女神の転生
ネトコン11応募作品、一日一回、17時更新を目指します。
「えー…っと、どういうことなんでしょう?」
気を取り直した天児が、アクシスにそう問いかけた。
マリアロイゼの方は、よほどショックだったのか、いまだにフリーズしているようだ。
―昨日、ヘスペリデスの木が言っていた事の意味を考えていたのですが
ふと思い出したのです、エクシリアは人間の事をもっと知りたいと言っていたのを。
たったそれだけの事で、女神が人間に生まれ変わったと思うものだろうか?
とはいえ、エレオノールの存在を考えると、他人の空似で片づけるには少し厳しい気もする。
アクシスの想像はあまりに突飛だが、一考の余地はあるのかもしれない。
―ひとまず、あのエレオノールの曾祖母という人間の話を聞いてみてもらえませんか?
「そうですね、そうしましょう」
アクシスの言う通り、元々はそれが目的でこの村に来たのだから、あれこれ考える前に話を聞いてみるのが正解だろう。
天児はそう考えて、村長に声をかけた。
「あの、すみません。ヘイラクさん、少しお話よろしいですか?」
「おお、テンジ様。いいですとも、何でも聞いて下され!」
村長のヘイラクに話しかけると、彼は快く応じてくれるようだった。
いつの間にか、祭りの囃子は静かなBGMに変わっていた。
「実は僕達、バーソロミューの街でエレオノールさんの曾お祖母さんのお話を聞きまして…どなたか、当時の事が解る方はいらっしゃいませんか?」
「ほ?エレオノールは儂の孫ですが…曾祖母というと、儂のお袋の話ですかな?」
「えっ!?」
天児が驚くと、同時にドドン!と太鼓の音が鳴った。…偶然だろうか?
それはさておき、まさかこのヘイラクがエレオノールの祖父だったとは思わなかった。
エレオノールは聖女神官だけあって、スマートで鍛えられた身体の持ち主だったが、目の前のヘイラクはなんというか、全体的に丸いフォルムをしている。丸顔で、小太りな身体は、雪だるまに手足が生えたかのような体型だ。
顔つきもあまり似ていないようだが、遺伝子というのは不思議なものなので、それだけでは何とも言えない。
とりあえず話を続けて見る事にした。
「ええと…村長さんのお母さん、ですか。どんな方だったんでしょう?」
「そうですなぁ、一言で言えば、自慢の母親でしたな。息子の儂が言うのもなんだが、お袋は美人でね。おまけに気立てもよくて、村一番の人気者だったんですよ」
エレオノールにそっくりだったというなら、確かに美人だったのは間違いないだろう。
そもそも女神の石像からして美しい容姿をしていたし、そんな彼女に瓜二つとなれば、村一番というのも伊達ではない。
(ん?エレオノールさんが女神様にそっくりで、その曾お祖母さんは女神様にそっくりなんだっけ、逆かな?解らなくなってきた…)
なんだか非常にややこしい話になってきたせいか、天児は独り頭を悩ませている。
片やヘイラクは、昔を思い出したのか、饒舌に語り出していた。
「思えば、お袋は変わった所がありました。色々な事を知っておる割に、妙に常識的な事を知らなかったり。もの知らずかと思えば、まるで預言者の様に一か月分の天気を丸々と言い当てたりなんかしてね。…ああ、そうそう賭け事に目がありませんでな、しょっちゅう街へ出かけては、賭けで荒稼ぎしておりましたよ。あの頃、バーモント村のエリシャと言えば、知らぬものはいなかったと思いますよ」
確かに変わった人だったのは間違いなさそうだが、女神と結びつけるには少々厳しいものがある。
しかし、次の発言で事態は一変した。
「おお、そうだ!ヘスペリデスの木が見つかったのも、お袋が原因でしたな」
「決定じゃないですか!?」
天児が叫ぶと同時に、ドドドン!と太鼓が鳴った。演出のつもりなのだろうが、若干鬱陶しい。
モヤモヤする気持ちを抑えて会話は続く。
「え、でもあのヘスペリデスの木とラアドンは、女神様が加護として与えたのでは?」
「ええ、ですから、それを最初に見つけたのがお袋のエリシャだったのです。元々、彼女はこの村の出身ではありませんでした。ある日突然村に現れて、そこにヘスペリデスの木というものがあると…後で聞いた話では夢でお告げをみて、この村に来たと言っておりました」
にわかには信じ難い話ではあるが、エリシャという女性が女神の生まれ変わった人間なら話は別だ。
どうしてという意味では解らないことだらけだが。
天児は「どう思います?」とマリアロイゼに聞こうとして、そこでやっと気づいた。
マリアロイゼがずっと固まったままだった事に。
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