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ソファベッド  作者: 中島 世期 seki
1章 猫にマタタビ:僕の憂鬱
33/88

33話 マーキング

 他人にとっては面白い事が夏梅の命や人生がかかっている。夏梅の周囲の男性達の目がぶつかりあいだして互いに意識を始めた。流石に男の天十郎は状況を理解し始めたようだ。


 その男達の様子に天十郎は、蒲に不安そうに

「おい、そろそろ夏梅を助け出さないと、男同士の小競り合いが始まる気配がする」

「ああそうだな、そろそろ助けないと」


 蒲が夏梅に近寄って、腕を取ると集団の中にいた夏梅を引き抜いた。男性たちの視線が一斉に蒲に集まった。まるで自分のおもちゃを取られた子供のように、不愉快そうに見ている。


 視線が突き刺さる。天十郎はその様子をみて、注目している男達の目の前で、突然に蒲から夏梅を取り上げ、抱きしめながら自分のからだを夏梅に密着させ、こすり始めた。周囲の男達の視線はさらにきつくなる。


「何をやっている」蒲が鋭く天十郎に言葉を打ち付けた。

「マーキング」天十郎は能天気に笑った。

「はぁ?」

「俺のフェロモンをなすりつけて、マーキングしたら、他の男はよって来ないかも」


「やめてよ」天十郎を引き離そうと、もがく夏梅だが、傍から見ると、飼い主にベタベタとしつこく、なついている愛玩動物と、その愛情表現にうんざりしている飼い主のように見える。


「おい」蒲と僕は同時に怒鳴った。

「やめろ、油に火を注ぐのは、やめろ」引き続き蒲が怒鳴った。

 天十郎は嬉しそうに蒲を見ている。蒲はすぐに夏梅の横に張り付き、天十郎の反対側で夏梅を挟んだ。


 夏梅はその二人を鬱々した視線で抗議している。

「まだ、モネ見てない~」

「今度な」

「いやだ、高い入場料払ったのだから、モネだけでも見たい~、モネを見たい。一人で帰る」


「こんな人ごみの中で一人では帰れないだろ、蒲、責任取れよ」

 僕は蒲に強く言った。


「はいはい、モネだけ見てこうね。天十郎はやりすぎだ!」蒲はぶつくさと言っていたが、天十郎と蒲の両脇に抱えられて、足が地面に着かずに宙に浮いている夏梅を挟んで天十郎と蒲がいちゃつきだした。


「蒲、嫌だぜ、こんなところで揉め事は、やつらの目を見ただろ?完全にいっているよ」天十郎が蒲に甘えた声を出した。

「そういうお前が揉め事を大きくしている」

「そうか?いいアイデアだと思ったが」

「天十郎、俺に殺されたいか?」


「二人共、何言っているの。止まってないでモネのところに行ってよ」

「はい、はい」

 蒲と天十郎は男性の集団を引き連れたまま、移動しようとしたところ、後ろの方から



【天十郎と声がした】


 その声に振り返ると、親しげに天十郎を見ている女が立っている。蒲がとたんに不愉快そうな顔をした。夏梅は展示している絵画に気を取られている。少しの間があり、天十郎は我に返ったように「あっ」と小さく声をあげ、夏梅を離した。


 両足とも宙に浮いていた夏梅は片方を離され、片足だけ地に着いた。片腕を高く上げた状態で、夏梅の胸のふくらみが強調された。自分の胸を見て、斜めのまま「やだー、放せ!」蒲に飛び掛かり、力ずくで腕を下におろさせようと、もがき始めた。


「こいつは誰だ」僕が蒲に聞いた。蒲は「元カノ」と答えた。その声に夏梅は蒲を見て、キョトンとしている。蒲は斜めの夏梅を引き連れて、女の前に進み「お!美来、久しぶりだな」低い声で言った。天十郎は黙っている。蒲の声のトーンから、夏梅が事態に気が付いたようだ。夏梅が対応を迷っている。


 元カノの美来が、まるで汚い物でもみるように夏梅を見た。確かに、夏梅はひどい恰好をしている。斜めの夏梅は、天十郎の大きなセーターが、ひざ下まで巻きスカートを隠し、小さな顔と手が、ひょこっと出ている。不格好だ。しかし、美来は親しげに夏梅に向かって

「あら、どこかで見たことのあるセーターだわね」

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