表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に聖女召喚(失敗)されたおじさん 婚約破棄された悪役令嬢と一緒に世界を救う旅に出ます  作者: 世界


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/125

女神の足取り

ネトコン11応募作品、一日一回、17時更新を目指します。

 外から聞こえてくる音楽が、段々と激しさを増している。

 さっきまでは、日本のお祭りなどでよく聞く感じの音色だったのに、今はかなりロックな雰囲気だ。

 宴会で何が起きているのだろう。


 そんな事に気を取られていると、再びアクシスが語り始めた。


―それと、調べさせて貰いましたが、あのヘスペリデスの木というものは、私の眷属のようですね。

 この村にエリクシアが訪れたというのは間違いないでしょう。

 ある程度の年代も特定できました。彼女は100年以上前にここにいたのです。


「100年…?!そんな昔じゃあ…」


 思わぬ時間の経過を知って、天児が驚きの声を上げる。

 片や、マリアロイゼは天児に抱き着いたまま、すんすんと鼻をならして天児の匂いを嗅いでいる。

 この落差は一体どこからくるのだろう。


―いえ、彼女の足取りが解っただけでも素晴らしい成果です。

 この調子で探していけば、必ず彼女に辿り着けるはず…

 

 アクシスは気にせず話を続けている中、突然何者かの声が割って入ってきた。


―あ、あの~、すいませ~ん…ちょっと、よろしいでしょうか~…?


 自信なさげに話す声は、少女のような幼さが残っている。

 誰の声だか解らず、天児がキョロキョロと辺りを見回すと、どうやらタブレット(木板)から聞こえてきているようだ。

 

「えっと、どなたです…?」


―あ、す、すいませ~ん!あの、私、貴方に助けて頂いたヘスペリデスですぅ~!!


 『です』が二回続いたせいで解り難いが、どうやらヘスペリデスの木が喋っているらしい。

 いつの間にこんな機能が…


―彼女は私の眷属だったので、樹脈を通じてパスを繋げておきました。

 これで、よほどのことがない限り瘴気に再び侵されることもないでしょう。


「樹脈…?」


 聞き覚えのないワードを耳にして、天児の頭にはてなが浮かんでいる。

 それを察したのか、アクシスが説明してくれた。


―私はこの世界を支える存在として、あらゆる場所に根を張っています。

 それを樹脈と呼んでいるのですよ。

 これらを結べば、先程のように離れていても世界樹の雫を送ったり

 連絡を取り合ったりすることができます。


「なるほど、ネットワークを構築するようなものですね。凄いなぁ」


 アクシスが以前にも猪の解体方法を動画で教えてくれたりしていたのを思い出し、これはもう完全にインターネットだなぁと暢気な事を考えていると、ヘスペリデスが再び話し始めた。


―あ、あのあの!それで、皆さんのお話を聞いてて、私気になってた事があるんですぅ…


「気になってたこと?」


―はい、私、女神様には二回お会いした事があるんです~

 一度目は、ここに私を植えてくれた時で~、二度目は、もう少し後だと思うんですけどぉ…

 二度目にお会いした時は、女神様が女神様じゃなかったような気がするんですぅ


「女神様が、女神様じゃない…?」


―はい~、す、すみませぇん…


 どうにも要領を得ない発言だ。それは何者かが女神に成り代わっていたという事か、或いは女神に似た誰かを見たという事なのか。よく解らない。

 アクシスなら解るのだろうかと、天児は話を向けてみた。


「アクシスさん、どういうことですかね?」


―私にもよく解りません…彼女はまだ自我を持って日が浅いので、色々と未成熟なのです。

 

 それでこんなに子どもっぽいというか、幼い感じがするんだなと天児は納得した。

 考えてみれば、意識を失う直前に、一人で泣く小さな子どもの頭を撫でたような気がする。

 あれがヘスペリデスの木だとしたら、まだ幼いというのも頷ける。

 あの姿は娘の美琴と同じか、それより下の歳の子どものようだった。

 むしろ、これだけ喋れるのであれば大したものだろう。


 そこでまた娘を思い出して、天児は少し胸が苦しくなった。


 …というか、物理的に苦しい気がする。

 よく見ると、抱き着いたままのマリアロイゼが、がっちりと天児の胸を締めながら、すうすうと小さな寝息を立てて眠っていた。

 驚いて引き離そうとするも、全く離れようとしない。眠っていてもそのパワーは健在である。

 それどころか、離そうとすると余計に力が入って締まるので、諦めるしかなさそうだ。


―旅人よ、そのままにしておあげなさい。

 竜の娘は貴方が眠っている間、ずっと起きて傍で見守っていたのですよ。


「そうだったんですか…」


 これは本当に頭が上がらないなと、マリアロイゼのかわいらしい寝顔を見て、天児は苦笑した。

 少し躊躇いがちに頭を撫でると、彼女の寝顔はふにゃりと綻んで、より幸せそうなものになる。

 確かにこれは、起こせそうにない。…ただ、出来れば、もう少し力を弱めて欲しい所だ。

 正直、胸元がうっ血して、少し息が苦しい。

 

 外から聞こえる宴会のメロディーは、いつの間にか静かなブルースに変わっていた。

お読みいただきありがとうございました。

もし「面白い」「気に入った」「続きが読みたい」などありましたら

下記の★マークから、評価並びに感想など頂けますと幸いです。

宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ