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ソファベッド  作者: 中島 世期 seki
1章 猫にマタタビ:僕の憂鬱
35/88

35話 誓約書

「夏梅、よくわかっているな」蒲がニヤっと笑った。

「だから嫌でしょ」

「でもさ、どうしてもお前に、助けてもらいたい」

「そう、だったら条件がある。あんたたちのSEXビデオを撮らせてよ」

「なにそれ」蒲と夏梅のやりとりを黙って聞いていた天十郎が慌てた。


「私の利益になる取引をすることを条件に違反行為をしたら、そのSEXビデオをインターネット・TVなど、メディアに販売して良いという法的有効な誓約書を添えてくれたら、やってもいいわよ」


「はあ?」蒲があきれた。

「あと、それを行うにあたって、私の利益になる項目も加えて頂戴」

「利益ってなにが欲しいのだよ」

「欲しいもの?」夏梅が考え出すと蒲がそれを遮って「ないだろ」と馬鹿にしたように笑った。


「塁」

「それは、違反だ。どうせそれしか欲しいものがないくせに」

「それしかって、塁のほかに欲しいものは、家族、子供」と夏梅は口を尖らせた。

「無理なものばかりじゃないか、こいつ、やる気はないな」

「だったら、この取引はなかった事になるわね」

 夏梅は満足げに嬉しそうだ。


「いいよ、お前の家族や子供を作れば応じるな」その蒲と夏梅の会話に、突然、天十郎がはいりこんだ。

「おい」蒲が慌てた。夏梅は癇に障るように目も尖らせ天十郎に向かって

「いいわよ、家族や子供を作れるなら作って見なさいよ」

「言ったな、女に二言はないな?よし、いいよ。作ってやるよ」

「それを言うなら、男に二言はないっていうのでしょ」

「どっちでもいい、誓約書をつくろう」天十郎は近くにあった美術館の開催イベントのチラシを渡し、裏に二人共書き始めた。


「おい、誓約書だからお互いに求める事と、それが出来なかった時の罰則をかいて、それぞれが署名捺印だからな?わかっているか?」

 天十郎が吐き捨てるように夏梅に言った。


「天十郎、やめとけ。おい、二人共バカな話をしてないで、真剣に対応策を話そうぜ。おい、夏梅もやめろ、ろくなことにならない」

 蒲が焦る中、夏梅は天十郎の勢いに負けずに

「ふん、それくらい知っているわよ。秘密保持項目も入れておきなさいよ」

「了解」

「そうだ、秘密保持もいれるなら、蒲も一緒に入れないといけないわね」

「おおそうだな、お前も書け」突然、反発していた夏梅と天十郎が結託した。このことに、蒲がさらに慌てだした。


「おい、二人共、待てよ。よく考えろ」

「蒲、嫌なの」

「だからさ」

「蒲、お前がいいだしっぺだ。今更、逃げられないぞ」

「おい」蒲は僕の方を向いて、助けを求めるような顔をした。


 僕は知らん顔した。僕でもあの夏梅はとめられない。しかし、こいつら一体何をしている?そうやってバタバタしているところへ、トイレから化粧も髪も整えた美来が出て来て「お待たせ」と目をぎらつかせた。


「怖!」美来を見て僕は何とも言えず背筋が寒くなった。戦闘態勢に入っているのがわかる。


 蒲もそんな美来をみて複雑な顔で、夏梅に目で早く追い返せと言っている。



【夏梅はその合図とともに】


「ふう~」ちいさく声を上げると「美来さん?」美来の手を取って握手した。


 美来は、散々、天十郎の話をしたので、勝ち戦のつもりでいたのか、突然、どうどうと夏梅に強引に両手を取られて一瞬ひるんだ。

「この人を支えてくれて、ありがとうございます」

 夏梅はきっぱりと追い打ちをする。


 ありがとうございます?なんじゃそれは?みんな怪訝そうな顔をした。


 美来が唖然としている。そのすきに、美来が夏梅の手を握り返す暇を与えず、手を離すと一歩天十郎に近づき、目の前に手を差し出した。天十郎は夏梅の行動が理解できないように、本能的に目の前を遮るその手を掴むと自然と恋人同士のような繋ぎかたになった。



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