浄化作戦!
ネトコン11応募作品、一日一回、17時更新を目指します。
泣き続ける住民達を前に、天児とマリアロイゼは困惑していた。
さすがにこの状況で、人を探しているとは言い出せない雰囲気だ。
泣いている人達の中には、時折、ちらちらとこちらを見ている人がいる。
ウソ泣き…だとは思いたくないが、力になると言わざるを得ないプレッシャーが感じられた。
瘴気を浄化しろという話であれば、まぁそこまで難しくはない。
ラアドンという怪物さえ倒してしまえば、後は天児が大本の樹に触れるだけでいいのだ。
「ふふふ、皆様はラッキーですわね!ここにおわしますテンジ様は、瘴気を払う事が出来る聖女のスキルを持っておられますわ!その程度の問題など立ちどころに解決してごらんにいれます!」
「えっ!?ちょ、ロゼさん…?!」
「おお!本当ですか!?なんという幸運…やはり信じて待ってよかった。早速ですが祭りの準備を…!よし、まずは酒を買ってこなくては!」
「いやいやいやいや!まだ早すぎますよ!?あと過疎はどうにもできませんからね?!」
「クルルル…」
気の早い村長を抑えながら、天児は必死に叫び声をあげた。
心なしかフレスヴェルグも呆れているような声で鳴いている。
一方マリアロイゼは、ハルバードを背から降ろして、ウォーミングアップを始めていた。
「さぁ!じゃあ早速あの蛇モドキを退治してしまいましょうか。テンジ様、安全になったら出て来てくださいましね?では、行ってまいりますわ!」
「え!?いやいや、ちょっと待ってください!後生ですじゃ!ラアドンは殺さないでくだされ!!」
「えー…?なんでですの?とっちめた方が早いじゃありませんか…」
既に殺る気満々だったせいか、マリアロイゼは不満たらたらである。
ここに至るまで、彼女は天児を守りながら戦ってきたせいか、フラストレーションが溜まっているのかもしれない。天児としても、大暴れさせてやりたいのは山々だが、住民が殺さないでくれと言っている以上、無視は出来ない。
「ラアドンは元々、金のリンゴを守る守り神なんですじゃ。もし瘴気を払ってもらえたとしても、ラアドンなしではこの先守っていけませんのじゃ!」
「いや、現に守れてないでしょうに」
「ぐふっ!?」
衝撃を受ける村長と共に、住民達もダメージを受けている。
そして再び、泣き声のアンサンブルが聞こえ始めた。
「ま、まあまあロゼさん。一応考慮してあげましょう。…でも村長さん、人を襲うようになった野生の生き物なら、最悪の場合は覚悟しておいた方がいいですよ」
天児の発言を脅しと捉えたのか、村長は涙目になって頷くばかりである。
現代日本なら、人を傷つけた野生動物はさすがに保護されないが、ここは異世界、しかも相手は守り神とまで呼ばれる存在であれば考慮は必要だろう。
「皆の衆、泣くでない…!この村には女神様がついておる!きっと女神様の加護が守って下さる!」
泣き腫らす住民達に諭す村長。
今、何と言ったのだろう?女神の加護?
「あのー、今何と?この村に女神様の加護がって聞こえましたけど…」
恐る恐る天児が質問すると、村長はポカンとした顔で平然と答えた。
「そうですじゃよ?かつてこの村には女神様がおいでになられて、加護を与えてくだすったのです。それがあのヘスペリデスの木と守護者のラアドンですじゃ!」
「なん、だって…!?」
女神によく似た女性を探しに来たら、女神本人がここにいたとは、思わぬ手掛かりである。
これはラッキーだ、この機会を逃す手は無いだろう。
「ロゼさん!」
「ええ、聞こえておりましたわ!出来るだけ傷つけないように致します!たっぷり恩を売って、少しでも情報を引き出したいですものね!」
さすがはマリアロイゼ、皆まで言わずとも解ってくれたようだ。
とはいえ、あくまでマリアロイゼの安全が一番である。
天児はマリアロイゼの手を握って、瞳を見つめながら言葉を紡いだ。
「ロゼさんの安全が一番ですからね?危ないと思ったら、加減しないで下さいね…心配ですから」
「テンジ様…!ふふふふ…私その言葉だけで百万力ですわ!天にも昇る気持ちです!」
ちなみに、天児の行動、これは全て無自覚である。
彼は女性経験が少ないので気付いていないが、天然タラシの一面があった。
「それでは、私は玄関から出て、ラアドンの気を引きますので。テンジ様は隙をみて樹を浄化してくださいませ。では、行ってまいります!」
マリアロイゼは元気よく叫んで、玄関を飛び出した。
周囲をうろついていたラアドンはすぐそれに気づき、一直線にマリアロイゼへ向かっていく。
「さぁおいでなさい!蛇モドキ!私、マリアロイゼ・ドラグが相手です!」
名乗りを上げ、マリアロイゼは迫りくるラアドンの前で仁王立つ。
ラアドンは、汚れてくすんだ灰色の身体を持つ、巨大な蛇のような生き物だった。
マリアロイゼの目前で、ラアドンはゆっくりと鎌首をもたげて体を起こし、彼女を飲み込もうと大口を開く。その首を振り下ろされるのと同時に、天児は屋敷の裏口からこっそりと外へ出た。
再び淀む空気の塊の前まで来ると、天児は鼻をつまんで、その影とも闇ともつかない中へ飛び込んだ。
「ううっ…吐きそう。凄い匂いだ…!」
鼻をつまんでいても、貫通してくる悪臭にえずきながら、目的の樹へと向かう天児。
辿り着いた先の樹は禍々しい姿をした異様な形をしていた。
お読みいただきありがとうございました。
もし「面白い」「気に入った」「続きが読みたい」などありましたら
下記の★マークから、評価並びに感想など頂けますと幸いです。
宜しくお願いします。




