秘められた力(※おじさんの場合)
ネトコン11応募作品、一日一回、17時更新を目指します。
「失踪…?行方不明ってことですか?女神様が、なんで…」
アクシスの言葉を聞いて、天児はポカンと口を開けたまま呟いた。その横では、マリアロイゼも驚いた顔をしている。そんな二人を見つめながら、アクシスはゆっくりと語り始めた。
―エリクシアはこの世界を創った時、別の世界を参考にして作ったそうです。
彼女は、転生というシステムを応用すれば、人は正しく生きられるはずだと私にそう話していました。
しかし、現実にはそう上手く行きません。様々な理由で、人が不意に命を落とす内に、彼女は少しずつ悩んでいくようでした。
それはそうだろう。いくら正しく、穏やかに生きろと言われても、そう簡単にはいかないのが世の中である。とはいえ、天児の生きてきた現代日本に比べれば、真っ当に生きようと考える人間の総数は多くなりそうだ。
神によって来世というものが確実であると言われれば、誰だって真面目に生きようと思うだろう。天児は亡き妻の笑顔を思い出しながら、そう思った。
―極めつけは、かつてこの世界に誕生した、魔王の存在です。彼によって、多くの人命が奪われた時…
エリクシアは苦肉の策として、聖女召喚という儀式を人間に授けました。
「ち、ちょっと待って下さい。魔王?!天寿を全うしなければならない世界で、どうしてそんなものを作ったんです?」
―魔王は、エリクシアが生み出したものではありません。アレは自然発生的に生まれたモノ…イレギュラーでした。
あの時は私も、エリクシアも、ずいぶんと焦ったものです。
世の中には完璧なものなど無いと、心のどこかで思ってはいたが、まさか異世界では女神にも予想しえない事があるなんて…天児は色々な意味で驚きを隠せなかった。
一方、隣で話を聞いていたマリアロイゼも疑問を口にする。
「それで、エリクシア様は一体どうなさったんですの?魔王を打ち倒したのは私達のご先祖様と聞いておりますけど…」
―エリクシアは、その後しきりにある事を口にするようになりました。もっと、人間の事を知りたい…と。
そしてある時、私にこう告げたのです。しばらく留守にするが、心配はいらないと。
しかし、そのまま彼女は戻ってきませんでした。もうあれから200年程になります。
「200年…」
神や世界樹のスケールはピンと来ないが、ただの人間である天児にとっては途方もない時間である。ただ、少なくとも世界樹であるアクシスにとっても、問題に感じる時間の長さなのだろう。
だからこそ、自分達に女神を探して欲しいと言ってきたのだから。
―この世界は、女神の力と私の力が合わさって形成されている世界です。
しかし、これほどの長い間女神が戻らない事によって、徐々に女神の力が薄れ始めています。
聖女召喚の儀が失敗したのも、それが原因でしょう。世界のバランスが崩れ始めているのです。
なるほど、と天児は妙に納得をした。自分が選ばれた理由は解らないものの、失敗の原因が解ったのは大きい。もしかすると、元の世界に帰るヒントが女神を見つけ出せればあるかもしれない。
「ずいぶん勝手なお話ですこと…私がエリクシア様を探すのは吝かではありませんわ。この世界に産まれ生きる公爵令嬢として当然の事ですもの。でも、テンジ様は拉致同然にこの世界へ連れて来られたんですのよ?その落とし前はどうやってつけるおつもりなのかしら?」
落とし前とは、まるで半グレかヤクザのような言い分だが、マリアロイゼは天児の為に怒ってくれているのだから、悪くは言えない。
それにしても、やはりマリアロイゼはまだお冠のようだ。一歩間違えば最愛(と称する)天児が死にかけたのだから無理もない話ではあるが。
―それについては、申し訳なく思っています。
ただ、エリクシアが見つかれば、旅人を元の世界へ帰す方法は見つかるかと…
「本当ですか!?」
天児は思わず身を乗り出して、アクシスに迫った。後ろでマリアロイゼが「むぅ!」と頬を膨らませているが、彼は気付いていない。
アクシスはそんな二人を余所にじっと天児の目を見つめていた。
―ところで、旅人よ。貴方の身体を少し調べさせて頂いてもよろしいですか?
「なっ!?か、身体だなんてそんな羨ましいっ!許しませんわよ!亡き奥様ならまだしも、あなたみたいな泥棒猫にテンジ様は渡しませんわ!!」
天児を庇うように抱き締めながら、シャーッ!と猫のように毛を逆立てて、マリアロイゼが威嚇している。泥棒猫とはまたずいぶんな表現だが、それも母親の持っていた本から学習したのだろうか?
少し複雑な気分になりながら、天児はマリアロイゼをなだめた。
「ろ、ロゼさん落ち着いて…そういう意味じゃないと思いますよ。違いますよね?」
―どういう意味を想定しているのか解りませんが
何故貴方がフレスヴェルグに飲み込まれながら無事だったのか、気になったのです。
さすがのアクシスも、マリアロイゼの発言は理解できていないようだ。まぁ、植物である彼女に貞操観念のようなものがあるとは思えない。そもそも人間のような恋愛感情さえないだろう。
結局、渋々と言った表情で、マリアロイゼは同意した。なんのかんの言っても、気になる所ではあるのだろう。
―ふむ、なるほど。おや?これは…
天児の手を握り、アクシスは目を瞑って何かを調べている。天児の方は特に何も感じないので、本当に調べられているのか疑問だったが、一頻りアクシスが独り言を終えた所で、衝撃な言葉を紡ぎ出した。
―やはり、貴方は聖女召喚の儀によって聖女のスキルを付与されているようですね。
フレスヴェルグの浄化に耐えられたのは、それが理由でしょう。
それと、もう一つ…貴方には、特殊な能力が付与されています。
「特殊な、能力…?」
―はい、その名称は『メートル・ゼロ』とあります。
これはスキルというよりも、アビリティと呼ぶべきですね…非常に稀有なパターンです。
「えええ…」
なにそれこわい、天児の理解を超えた話に、彼は心からそう思った。
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