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異世界に聖女召喚(失敗)されたおじさん 婚約破棄された悪役令嬢と一緒に世界を救う旅に出ます  作者: 世界


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探し人(女神)の旅へ

ネトコン11応募作品、一日一回、17時更新を目指します。

「それで、そのメートル・ゼロというのはどういうものなんですの?」


 マリアロイゼは何やらソワソワしながら、天児に秘められていたという力に興味を示している。おそらく、実家の家族に天児を推す際に使えると思っているのだろう。彼女は中々計算高い一面があるようだ。


―そうですね…しばしお待ちを。


 少し考えるような仕草を見せた後、アクシスは足元の床をベリベリと引き剥がした。ギョッとする二人など意に介さず、アクシスはその木片全体を撫でてささくれを無くし、やや縦長の長方形に整えている。

 木片はA4ノートサイズくらいの大きさで、表は水を湛えたようにキラキラと光って見えた。やがてそこに『アクシス』という文字が浮かび上がり、そして消えた。


(なんか、タブレット端末の起動画面みたいだな…)


 天児はそう思ったが、それを言っても二人には伝わらなさそうなので、口には出さない事にする。じっと見ていると、アクシスはその木片を天児に向けて差し出し、手渡そうとしてきた。

 持てと言う事だろうか?とりあえず素直にそれを受け取ると、画面(としか言いようがない)にはいくつかの項目があり、そこにスキルチェッカーという文字が書かれていた。


「凄いな、見た事のない文字なのに意味がちゃんと解るんですね」


 天児は仕事で使っていたタブレットを思い出して妙な懐かしさを覚えているが、横に立っているマリアロイゼは、信じられないモノを見たというような顔をして、木片をしげしげと観察している。


―先程、貴方の記憶を見せて貰った時に見たアイテムを参考にさせて貰いました。

 異世界には便利な道具があるものですね。


「あ、やっぱりタブレット端末なんですね、これ」


「た、ぶれっと…?」


 マリアロイゼは完全に置いてきぼりだ。頭にはてなが浮かんでいる様子が見ていて少しかわいい。


 そんなマリアロイゼには後で詳しく説明をするとして、天児は早速画面を操作してみる。画面を指でなぞると、軽快にホーム画面が移動する。画質もよく、これは中々高性能なタブレットかもしれない。


 とりあえず、スキルチェッカーを起動してみると『画面に手のひらを当ててください』という一文と手のひらのマークが表示された。芸が細かいなぁと感心しながら、天児は自分の手のひらをそのマークに合わせて押し当てた。

 一瞬光った後、画面にはどこかで見た事のある円環の矢印マークが回転して表示され、そのわずか数秒後には天児の個人情報がズラリと表示されていた。


「名前に性別…えっと、身長と体重?好きな食べ物嫌いな食べ物…初体験の年齢三十…って、ちょ、ちょっと待ってください、この情報要ります!?」


 読み進めた所で、天児は慌ててタブレット木片を隠した。その横で、マリアロイゼが獲物を見つけた肉食獣のような目つきを見せている。


―嘘偽りのない情報を提示した方が信じて頂けるかと思いまして。


「そういうの要らないですから!」


「アクシスさん、ちょっとあの情報だけ後でコッソリ教えて頂けないかしら?タダとは言いませんので…」


 天児の抗議を受けて画面が更新されると、好物から先は消されていた。マリアロイゼはかなり不服そうだが、さすがにそんな事まで知られたくはない。

 一安心して改めて読んでいくと、メートル・ゼロの説明があった。どうやら、能力の射程距離にあるものと自分との距離をゼロにする技能らしい。

 先程フレスヴェルグの体内から抜け出したのは、無意識にこの能力を使い、マリアロイゼの身体にしがみ付いたからなのだろう。言われてみれば、牢内で騎士の足を止めた時も、離れた所にある足を掴んでいたような感覚があった。

 天児には使い勝手が良いような悪いような、よく解らない能力である。片やマリアロイゼは、何か活用法を思いついたのか、ニヤリと背筋の凍るような笑みを浮かべていた。


―お解り頂けたようですね。それと、その木片は差し上げますのでお持ちください。

 それは私に繋がっていますので、それに話しかけて貰えればいつでも私と会話が可能です。

 あとは従者ですが…


 アクシスは三度、あの世界樹の雫を飴玉のようにして、今度はフレスヴェルグの口内へ放り込んだ。すぐさま砕け散った嘴は再生し、白目で泡を吹いて倒れていたフレスヴェルグは目を覚まして立ち上がった。


「あら、またやりますの?」


 マリアロイゼは不敵な笑みを浮かべ、指を鳴らしてフレスヴェルグを睨みつける。一方のフレスヴェルグもまた、低く唸り声をあげながら彼女に強烈な視線を投げていた。

 一触即発の空気が漂う中、アクシスがパチンと指を鳴らすと、フレスヴェルグの身体が光り輝き、瞬く間に小さくなって子犬ほどのサイズにまで縮んでいく。


 二人がポカンと呆気に取られていると、手乗りサイズになったフレスヴェルグは天児の肩に乗り一啼きしてみせた。


―どうやら気に入ったようですね。フレスヴェルグも護衛の従者として貸し与えますので

 どうか、女神探しにご協力をお願いします。


 至れり尽くせりとはこの事か。天児にしてみれば、元の世界へ帰る為には女神探しが避けて通れない話である為、初めから引き受けるつもりであった。しかも、この待遇である。

 未だこの世界に慣れない天児にとっては、大変貴重で助かるものだろう。後は、マリアロイゼが何と言うかだ。


 天児が恐る恐るマリアロイゼの方をみやると、彼女はやれやれと言った表情で溜息を吐きながら頭を振っていた。


「ハァ…テンジ様はズルいですわ。そんな濡れた子犬のような瞳で見られたら、私ダメだなんて言えません。まぁ、そのトリモドキも、テンジ様をお守りするのには役立つでしょうし、女神様をお助けするのは公爵令嬢として当然の義務です。私拒否など致しません。ただし、ちょっとでも逆らったら焼き鳥にしますわよ?」


 ギロリと睨む彼女の瞳は、フレスヴェルグに向けられたものだと解っていても、天児はゾッとして震え上がってしまう。


 ふと、亡き妻にも頭が上がらなかった事を思い出し、天児は自分が女性の尻に敷かれるタイプなんだなと実感するのであった。

お読みいただきありがとうございました。

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