表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソファベッド  作者: 中島 世期 seki
1章 猫にマタタビ:僕の憂鬱
48/88

48話 蒲の嫉妬が、ささやく

 打ち合わせが終わる頃、蒲と吉江が仲良く戻って来た。吉江は、なぜか、さっき、夏梅が投げつけたミニスカートをはいている。スレンダーな足と、お尻が半分のぞいている。


 確かにきれいではあるが、これでは夏梅の言う通り、事故が起きても、ファッションの主張は難しいかもしれない。女性が意図的に誘ったと誤解される。しかし、吉江は非常に満足そうだ。



【僕は蒲の異様な行動が不快だった】


 二人が戻って来たのを見て、黒川氏が蒲に向かって

「おい、蒲、先に夏梅を連れて帰るのではなかったのか?打ち合わせはもう終わったぞ」

「あっ、失礼」蒲は、にこやかな吉江に対して、優しくエスコートしていたが、夏梅を見つけると、手のひらを反すように、吉江の腕を払いのけ、べったりくっ付いている夏梅と天十郎を引き離した。


 それをまた、天十郎が抵抗して、夏梅の奪い合いのような格好になった。吉江の表情が能面のように変わった。


 天十郎は蒲を払いのけ、夏梅にマーキングをはじめた。うざい飼い主に、うんざりした愛玩動物のように、夏梅は両手両足を使って「デカマッチョやめろ」天十郎を必死に避けようとしている。


 その光景を、黒川氏や立花編集長達も、呆れ返って見ていた。天十郎が蒲に二人で家を出ようと、提案した時以来。天十郎の夏梅に対する態度は、日増しにしつこくなってきているように感じる。まるで、報復行動のように…。


 帰り際に、吉江が非常に低姿勢で夏梅に謝罪し、仲直りに二人でお茶をしないかと誘った。天十郎が付いて行こうとしたが、蒲がそれを遮った。


 黒川氏の事務所近くの吉江の自宅のアパートで、お茶を楽しみ、帰りは、吉江が車で送ると言う。当初、天十郎も蒲もいない状態でのひとりの外出を、反対をしていた黒川氏夫婦も反対出来なくなった。



【黙っていた、夏梅は素直に吉江についていった】


 僕が、その夏梅についていったのは、あれだけの言い争いをしたのに、吉江が下手に出たからである。それに、先ほど蒲が、吉江より天十郎と夏梅を優先した時の、能面のような顔だ。自分が優位に立っていると思った瞬間に、奈落に落とされたのだから当然だ。


 吉江の仲良しになりたいなんて、そんな言葉は信用できない。本当に関係を修復したいのなら、仲良くなりたいという言葉は使わない。なぜなら仲良くの定義があいまいで、各自の線引きに任されているからだ。つまり本気ではないという事だ。


 なにより蒲とコソコソ話す吉江が信用できないし、吉江と仲良くしたり、夏梅の前で邪険にしたり、蒲の態度もおかしい。吉江は、二人で飲もうと事務所の隣のコンビニで大量のビールを買った。


「お茶のはずだろ?飲んだら車で送れない」基本、夏梅はお酒を飲まないが、初めて吉江に会った時にいつも飲んでいる話を聞いている夏梅は疑ってないだろう。それに夏梅は世間知らずだ。蒲に言って、夏梅を叱った事で、夏梅が素直に付いて行った事が気になった僕は、二人の後を追いながら、嫌な予感しかしなかった。



【夏梅が吉江の部屋に入ると】


 玄関のカギがかけられた。僕はその瞬間、蒲と天十郎の元に向かった。運転席の天十郎は不機嫌そうだ。蒲は機嫌よく、にやにやしている。蒲は僕の顔を見るとウィンクをした。信号で止まった。


 僕は、反対方向の吉江の住まいに向かって車を走らせた。蒲は「おい、やめろ」叫んでいたが無視した。


 車から降り、吉江の玄関まで走り寄るとその反動を利用してドアをけり破り、夏梅の傍に駆け寄った。


 夏梅は男たちに囲まれ、触れられて無表情である。自分の意志のないところで、男たちに追い回されている時の顔だ。ひどく緊張し固くなったからだを丸め。爪をちゅっ、ちゅっと吸っている。僕は「夏梅、指を食うな」ボソッと言った。夏梅はさらに身を固くした。


 男たちが怒号とともに僕達に襲い掛かった。後から追って来た蒲が、さすがに動いた。天十郎は仕事の為に、蒲は天十郎に付き合ってからだを鍛えている。もともと、蒲は喧嘩っぱやく、穏やかな顔立ちに似合わず乱暴で残忍だ。どっかおかしくなっている男達を相手に、大立ち回りになった。


 蒲は慣れたように、僕らの逃げ道を確保してくれた。僕は、夏梅を抱えたまま車に飛び乗った。蒲はその後を追って来て、黙って運転席に座って車を走らせた。その後の吉江がどうなったのかは、わからない。



【家に帰ると】


 夏梅をソファベッドに寝かせた。よほど怖かったのか朦朧とし、目の焦点が合わず、天十郎にしがみついたまま離れない。蒲が、吉江の住まいで起こった事を、日美子さんに報告した。


 翌日、日美子さんから吉江が男達に回された事を聞いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ