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ソファベッド  作者: 中島 世期 seki
1章 猫にマタタビ:僕の憂鬱
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60話 仮面夫婦

【玉実が、夏梅二世】


 つまり「マタタビ女」だと気が付いたのは、随分前だ。三歳になる玉実は、まるっきり夏梅二世だった。蒲パパが時々、玉実を見て嫌悪感を露わにする。「小さい頃の夏梅にそっくりだな」僕を見る。


 僕は、夏梅にそっくりな玉実が可愛い。ボロボロこぼしながらの食べ方も似ている。昔、天ママが夏梅に言っていた言葉をそのまま引用して、蒲パパが三歳児を真剣に説得していた。


「玉実、ほら、あぐあぐだぞ、しっかり噛め。口を大きく開けろ。口をちゃんと閉めろ。スプーンはちゃんと口まで運べ、手の筋肉使え」

「そこまでしなくても、トラウマになるからよせ」

 天ママが言うと

「いや、俺の洋服の運命を、こいつが握っているからな」

「男物の洋服を、別に買ってやればいいだろ…」

「こいつら親子が、そんなささやかな俺の望みを、聞くとでも思っているか?」

「思わないけど」

「知っているなら何も言うな、こいつらは悪魔だ」

「しかし、そこまで嫌わなくても」


 そんな会話が交わされていた。その時も、日咲は

「蒲パパは、幼児体験でなにかつらい思いでもありましたか?それとも母親に愛されなかったとか?」

「日咲は、鋭いですね」僕が答えると、日咲はニッコリ笑った。その顔をみて、天ママと夏梅は「日咲は笑顔が可愛いわね」と話していた。


 もしかすると玉実が夏梅二世であるなら、家族間で間違いが起こると困る。禾一と叶一は中学になると、中高一貫教育の完全寮に送り込まれた。


 蒲パパと禾一と叶一は「問題のある玉実をどこかにやれ!」と僕に怒って騒いでいたが、それはさすがに、直接、天ママと夏梅に訴える事は出来なかったらしい。


 共学がいいのか、男子校がいいのか、蒲パパと天ママは迷ったらしいが本質の問題を悩んでもしょうがない、という結論に達したようだ。自分達の事をたなに上げて、二人共真剣に悩んでいたから、おかしなもんだ。僕が思い出し笑いをしていると、日咲は迷いながら僕の顔を見た。



【塁ちゃん、この間の天ママの授賞式でね】


「何かあった?」

「外出するとすぐにマーキングする天ママを敬遠してか、表だった席には天ママとは出来るだけ、同伴しない夏梅でしょ。それなのに、この間めずらしく公の場に出席した時、蒲パパが天ママのそばに、夏梅を近づけなかったみたいで、天ママは、多くの女優さんをはべらせ、会場の中央で注目を浴び、後方で夏梅に蒲パパが、からだをつけるようにぴったりくっつき、誰とあいさつを交わすことなく、男達を引き連れ、自由に動き回っていたの」


「それが、なにか問題になるのか?」


「世間では天ママに、子供が沢山いることを、知らないのではないか?もしくは結婚していることも、知らないかもしれないと思うことがある」

「夏梅は女優じゃないから、天ママと同席出来ないだろ?」

「そんなことないわよ、他の俳優さんは奥さんの隣に座っていたわ」

「自分達の存在を知って欲しいか?」

「そんな、レベルじゃなくてさ、塁ちゃん、おかしいでしょ」

「なにが?」

「華やかな会場で、娘や妻を見ても決して動じずスタンスを変えない父はある意味、尊敬できるよ。だけど、女性をはべらすって寡黙なヒーローのイメージじゃないでしょ」


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