も説明がつきます。
転生のシステムでは、同じ存在に生まれ変わる事はできますが、当然ですが記憶などは引き継がれません。
つまり、彼女は今、まっさらな人間として生きている可能性があります。
さすがに女神としての権能までは失っていないでしょうが、普通の人間になってしまっていれば、力を扱う事ができないのかも…
「そんな…女神様ですのよ?そんな事あるんですの?」
―まぁ、彼女は少々そそっかしいというか、おっちょこちょいな所がありましたから…
「おっちょこちょい!?女神様が…おっちょこちょい…」
またマリアロイゼがショックを受けてしまった。
尊敬する女神がおっちょこちょいだの、そそっかしいだのと言われれば仕方がない。
ショックを受けているマリアロイゼに代わって、天児が疑問を投げた。
「も、もしアクシスさんの予想通りだとしたら、僕らはどうやって女神様を探せばいいんです?どこの誰に生まれ変わったかも解らないんじゃ、さすがに手の打ちようがないのでは…」
―いえ、そうであればやりようはあります。
転生のシステムでは、死んだ魂達が集まる場所があります。そこへ行くことが出来れば、魂の行方を追う事もできるでしょう。
少々危険ではありますが…
アクシスが言い淀むほどとは、よほど危険な場所なのだろう。
天児とマリアロイゼは、思わず息を呑んだ。
「それは一体、どこにあるんです?」
―西の海、オケアノスの海底に、エリクシアの作った芳魂の神殿と呼ぶ場所があります。
転生を待つすべての魂はそこに集まり、新たな命となって世界へ散っていくのです。ただ…
アクシスは、その先を言うのを躊躇っているようだ。
やや長い時間を空けた後、意を決したようにその先を口にした。
―その海には、神殿を守る怪物が棲んでいるのです。
海龍リヴァイアサン…恐るべき力を持った、海の魔獣が。
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