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ソファベッド  作者: 中島 世期 seki
1章 猫にマタタビ:僕の憂鬱
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59話 不安材料

【二十歳の日咲が僕に言う】


「この家の住人は、表向きには、俳優夫婦とマネージャーという構図だけど、裏を返せばXジェンダーの天ママにぞっこんな男性オンリーの蒲パパがマネージャーをして、その肝心の天ママは夏梅にぞっこんだ。塁ちゃんは全部のまとめ役」日咲には、そう見えるらしい。


 ちなみに、我が家では子供たちは、戸籍上の母を「夏梅」と呼び、父は「天ママ」と呼ぶ。そして一家の父親役は、マネージャーの「蒲パパ」なのである。僕は子供達に「塁ちゃん」と呼ばれている。家族が多い日常は、とても賑やかで騒がしい。


「最近思うのよね、うちの夫婦は変だと思っている。それも…。変態的に変でしょ」日咲は、誰に似たのか…。何でも首を突っ込みたガールで、家庭内一般人である。芸能ニュースやメディアの情報に、興味を持ちすぎるほど持つために、家族の中ではパパラッチににせて、別名ニコラッチと呼ばれている。


「ニコラッチ、変態的って、何を基準に?」

「塁ちゃんったら、今のご時世いくらでも情報は手に入るのよ。夏梅と天ママは陰と陽みたいでしょ。夏梅は表向き派手で目立つ人気女流作家」

「うん」

「これが家の中では逆転する。実は夏梅は派手どころか地味すぎる。男物のシャツかインナーでボロボロの格好をして表に出る事を極端に嫌い、ゴロゴロしている」

「おお」

「愛する女を寡黙に守り抜く、ヒーローイメージの俳優が、家に帰ると、家事・炊事・育児までこなすスッポン体質スーパーママ!だけど、本当は家族の注目を浴びていないと落ち着かない、ただ、うるさいだけのキス魔のなーんちゃってヒーローに変身する」

「随分長いな…。でも、なーんちゃってヒーローは、ニコラッチちょっとひどくないかい?」


「さて、塁ちゃん、亜麻家では、誰が母親で誰が父親でしょうか?」

「クイズかい?役割が法律で決められているわけではないし…。あまり考えない方が…」

「塁ちゃん、それはダメでしょ」

「ダメかね」

「天ママは、蒲パパのベッドで寝起きをし、毎日、騒ぎを起こしている人が世の中でヒーローになるなんて。おかしいよね。100歩譲って、家の中に母親と父親が、二人ずついる事が何でもない事だったとしても、世の中の常識と現実との乖離がありすぎるのは、子供にとっては困る訳よ」


「僕、父親に入るの?なんで?」


「夏梅の驚くべき童顔は、パパラッチに家族写真を撮られても、妻不在、ヒーローが子供を連れてショッピング!のタイトル記事が出るよね。お母さんどこにいるの?と周囲に聞かれまくるのも面倒なのよ」

「うん、それはわかるような気がする。あれ?まさか、最近、出回った、お買い物のあの写真は、ニコラッチが提供してないよね」日咲は笑った

「小遣い稼ぎ。うまいでしょ、みんなの顔が、わかるようでわからないように撮るのは難しい」

「おい、ニコラッチやめろよ」



【嘘っぽいが本当だ】


 二十年後も夏梅は健在だ。運動をしないので、お腹はぷよぷよ、腕はぷにぷに。しかし、太っていない。


「食べたり、運動などの外的要因でカロリーや脂肪を落としても、脳のコントロールはできないからリバウンドするのが落ち。だから、カロリーの増減だけを考えるダイエットはしても無駄。食べ過ぎた時に、過去の自分の元の姿に戻す!と思うだけで、脳がコントロールを自然と行い、食事量が減り、元に戻る。無理して時間で食べないのが、コツ!太っていても、体重があっても、体のラインが綺麗だったら人間満足できるのよ。それには短時間のヨガや筋肉運動」と、娘たちに力説している。


 化粧品もシャンプーも、石鹸もボディソープ類を、いまだに、使わないので肌はすべすべである。顔にしわもない。いや高校生の時のままである。


 二十年前あった、茂呂社長の記念式典の写真だけが、世の中に出回っているが、夏梅ひとりがその写真と変わりがないのだ。日咲いわく、夏梅もその時の写真が好きなんだそうだ。特にお嬢様に従い、エスコートする天十郎執事とのツーショットの写真がお気に入りらしい。


「最近も、禾一の結婚式に、留めそでの着付けに、花嫁と朝一番に呼ばれたのに、担当者が何を勘違いしたか、新郎側の母親だと気が付かずにウェディングドレスを探していたでしょ。その間に、天ママと蒲パパは女性に囲まれ大騒ぎ。その騒ぎが治まるまで、私達はおかげで散々待たされたあげくに、家族写真を撮るときに、夏梅が行方不明な事に気がついて、またひと騒ぎ。着付けの部屋でひとり、くつろいで漫画本を読んでいる夏梅を見つけ出し、それから黒留袖を着付けしたから、写真が最後になったでしょ」


「確かに、あれは、あれで可愛かった黒留袖姿」

「塁ちゃん、夏梅は四十三歳。黒留袖が可愛いって年じゃないでしょ」

「もう、そんな年か、でも僕とのツーショットなら、おかしくないだろ?」

「まあね、塁ちゃんも変わらないよね」僕はうんうんと頷いた。

「僕はニコラッチの彼氏でも通用するぞ」

「はいはい、あの時、新婦側のお父さんがデレデレするから、お義母さんに嫌味言われて、宴会場でも男性客が集まって来て、天ママがマーキングを始めるし…」そんな、エピソードは沢山ある。


「学校の保護者面談で、夏梅だけ教員室で男性教諭に囲まれてしまって、私が助け出すのが大変だった。それ以来、学校行事は蒲が行く事になったじゃない。一人でどこにも行かせることが出来ないでしょ」

「うん、まあ、日咲も苦労しているよな」


 夏梅も四十代になって、もう大丈夫だろうと思ったけれど、同じようなトラブルは続いている。日咲の言うようにいまだに一人で外出させられない。


「それに」

「まだ、あるのか?」

「夏梅と玉実がそっくりだし」

「それはな…。そう思う」

「玉実を一人で、どこにも出せないから」

「そうだな」

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