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異世界に聖女召喚(失敗)されたおじさん 婚約破棄された悪役令嬢と一緒に世界を救う旅に出ます  作者: 世界


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お嬢様の乙女心

ネトコン11応募作品、一日一回、17時更新を目指します。

(ああああああああ!や、やっちまいましたわ~~~~~!)


 マリアロイゼは声に出さず、心の中で絶叫した。


 三日ぶりに天児が目覚めた事を喜ぶあまり、天児に抱き着いたまでは良かったが、その後天児の匂いを嗅いでいたらトリップしてしまい、そのまま眠ってしまったマリアロイゼ。


 自身が眠っていなかった疲れもあったのだろうが、まさか半日寝てしまうとは思わなかった。

 彼女が目を覚ましてみれば、天児に抱き抱えられた状態で、天児の膝の中に収まっていた。

 しかも、ガッチリ天児に抱き着いたままである。


 恐らく天児は身動きがとれなかったのだろう。

 何しろ自分とほぼ同じ体格のマリアロイゼが、コアラのように体にくっついているのだ。立ち上がる事すら難しかったに違いない。

 彼は壁に背中をつけて、マリアロイゼを抱えたままうたた寝をしていた。


 なんという不覚。せっかく病み上がりの天児が目覚めたというのに、彼に余計な負担をかけてしまった。

 これはさすがに公爵令嬢として、また、乙女を自称する彼女にとっても、とてつもない失態である。

 そもそも人間として良心が痛む、天児は優しいので、きっとマリアロイゼを怒ったりはしないだろう、それが辛い。

 こんな事があの母親にバレたら、地獄の折檻が待っていることだろうが、それは甘んじて受けなければ気が済まない。

 彼女にも令嬢としてのプライドがあるからだ。


(ああ、それにしても…テンジ様の寝顔、かわいいですわね)


 やってしまった事の反省はしているが、それはそれとして、好きな人の寝顔がすぐ目の前にある状況は抗い難い魅力を感じるものである。

 天児が目覚める前までは、心配のあまりそんな気にはならなかったが、一度目を覚ましたのだから過度な心配は必要ない。

 改めて天児の寝顔を堪能するくらいのご褒美は、あってもいいだろう。


(あ、まつ毛が長い…ふふ、眉毛はあまりお手入れなさっていないんですのね)


 マリアロイゼは、元々男性の容姿というものにあまり頓着しない性質であった。

 そもそも、彼女はあのバカ王子と婚約関係にあったので、他の男に目を向ける気も無かったのだが。


 基本的にこの世界の男性は脳筋であるが、美男子が多いのも特徴である。

 高齢の貴族の中には恰幅のいい男性もいるのだが、彼らもかなり固太りしたマッチョタイプだし、そもそも元の顔がいいので、そこまで崩れた容姿の人間はいないと言っていい。

 その為、皆一様に身なりには気を使っていて、例えばコンビニに行くような程度の軽い用であっても、きちんと正装して外出するほどきっちりしている人達ばかりなのだ。

 マリアロイゼにとって、男性は皆どれも同じ、そう感じていた。


 一方、天児の場合、元々は営業職だが最近はもっぱら管理職であり、社内から出る事も少なくなった事から、以前ほど身なりには気を使っていなかった。

 それでなくても、妻を亡くしてからというもの、娘の入院する病院と会社の往復が日常であり、とても自分の見た目を気にしている余裕がなかった事もある。

 

 天児は一般的には並程度の顔つきであるが、とにかく疲れてやつれた感の強いその顔は、マリアロイゼにとって新鮮そのものであり、母性本能をこれでもかというほどくすぐる魔性の顔に思えた。


(こんなに魅力的なお方ですもの、奥様がいるなんて当たり前でしょうに…)


 妻を亡くした天児の気持ちを想うと、マリアロイゼまで悲しくなってくる。

 貴族である以上、妾の一人や二人いても一向に気にしないが、愛する人を喪った悲しみは痛い程よく解る。

 それに加えて、最愛の娘が病気で苦しんでいるとなれば、天児の心労は察して余りあるほどだ。


 だからこそ、マリアロイゼは支えたい。

 天児を一人の男性として慕うのと同時に、貴族のような一般的に恵まれた生活を持たず、また使命があるわけでもない彼が、それほどの苦労にも心折れずに優しく明るく生きている事をマリアロイゼは心から尊敬していた。


 仮にあのバカ王子が天児のような状況に置かれたら、発狂して暴れ回ってドブに転がり落ちるか、いい加減な事ばかり言って、全て投げ出してしまうだろう。

 また他の身近な男性である父や兄であれば、マリアロイゼの手など必要ないとばかりに奮起して、元通り以上の生活に戻るだろう。


 それではつまらないし、バカ王子に至ってはもう支えようという気にすらなれない。

 

 天児は異世界の住人であるからか、公爵令嬢という身分も関係なしにマリアロイゼに接してくれるし、何より素直に自分を必要としてくれる。それがマリアロイゼには何よりも嬉しかった。

 やけに年齢差を気にするし、これだけアピールしてもなびいてくれないのは些か不満ではあるが、それだけだ。

 

「…いつか必ず、貴方を惚れさせてみせますわ、メロメロにさせちゃいますから、ね?」


 マリアロイゼは天児を起こさないようにそっと囁くと、彼の頬にそっとキスをした。

 唇にキスをするのは、今はまだ早い。

 

 そのまま、天児の身体を冷やさないように優しく抱きしめ、夜は更けていった。 

お読みいただきありがとうございました。

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