女神の捜索
ネトコン11応募作品、一日一回、17時更新を目指します。
天児達がジョゼフィーヌの屋敷に泊まった、その翌朝。
天児は見慣れない天井の下で目を覚ました。
「ここは…?あ、そうか、異世界に来たんだった」
むくりと起き上がりながら、部屋の中を見回す。改めてみると、凄く豪華な部屋だ。
公爵家所縁の屋敷というだけあって、調度品の数も質も半端ではない。天児は目利きが出来るわけではないが、それでも一目で良い物だと解るような品々ばかりだ。
なにより昨夜寝たこのベッドが、とてつもない寝心地だった。
亡き妻はやり手の経営者で金は稼いでいたが、生活そのものは質素というか、普通の人間だったと思う。
天児自身、一般的な平均か、それよりやや下の生活しかしてこなかった事もあって、そういう面では助かっていた。
だが、マリアロイゼとその家族は百八十度真逆の人間である。改めて、文字通り住む世界が違う事を強く認識する天児であった。
「昨日一日だけで凄いジェットコースターな人生だったなぁ…美琴に会いたいよ」
九鬼 美琴…現在六歳。言わずと知れた、天児の愛する一人娘である。
世界でも珍しい難病を患い、現在は都内の大学病院に入院している彼女は、愛する妻を喪った天児にとって、まさに目に入れても痛くないほどに可愛い愛娘であった。
幸い、妻の遺産で治療費は賄えているし、天児の実家両親は健在なので、すぐに心配はいらないだろうがやはり愛娘に会えないのは寂しいものだ。
一刻も早く元の世界に帰る為にも、なんとかして女神を見つけなくてはと何度目かの決意を新たにする天児であった。
用意された洗面桶で顔を洗い、軍服に着替えて部屋を出ると、マリアロイゼの熱い抱擁が待ち構えていた。
外で人目を気にしなくてよいせいか、彼女のスキンシップが非常に激しい。
「おはようございます!テンジ様!!お母様の蔵書で読んだように、本当は熱いベーゼで朝起こして差し上げたかったのですが、何故か部屋の鍵がかかっていたので、できませんでしたわ!どういうことですの!?」
「ろ、ロゼさんおはようございます。ロゼさんもお疲れでしょうからね…朝くらい自分で起きれます、大丈夫ですよ」
何故か鍵がかかっていたのではなく、天児が自分でかけたのである。
なにしろマリアロイゼときたら、昨夜は文字通り目の色を変えて同衾を要求してきた。
いくらなんでもそれはマズいと、どうにか彼女を引き剥がし逃げ込んだ部屋の鍵をかけて眠ったのだが、叔母のジョゼフィーヌ曰く「ドラグ家の女たるもの、欲しいものは力で得るべし」という恐ろしい家訓を言うものだから、四方八方敵だらけである。
とはいえ、本当に嫌がる事をしてはいけないと注釈がついていたせいか、鍵をかけたらあっさり引いてくれたのは助かった。実際、彼女がその気になれば、鍵などあってないようなものだろう。
この世界は男性が皆脳筋だと聞いていたが、女性も負けず劣らずパワータイプばかりであった。
その後二人並んで歯を磨き(これもマリアロイゼのやりたかったことらしい)朝食を終えると、ジョゼフィーヌから質問を受けた。
「それで、女神様をお探しするという話ですが、宛てはあるのですか?」
「そうですね。何か手がかりがあればいいんですが…」
天児が頭をひねっていると、タブレット(木板)が光り出した。ちなみに、昨日の内に事情を説明して、タブレット専用のボディバッグを用意してもらってある。
タブレットをテーブルの中央に置くと、3Dホログラムのように世界樹アクシスの姿が空中に浮かび上がった。
もはや、元の世界のタブレットを超えたトンデモアイテムだ。これにはさすがの天児も驚いたし、マリアロイゼもジョゼフィーヌも呆気に取られていた。
―聞こえますか?竜の娘とその家族、そして異世界の旅人よ。どうも、私です。
どうやら無事、バーソロミューの街に辿り着いたようですね。
その街は、いまだ女神の力が色濃く残る珍しい場所です、何か手がかりがあるかもしれません。
街の神殿に行ってみるとよいでしょう、それでは、吉報をお待ちしております。
言いたい事を一方的に言って、アクシスは姿を消した。
(なんか、RPGみたいな展開だなぁ…)
天児は半ば呆れながら、頬を掻いている。
何の手掛かりもないよりはマシだろうが、どうも緊張感に欠ける気がしてならない。
ふと気づくと、ジョゼフィーヌは震えているようだった、どうかしたのだろうか。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
「す…」
「す?」
「すっばらしいです、マリアロイゼ!こんな名誉な事はありませんよ!世界樹の化身から使命を受けただけでなく、私達にまでその声を届けて頂けるなんて!これは末代まで誇れる名誉です。はっ!?こうしてはいられません、お姉様にすぐ連絡しなくては…!」
そう言って、ジョゼフィーヌは目にも留まらぬ速さで部屋を出て行ってしまった。
考えてみれば、神託を受けたようなものなのだから、ああいう反応が当たり前なのかもしれない。
「お、叔母様ったら仕方ないですわね。テンジ様、とりあえず神殿に向かいましょうか」
焦りながら天児の手を引こうとするマリアロイゼの姿が、なぜかかわいく見えた。
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