聖なるおじさん
ネトコン11応募作品、一日一回、17時更新を目指します。
「は…はっ…ハックションッ!!」
明け方、豪快なくしゃみと共に、天児は目を覚ます。
なんだか体が温かいような、寒いような、奇妙な感覚がする。
そう言えば、まだパンツ一丁のままだったと思って目を開けると、昨夜と同じポーズのまま、マリアロイゼが燃えていた。
「ヒェッ?!」
さすがに物理的に火が点いているわけではないが、彼女の身体からはオレンジ色の光が出ていて、さながらヒーターか何かのようだ。
耳を澄ますと、彼女は小さな声でブツブツと何事かを早口に呟いている。
「テンジ様の裸テンジ様の裸テンジ様の裸テンジ様の裸テンジ様の裸テンジ様の裸テンジ様の裸テンジ様の裸テンジ様の裸テンジ様の裸テンジ様の裸テンジ様の裸テンジ様の裸テンジ様の裸テンジ様の裸テンジ様の裸テンジ様の裸テンジ様の裸テンジ様の裸テンジ様の裸テンジ様の…」
天児は恐ろしくなったので、何も聞かなかった事にした。
どうやら、こんな格好でもそこまで寒くないのは彼女のお陰らしい。
身体はともかく、今ので肝はだいぶ冷えてしまったが。
「あ、あの…ロゼさん…?おはようございます…」
返事がない。先程、くしゃみをしたのも気付いていないのだろうか?
仕方がないので、天児はマリアロイゼの頭を撫でてみた。
そういえば何かの本で読んだが、実は女性はあまり頭を撫でられるのが好きではないと聞いたことがある。
とはいえ、密着した状態では他に触れられる部分があまり無いので、今は勘弁してほしいなぁと天児は思った。
「あぁ、んっ…はっ!テンジ様!おはようございます、お目覚めになられまして?」
「え、ええ、お陰様でよく眠れました。ロゼさんこそ、ずっと僕を看てて寝ていなかったんですよね?大丈夫ですか?」
一瞬、なまめかしい声が漏れた気がするが、意識すると大変なので申し訳ないがスルーする。
特に今の天児はほぼ裸なので、さすがに困ったことになりかねない。
彼の名誉の為に誓って言うが、余計な所は触っていない。
少し角に触ってしまったが、頭を撫でただけである。
「私は全然問題ありませんわ!それで…あ、あの…」
もじもじと身体をよじらせつつ、マリアロイゼは顔を赤らめた。
また何かやってしまったのだろうか?
「私、つ、角は敏感なので、その…」
「すいませんでしたっっっ!!!」
…どうやら本当にやってしまっていたようだ。
マリアロイゼに平謝りをして許しを得た後、天児は着替えて外へ出た。
村人たちは相変わらず、宴会の真っ最中だ。
昨日目が覚めた時にも宴会をしていた気がするが、よほど嬉しかったのだろう。
そもそもいつから宴会をしているのかは、考えない事にした。
「おお!皆の衆、聖おじ様がお目覚めになられたぞ!」
「せ、聖おじ様…?」
村長の家を出ると、早速村長が天児を見つけてそう叫んだ。
一体何の話だろう?それはまさか自分の事ではあるまいなと嫌な予感を覚えていると、わらわらと村人達が集まってきて、聖おじ様ロージャー!と言われながら握手を求められたり、丁寧に頭を下げられた。余談だがロージャーはこちらの言葉で万歳に近い意味の言葉である。
ああ、これは確定だ。自分の事で間違いない。天児はいたたまれなくなって、思わず泣きそうになった。
「あ、あの、なんで聖おじ様なんですかね?」
「そりゃあ聖女様のスキルを持っておられるオジサマだからですわい!」
「だからですかぁっ…!」
天児は泣いた。年齢的にもおじさんなのは否定しないが、無理に聖をつけるのは止めて欲しかった。
というか、文字に書くならともかく、おじ様に聖をつけたら、違う字になりかねない。
変換でもきっと聖が性になって恥ずかしい事になるだろう。天児は仕事で使っていたPCの誤変換で大失敗した過去を思い出す。
だからと言って女性ではないので、聖女と呼ばれてもおかしいのだが…やはりせめて聖人にして欲しい。
そんな天児の思いが通じたのか、マリアロイゼが取りなしてくれて、聖おじ様という呼び名はその場で無くなった。
その代わりに大勢の人からテンジ様と呼ばれるのは、かなり恥ずかしいものがあるが、聖おじ呼ばわりよりはマシである。
そんなこんなで村人達の歓迎で揉みくちゃにされた後、色々な食事を用意されて、少し落ち着いた場所でマリアロイゼと共にそれらを頂く。
心底疲れて溜息をしながらスープを啜っていると、マリアロイゼがクスクスと笑いながら天児を見つめていた。
「テンジ様、人気者になってしまいましたわね?フフ、私としても大変誇らしいですわ。お疲れ様です」
「あはは…皆さん余程嬉しかったんでしょうね。感謝されるのは僕も嬉しいんですけどね、これじゃ身が持たないかもしれません」
顔を見合わせて笑う二人は、幸せそうでとても仲睦まじい。
そんな二人を村人達は微笑ましく見守っている。
―あの、あれから考えてみたのですがよろしいでしょうか?
「あ、アクシスさん。はい、なんでしょう?」
アクシスは、どことなく緊張した様子で発言を始めた。
何かあったのだろうか?
―もしかすると、女神は、エリクシアは…人間になってしまったのかもしれません。
「へ?」
アクシスの言葉に、天児とマリアロイゼは絶句するしかなかった。
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