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ソファベッド  作者: 中島 世期 seki
1章 猫にマタタビ:僕の憂鬱
63/88

63話 読めない背景

【事務所の電話が鳴りっぱなしだ】


 蒲が二人の仲に気が付いて、一ケ月もしないうちに、吉岡が夏梅の再婚歴を出して来た。


 -----------《《仮面夫婦》》------------

 天十郎の妻はバツイチ!驚愕!元夫!は、入籍した翌日に『死亡!』

 元夫の死別から三カ月後には、天十郎の現マネージャーと同棲。


 そして一年後には天十郎と再婚!

 隠された再婚歴!

 いまだに続く夫のマネージャーとの仲は?!子供は誰の子?

 --------------------------------


 センセーショナルな見出しは、人心をくすぐった。日咲の懸念した通りの展開だ。以前に、夏梅が言っていた。「部外者は現実よりも空想が好き」そうなのかもしれない。どんな現実を突き付けられても、面白い訳がない。空想で幻想だから面白いのだ。事実なんて、誰も知りたくない。


 僕は、今更、こんな記事が面白いのか?と不思議だったが、見出し的には、確かに興味は引くだろう。ネット上では面白おかしく憶測が飛び交い、二十年も前の話しで、盛り上がった。憶測は、時にして憶測をした人の人間性を表す。


 法律上は何も問題がないのに、吉江のような欲求不満者の、不満解消の対象となった。ヒーローに守られた女は、豪邸と豊かな暮らしを手にした!男を垂らしこんだ女!と騒ぎ始めた。


 立花編集長と黒川氏がそれに気が付き、天十郎と蒲を呼び出した。僕もついていった。天十郎は夏梅が再婚と言う事も知らないだろう。蒲と黒川氏がすべてを取り仕切ったからだ。


 黒川氏は、現状の問題点に焦点を合わせようとした。まずは茂呂社長の対応が先である。また機嫌を取らねば、何を仕出かすかわからない。二十年経っても、それは変わらない。同時に夏梅へのバッシングをかわして、次につなげなければならない。黒川氏と蒲が対応でバタバタとしている中、天十郎はひとり黙っていた。こういう時、黙り込む癖があるな…。こいつ。


 夏梅は子供達から、その話を聞いた。子供達がその情報に惑わされずに、面白がってくれているので、夏梅も動揺せずにいる。子供達と一緒に涙を流すほど、散々に大笑いをしていた。まあ、当たり前と言ったら、当たり前だ。


 日頃から、あいつらが失言をすれば僕がサポートし、子供達に親たちの話をしている事もあり、諸事情は知っている。父親の件に関しては、子供達はもともと、母親は一人だが父親の役割をしているのは、僕も含めて三人いて、そのうちの誰かが精子提供者だと思っている。


 さらに、夏梅を持ち去るのは、天十郎だけなので、おおよその見当がついているし、基本、家族の誰が父親でも構わない。不安にもならない。と言っていた。



【夏梅の両親が亡くなった時から】


 深く関わっている日美子さんが、今回の報道を一番気にかけていた。

「夏梅にとって、この二十年はどうだったかしら?」

「短いようで長かった」と夏梅は笑い。その笑顔に日美子さんが涙を流し、感傷的になった。


「私は早かったな、あっと言う間だった。もうこんな歳だと思っていたら、どんな風に過ごして来たかもわからない。夏梅の気持ちの重たさを知る由もないけど、周囲の勝手な思い込みや欲をなすりつけられるだけで、時計の針は動けなくなって、日常がただの地獄の淵に立たされてしまうのではないかと、ずっと心配していたの。時計の針が一分進んで二分戻るような日々から抜け出せるようになればいいね。いつになったら終わるのかしらね」


 僕は、必死にその淵にしがみついている夏梅がその地獄へ落ちないように願ってきた。みな、自分だけは傷つきたくないくせに、人の傷には鈍感だ。


 からだのある人間は不自由だ。いや、それより吉岡だ、なにをもって夏梅を攻撃対象としているのか、背景が読めない。

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